[PF21] 教師はいかに保護者と教育指針を共有するのか
学級通信に着目した検討
Keywords:学級通信, 教師, 小学校
問題と目的
学校における教育は,教師と児童・生徒間のみならず,子どもたちの家庭での姿を知る保護者と連携しながら進められる必要がある。その点で,教育は学校に閉じた場ではなく,学外にも開かれた場であるべきだといえるだろう。実際に,小学校学習指導要領(文部科学省,2008) の総則においても,「2(12)学校がその目的を達成するため,地域や学校の実態等に応じ,家庭や地域の人々の協力を得るなど家庭や地域社会との連携を深めること」と明記されており,保護者との連携の重要性が示されている。教師と保護者が有意義な連携をはかっていくには,教師・保護者間での教育観の共有が必要になる。そのため,日々の学校教育を通して,教師が保護者に自身の教育観を伝えることは,学校教育の質を高める上でもきわめて重要な活動となる。
そこで本研究では,教師の「教育指針」に焦点を当て,初任の小学校教師が自身の教育指針を保護者といかに共有していくかについて明らかにする。そのために,本研究では,教師が保護者宛てに発行する「学級通信」に着目した検討を行う。学級通信は保護者に向けた単なるお知らせではなく,児童の様子や教師の教育指針が含まれている(鈴木,2012)。学級通信に示される内容に着目することで,保護者に示される教師の教育指針の変化についてミクロに捉えることが可能となる。
方 法
対象 小学校1年生の学級(32名)を担任した20代の初任男性教員1名を対象とし,その1年間に発行された学級通信の内容(全72号)を分析対象とした。なお,本研究が焦点をあてた教師は,1ヶ月に平均6通の学級通信を作成していた。
分析の枠組み 学級通信から,教師が自身の教育観や信念に言及している箇所を「教育指針の提示部分」として命題単位で抽出した。そして,それらの記述を(1)目指す児童・学級の在り方に関する「児童・学級に関する指針」,(2)保護者への願い・依頼である「保護者に関する指針」,(3)目指す教師自身のあり方に関する「教師に関する指針」の3カテゴリに分類した。
結果と考察
全体的特徴 カテゴリごとの提示数をTable 1に示す。全体的傾向としては,児童に関する提示数が最も多く,保護者や教師に関する指針の記述は少ない傾向が認められた。
教育指針の提示傾向 月ごとの教育指針の提示数から(Figure 1),新学期が始まった翌月の5月と,夏休みが終了した翌月の9月に相対的にみた提示数の頻度が高くなっていることが確認された。すなわち,教師は児童が家庭から学級に移行・参入した時期を一定期間看取り,その翌月に児童・学級に関する教育指針(例:結果だけでなく過程を自分で褒められるようにしたい)を多く打ち出していることが示された。また,少数ではあるが5月と9月は保護者に関する指針(例:授業参観ではなく授業参加してほしい)も確認されることから,家庭から学級への移行に際して,教師は保護者に向けても教育指針を強調する学級通信を刊行していたことが示唆された。
一方,教師の指針に関しては,一年の終盤に提示が確認されるにとどまった。この点について,教師は「はじめから自分の想いは前面に出さなかったと思います。…もっと関係性ができてから出すようになりました。」と述べており,保護者との信頼関係を構築しながら,自身の教師としての在り方を明確化し,それを共有していたことが推察される。以上より,教師は保護者との関係性構築を通して,自身の専門性を深め,共有するようになっていたと考えられる。
学校における教育は,教師と児童・生徒間のみならず,子どもたちの家庭での姿を知る保護者と連携しながら進められる必要がある。その点で,教育は学校に閉じた場ではなく,学外にも開かれた場であるべきだといえるだろう。実際に,小学校学習指導要領(文部科学省,2008) の総則においても,「2(12)学校がその目的を達成するため,地域や学校の実態等に応じ,家庭や地域の人々の協力を得るなど家庭や地域社会との連携を深めること」と明記されており,保護者との連携の重要性が示されている。教師と保護者が有意義な連携をはかっていくには,教師・保護者間での教育観の共有が必要になる。そのため,日々の学校教育を通して,教師が保護者に自身の教育観を伝えることは,学校教育の質を高める上でもきわめて重要な活動となる。
そこで本研究では,教師の「教育指針」に焦点を当て,初任の小学校教師が自身の教育指針を保護者といかに共有していくかについて明らかにする。そのために,本研究では,教師が保護者宛てに発行する「学級通信」に着目した検討を行う。学級通信は保護者に向けた単なるお知らせではなく,児童の様子や教師の教育指針が含まれている(鈴木,2012)。学級通信に示される内容に着目することで,保護者に示される教師の教育指針の変化についてミクロに捉えることが可能となる。
方 法
対象 小学校1年生の学級(32名)を担任した20代の初任男性教員1名を対象とし,その1年間に発行された学級通信の内容(全72号)を分析対象とした。なお,本研究が焦点をあてた教師は,1ヶ月に平均6通の学級通信を作成していた。
分析の枠組み 学級通信から,教師が自身の教育観や信念に言及している箇所を「教育指針の提示部分」として命題単位で抽出した。そして,それらの記述を(1)目指す児童・学級の在り方に関する「児童・学級に関する指針」,(2)保護者への願い・依頼である「保護者に関する指針」,(3)目指す教師自身のあり方に関する「教師に関する指針」の3カテゴリに分類した。
結果と考察
全体的特徴 カテゴリごとの提示数をTable 1に示す。全体的傾向としては,児童に関する提示数が最も多く,保護者や教師に関する指針の記述は少ない傾向が認められた。
教育指針の提示傾向 月ごとの教育指針の提示数から(Figure 1),新学期が始まった翌月の5月と,夏休みが終了した翌月の9月に相対的にみた提示数の頻度が高くなっていることが確認された。すなわち,教師は児童が家庭から学級に移行・参入した時期を一定期間看取り,その翌月に児童・学級に関する教育指針(例:結果だけでなく過程を自分で褒められるようにしたい)を多く打ち出していることが示された。また,少数ではあるが5月と9月は保護者に関する指針(例:授業参観ではなく授業参加してほしい)も確認されることから,家庭から学級への移行に際して,教師は保護者に向けても教育指針を強調する学級通信を刊行していたことが示唆された。
一方,教師の指針に関しては,一年の終盤に提示が確認されるにとどまった。この点について,教師は「はじめから自分の想いは前面に出さなかったと思います。…もっと関係性ができてから出すようになりました。」と述べており,保護者との信頼関係を構築しながら,自身の教師としての在り方を明確化し,それを共有していたことが推察される。以上より,教師は保護者との関係性構築を通して,自身の専門性を深め,共有するようになっていたと考えられる。