第14回アジア保全医学会・第27回日本野生動物医学会2021年合同大会

大会長挨拶

第14回アジア保全医学会/第27回日本野生動物医学会2021合同大会開催にあたって



新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより世界中の人々が外出自粛、テレワーク、オンライン会議に終始した2020年が終わり、2021年は少し明るい兆しが見えつつあります。2021年は十二支の干支で言うと丑年にあたります。丑には、植物が土の中で種子から芽を出し、地上に出るのを待ち構えている、という意味があるそうです。ポストコロナの時代に向けて、今しばらくは辛抱の時が続きますが、その先には土中から芽が出るように新たな展開が待ち受けていると信じております。本大会が、ポストコロナの先駆けとして、野生動物医学/保全医学の学術的議論の最前線となることを希望します。
 
アジア保全医学会としては、14回目にして初めての日本での大会開催となります。過去13回は、ネパール、韓国、台湾、ミャンマー、ベトナム、カンボジア、シンガポール、マレーシア、インドネシアで開かれてきました。初の日本での大会がここ札幌で開かれることは大きな喜びであり、アジアの保全医学に関わる専門家や学生・大学院生が一堂に会する貴重な機会となることでしょう。日本を含めアジアの生物多様性保全を推し進める保全医学からの学術貢献はまさに本学会に課された最大のテーマです。
 
日本野生動物医学会としては第27回大会ということで、札幌(北大)での開催は第4回大会以来2回目となります。北海道ということでは、帯広畜産大学と酪農学園大学で各々1回ずつ開催していますので、今回で4回目の開催ということになります。北海道は、いわゆるブラキストン線で本州と隔てられた特有の哺乳類・鳥類相を有します。アジアの中の日本ならびに北海道の生物地理学的特徴や、野生動物の保全と管理の現状を俯瞰的に眺める好機にしていただければと思います。
 
両学会の合同開催は初めての試みであり、この機会に両学会が有する特徴を相乗効果として発展させてほしいと願っております。新型コロナウイルス感染症の影響が未だ残る中での開催ですので、全面的に対面形式とはいきませんが、一部でも対面で開催できれば、大いに情報交換や新たな出会いを求めてコミュニケーションを図っていただきたいところです。また、やむなくオンラインでの参加になったとしても最大限そのメリットを生かしてもらいたいとも思います。
 
今回の大会テーマは、“Front-line of One Health in Asia”です。本大会において、野生動物の健康や保全医学に通じるOne Healthについての議論の最前線を具現化するとともに、まさにOne Healthの最前線で活躍されている研究者や獣医師・行政担当者の皆様の最新の研究成果を共有できる場にしたいと考えています。多くの皆様の参加発表を期待しています。
 
最後になりましたが、今回の大会を共に主催いただいた北海道大学One Heathフロンティア卓越大学院プログラム、そしてサポートいただいている韓国野生動物医学会および野生動物疾病学会アジアパシフィックセクション関係各位に厚くお礼申し上げます。
 
大会が開催される9月は日本の本州は未だ夏の暑さが残る時期ですが、北海道は秋の気配が感じられる絶好の季節です。新型コロナウイルス感染症の影響がどの程度残っているのか予測できない部分はありますが、北海道の気候、風土、文化、観光、グルメを楽しんでいただければ幸いです。皆様とお会いできることを心より楽しみにしております。ぜひ久しぶりに札幌で乾杯いたしましょう!

                                                                                                    
                                                                        

                                                                                                     
 



大会長   坪田敏男 

北海道大学大学院獣医学研究院