日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PF(01-64)

ポスター発表 PF(01-64)

2016年10月9日(日) 16:00 〜 18:00 展示場 (1階展示場)

[PF11] 創造性はパーソナリティと関連するか

青年期を対象にした創造性カテゴリ及びTEGⅡの分析

池志保 (福岡県立大学)

キーワード:創造性, パーソナリティ, 青年期

問題と目的
 青年期の発達はアイデンティティを模索し(Erikson,E.H.,1950),繊細で傷つきやすい時期であると同時に,音楽や詩,絵画,イラスト,芸術作品などを通した質の高い表現活動が賦活される時期でもある。「創造的退行(creative regression)」(Freud,S.,1908,1910,1971; Kris,E., 1952; Bellak,L.,1973)は自我の柔軟性との関連で述べられているが,青年期の創造性はパーソナリティとも関連があるのだろうか。またあるとすれば,どのような自我状態と関連しているのだろうか。本研究で実証的に検討していきたい。
方   法
1.調査協力者 A県A大学に在籍している大学生・大学院生・大学院科目等履修生141名の内,記入漏れのあった2名を除く139名(男性41名・女性98名,平均年齢19.40歳,SD=1.66)を分析対象とした。
2.調査内容 バウムテスト及び新版東大式エゴグラム(以下TEGⅡと略)。
3.調査時期と手続き 2014年12月〜2015年4月。発表者の授業終了後に実施し,その場で回収した。
4.データの分析方法 創造性の指標として池・山本(2015)の「創造性カテゴリ2015」(バウムテスト)を用い,得点化したものを使用した。パーソナリティを分析する尺度にはTEGⅡを用いた。
結   果
 「創造性カテゴリ2015」の創造性総合得点・創造性得点・非創造性得点の平均点を基準にして,それぞれ高群(H群)と低群(L群)に分類した。続いて,創造性の群別を独立変数,TEGⅡの5因子を従属変数とした2要因分散分析を行った。その結果,「創造性カテゴリ2015」の創造性総合得点において,TEGⅡ得点の主効果が有意で(F(3.14,429.88)=24.40,P<.001),交互作用も有意であった(F(3.14,429.88)=3.01,P<.05)。多重比較の結果,TEGⅡのA因子において創造性総合得点H群が有意に高く,L群が有意に低いことが明らかになった(P<.01)。(Figure 1)
 また,「創造性カテゴリ2015」の創造性得点においても,TEGⅡ得点の主効果が有意で(F(3.14,429.91)=19.74,P<.001),交互作用も有意であった(F(3.14,429.88)=2.97,P<.05)。多重比較の結果,TEGⅡのA因子において創造性総合得点H群が有意に高く,L群が有意に低いことが明らかになった(P<.01)。(Figure 2)
考   察
 創造性の高さとパーソナリティには関連が認められた。そしてTEGⅡ尺度の5因子の内,A(Adult)のみにおいて,創造性が高い群の方が低い群に比べて高い結果となった。退行を示唆するFC(Free Child)よりもAのみで差異が認められたことは予想外の結果であったが,一定水準の創造物を生み出すには現実を見つめる冷静さが必要ということなのだろう。本研究で創造性の高さと「大人の自我」(現実的で事実や客観性を重視する,冷静沈着さ)が関連することが認められた。