日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-76)

2018年9月15日(土) 15:30 〜 17:30 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号15:30~16:30 偶数番号16:30~17:30

[PC64] 小学6年生学級における,教師児童間の学習規律認識のズレと学校適応感との関係

笹屋孝允 (三重大学)

キーワード:小学校, 学習規律, 学校適応感

問題と目的 
学習規律の不成立は授業不成立の原因となりうることから,学習規律の成立が学級経営では重要となる。また,高学年学級において,教師と児童の間の規範意識のズレは教師ストレスを引き起こす(淵上,2009)ことから,教師と児童の間の学習規律認識のズレは児童の学校適応にも負の影響を及ぼすと予想される。
 しかし,児童による学習規律の内化はヒドゥン・カリキュラムとなっている側面があり,児童の学習規律の内化過程や認識についてはこれまで十分に検討されてこなかった。また,教師児童間の認識のズレが,授業不成立を含めた児童の学校生活に与える影響についても,これまでに検証されていない。学習規律の内化を1領域とする学校経営研究では,1年間の長期的展望を持つことが重要であることから,本研究は3学級での調査結果から,教師児童間の学習規律認識のズレの特徴や,認識のズレと学校適応感との関係が1年間でどのように推移していくか分析し,学習規律認識のズレの特徴について考察することを目的とする。

方法 
 研究協力校は三重県内の公立小学校3校の6年生学級3学級である。A小学校は学級担任が5年生時からのもち上がりであった。また,B小学校の学級担任は,4年生時にも学級担任を担当し,児童にとって2度目の学級担任であった。
 質問紙調査は以下の通りで行った。①教師と児童に,授業中にどのようなきまりがあると思うか,自由記述で回答を得た。②自由記述の回答結果から30種類の学習規律を選定し,それぞれの学習規律についてどの程度重要と認識しているか,教師と児童から5段階で回答を得た。③教師と児童の重要度認識の差(絶対値)の合計点を「ズレ得点」として算出し,ズレ得点と,「学校適応感質問紙」(石田,2009)を構成する「友人関係」「学習関係」「学校生活」「教師関係」の4つの下位尺度(5段階回答)との相関係数を算出した。各調査は2017年度1年間で①②③各3回実施した。

結果と考察 
 結果はTable1の通りである。結果から得られた示唆は次の5点である。
・教師児童間の学習規律認識のズレは1年間の学級経営で解消されず,ズレが拡大する場合もある。認識のズレは常にあると考えられる。
・教師児童間の学習規律認識のズレは,1年間で児童の個人差が大きくなる傾向にある。
・教師児童間の学習規律認識のズレは学校適応感と概ね負の相関関係にある。特に,年度末に「学習関係」と負の相関関係が見られる傾向がある。
・ただし,教師児童間の学習規律認識のズレは「教師関係」と必ずしも負の相関関係とはならない。
・A,B各小学校6年生学級は1年間通してC小学校6年生学級に比べ,教師児童間の学習規律認識のズレが小さい。進級に伴う担任交代によって,教師児童間の認識のズレが拡大する可能性が示唆される。