一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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認定医審査ポスター3

2023年6月16日(金) 12:00 〜 13:30 ポスター会場 (1階 G3)

[認定P-17] 胃瘻患者に経口摂取を再開させ、さらに食形態アップできた症例

○川村 一喜1、大槻 榮人2 (1. かわむら歯科、2. 医療法人社団 おおつき会大槻歯科医院)

【緒言・目的】 施設入所者においては、他職種連携がよりスムーズであり、適切な食形態の把握およびそれの提供もス ムーズに行われる。この症例は在宅での老老介護の状況であり、かかりつけ歯科医として介入し、経口 摂取を再開させ、さらに食形態アップできた一例を報告する。
【症例および経過】 74 歳女性、認知症によって意思疎通ができない。2017 年9 月まで20 年以上当院外来で歯科治療を行ってきたが、同年12 月に脳梗塞発症し入院。その後、胃瘻造設し退院、2018 年6 月から自宅療養となっ た。その後、患者配偶者からケアマネジャーを通して訪問歯科診療の依頼があった。
初診時、しばらく経口摂取していなかったが、自らの唾液を嚥下する動作が見られたので経口摂取の再 開は可能であると思われた。まずは、う蝕治療・歯周疾患治療・義歯修理した。併せて専門的口腔ケア を実施し、経口摂取再開に向けた準備を整えた。
その後、嚥下内視鏡検査を実施。反射の遅延はあるものの喀出力が充分あったためメイバランスゼリー であれば安全に摂取できると判断し、経口摂取の再開を指示した。なお、Harris-Benedict の式と活動 係数から約1,000kcal/day 程度は必要であろうと予測し、胃瘻とメイバランスで合計1,000kcal/day と なるよう設計した。
経口摂取再開後、舌骨挙上は目に見えて力強くなり食事時間も短縮したが、体重は徐々に減少していっ た。その原因として、経済的理由で保険適応外の栄養補助食品で不足のカロリーを補えていなかった。 このまま低栄養が続くと、改善した摂食嚥下機能が再び衰えることが予想されたため、医科に相談して ラコールの摂取を増やした。その後、体重は徐々に安定していき、再度、嚥下内視鏡検査を実施。舌で つぶせる食形態を安全に摂取できることを確認した。
その後、特に急性症状を発症することもなく現在に至る。
【考察】 栄養補助食品の確保や介護者が嚥下調整食を調整できないという点、在宅での老老介護という点が本症 例を難しくしている一因のように思われる。しかし、かかりつけ歯科医としての責任を果たすという意 味において、このような在宅での症例は今後も増えて行くと考える。今後も口腔衛生指導・嚥下機能評 価を継続していく予定である。
COI 開示:なし
本報告の発表について患者配偶者から口頭で同意を得ている。
倫理審査対象外