1:00 PM - 2:00 PM
[1S004-04-01] [Special lecture] Multifunctionality of antioxidants
Keywords:Antioxidants, Funtionality, Detoxication, Innate immunity, Antibody
【講演者の紹介】内田浩二(うちだこうじ) 東京大学大学院農学生命科学研究科教授略歴:1988年 名古屋大学大学院農学研究科博士課程(後期課程)修了(農学博士)。1988年名古屋大学農学部助手、1996年 同助教授、1998年 同大学院生命農学研究科助教授、2007年 同准教授、2009年 同教授。2016年 東京大学大学院農学生命科学研究科教授に着任し現在に至る。この間1990-1992年、米国N.I.H.博士研究員、2003-2006年 名古屋大学高等研究院助教授(兼任)。2024年から米国パデュー大学客員教授。
食には3つの機能(一次〜三次機能)があると言われている。一次機能は、三大栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質)のほか、ビタミン、ミネラルなどが担っており、生体構成成分やエネルギー産生の原料として生命維持や身体活動に不可欠な機能を指す。二次機能は味覚、嗅覚、美味しさなどの感覚機能であり、嗜好性に大きく影響する。三次機能は薬理効果に近く、体調調節など、健康維持に関連した機能とみなされている。その三次機能は健康や病気との関わりから、社会的には注目されているにもかかわらず、その中身がよくわかっていない機能でもある。また、三次機能に関連した食品成分は応用(製品化)が優先されがちで、その本質的な機能や分子メカニズムの解明がおろそかになっているものが多いのも否めない。さらには、その効能が過大評価され、あたかも病気を治癒できるかのような印象を与える製品もある。実際には、薬のような効き目があるのであれば、それはかえって危険かもしれない。三次機能のうち、解毒や免疫など、生体防御に関連した自然治癒の分子メカニズムに関しては、医学分野における研究が進んでいる。食によるがん予防研究や腸管免疫研究などにみられるように、生体防御の仕組みを解明することが、いかに食の予防に関する研究に貢献し、さらには機能性食品製品の開発に繋がるかが分かる。
一方、食の三次機能の中で最も馴染みがある生体防御機能は「抗酸化」であろう。ポリフェノールをはじめ、様々な天然抗酸化剤が知られているが、それらの抗酸化性と生理機能との関連性の解明が遅々として進んでいない。私たちは、20年以上前、抗酸化剤が“酸化に鋭敏である”という単純な事実に着目し、その酸化物によるタンパク質の化学修飾に関する研究に着手した。ポリフェノールをはじめビタミンCなどの抗酸化剤は酸化を介して酸化型に変換され、タンパク質との反応性を獲得する。興味深いことに、抗酸化剤で修飾されたタンパク質は、IgM抗体や補体C1qなど、生体防御に関連した分子への親和性を獲得する。しかし、この興味ある実験的事実が抗酸化剤の生理機能と言えるかどうかは未だ不明である。本講演では、抗酸化剤の酸化感受性を軸に、解毒や免疫などの機能性と密接に関連する新たな抗酸化剤の機能性を提唱したい。
食には3つの機能(一次〜三次機能)があると言われている。一次機能は、三大栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質)のほか、ビタミン、ミネラルなどが担っており、生体構成成分やエネルギー産生の原料として生命維持や身体活動に不可欠な機能を指す。二次機能は味覚、嗅覚、美味しさなどの感覚機能であり、嗜好性に大きく影響する。三次機能は薬理効果に近く、体調調節など、健康維持に関連した機能とみなされている。その三次機能は健康や病気との関わりから、社会的には注目されているにもかかわらず、その中身がよくわかっていない機能でもある。また、三次機能に関連した食品成分は応用(製品化)が優先されがちで、その本質的な機能や分子メカニズムの解明がおろそかになっているものが多いのも否めない。さらには、その効能が過大評価され、あたかも病気を治癒できるかのような印象を与える製品もある。実際には、薬のような効き目があるのであれば、それはかえって危険かもしれない。三次機能のうち、解毒や免疫など、生体防御に関連した自然治癒の分子メカニズムに関しては、医学分野における研究が進んでいる。食によるがん予防研究や腸管免疫研究などにみられるように、生体防御の仕組みを解明することが、いかに食の予防に関する研究に貢献し、さらには機能性食品製品の開発に繋がるかが分かる。
一方、食の三次機能の中で最も馴染みがある生体防御機能は「抗酸化」であろう。ポリフェノールをはじめ、様々な天然抗酸化剤が知られているが、それらの抗酸化性と生理機能との関連性の解明が遅々として進んでいない。私たちは、20年以上前、抗酸化剤が“酸化に鋭敏である”という単純な事実に着目し、その酸化物によるタンパク質の化学修飾に関する研究に着手した。ポリフェノールをはじめビタミンCなどの抗酸化剤は酸化を介して酸化型に変換され、タンパク質との反応性を獲得する。興味深いことに、抗酸化剤で修飾されたタンパク質は、IgM抗体や補体C1qなど、生体防御に関連した分子への親和性を獲得する。しかし、この興味ある実験的事実が抗酸化剤の生理機能と言えるかどうかは未だ不明である。本講演では、抗酸化剤の酸化感受性を軸に、解毒や免疫などの機能性と密接に関連する新たな抗酸化剤の機能性を提唱したい。