一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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認定医審査ポスター2

2023年6月16日(金) 12:00 〜 13:30 ポスター会場 (1階 G3)

[認定P-10] 胃がん術後の胃摘出に伴う胃切除後障害により栄養状態不良となった患者に対して、総義歯の製作および栄養指導により栄養状態を改善した症例

○太田 緑1、上田 貴之1 (1. 東京歯科大学老年歯科補綴学講座)

【緒言・目的】
 胃癌術後の胃切除後障害により栄養状態不良となった患者に対して,総義歯の製作および管理栄養士と連携した栄養指導により栄養状態を改善した症例を経験したので報告する。
【症例および経過】
 77歳,女性。10年前胃癌により胃の摘出手術を受け,以降,食道逆流,胃もたれがあるという。また,配偶者との死別により料理の品数が減り,食欲も減退したことで6か月前と比べて体重が4kg(9 %)減少したという。上下顎総義歯は6年前に装着し問題なく使用していたが,1年前から維持不良と食事時の疼痛を自覚しているという。上顎と下顎右側の歯槽骨吸収が著しく,口腔乾燥も認められた。口腔機能精密検査では,口腔乾燥,咬合力低下,舌口唇運動機能低下,咀嚼機能低下,低舌圧が認められ,5/7項目が低下していた。BMIは16.5 ,OHIP-EDENT-Jは40だった。多数歯欠如と高度顎堤吸収に起因する咀嚼障害および胃癌術後の胃切除後障害に伴う栄養状態不良と診断した。摂取水分量の増加と唾液腺マッサージを指導し,ジェルタイプの口腔保湿剤の使用を勧めた。上顎総義歯は複数回リラインした痕跡があり,下顎舌側床縁位置の設定が不良であったため,粘膜調整後に新義歯を製作することとした。加えて,管理栄養士による食事指導を行い,総菜の活用と経口栄養補助食品を摂取するようにしたところ,摂取エネルギー量が1日200kcal程度増加した。義歯装着後,口腔乾燥感は認めるものの,食事時の疼痛は消失した。装着3か月後の口腔機能精密検査では,舌口唇運動機能と咀嚼機能が改善して低下項目数が3/7となり,体重は1.5kg増加したという。装着6か月後には,舌圧の改善が見られ低下項目数が2/7となり,BMIは17.7,OHIP-EDENT-Jは20となった。
 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 義歯製作によって咀嚼機能が回復し,疼痛なく食事が可能になったことにより,口腔関連QoLが改善したと考えられる。加えて,経口栄養補助食品を効果的に取り入れるなど,管理栄養士による食事指導を行ったことで,良好な結果が得られたと考えられる。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)