[PE67] 仏教精神に基づく「建学の理念」の認知度と大学生活適応感の関連
キーワード:建学の理念, 自校教育, 適応感
問 題
近年「自校教育」と呼ばれる活動が,多くの大学で展開されている。「自校教育」は,「『自分が大学とどう関わっていくか』を意識させる授業科目である(大川,2015)」と定義されている。「自校教育」のもたらす効果について,寺崎(2007)は,学生の「居場所発見」に効果があると述べている。一方,読売新聞(2014)は,学生たちに安心感を持たせ,学習意欲を向上させると説明している。つまり「自校教育」は,学生の大学生活への適応感を高めようとする活動といえる。
寺崎(2010)によれば,特に私立大学の「自校教育」は,国立大学や公立大学とは違い「建学の理念と建学の精神」の理解を重視している。大西・佐藤(2006)によれば,私立大学における「建学の理念」は,教育理念・事業理念を社会に示す為に重要であり,大学案内には,必ず「建学の理念」が掲載されている。
自校教育の効果については,飯吉(2008),岡崎(2012),近藤(2012)などによって,実践的な研究が行われている。しかし,私立大学において重要である「建学の理念」に焦点を当てて,大学生活の適応感との関連を検討した実証的な研究は,ほとんど示されていない。
目 的
私立大学の学生の「建学の理念」に対する認知度と大学生活の適応感に関連があるかを検討する。
方 法
2017年7月に関西圏の仏教精神に基づく「建学の理念」を持つ私立大学に通う大学生486名を対象として質問紙調査を行った。「建学の理念」を知っているかとその具体的な内容を尋ねる質問項目と,大久保(2005)によって開発された青年用適応感尺度を組み合わせた質問紙を使用した。
結果と考察
学生の「建学の理念」の認知度の回答ごとに群分けを行った。「わからない」と回答した学生を低群(N=410),「仏教の考えに基づいている」と回答した学生を中群(N=30),「建学の理念」をきちんと回答できていた学生を高群(N=43)とした。
3群間に大学生活の適応感に差があるかを分析したところ,下位尺度の「課題・目的の存在」に有意な差がみられた(F(2,480)=3.36,p<.05)。Tukey法による多重比較を行った結果,高群は低群より「課題・目的の存在」の意識が高かった。高群は学校への関心が高く,大学生活をどう過ごしていきたいかという目標・目的意識が高いと考えられるため,このような結果になったと推測することができる。
学年別に分散分析を行ったところ,1回生において「居心地の良さの感覚」に有意な差がみられ(F(2,263)=4.41,p<.05),2回生において「課題・目的の存在」に有意な差がみられた(F(2,106)=8.14,p<.001)。多重比較を行った結果,1回生は低群が高群よりも「居心地の良さの感覚」が高く,2回生は高群が低群よりも「課題・目的の存在」の意識が高かった。1回生は大学生活への期待と「建学の理念」あるいは現実のギャップによる葛藤が関係していると考えられる。一方で2回生は「建学の理念」と大学生活の目標が,専門科目の増加によって,徐々に一致してくるため,授業や課外での学習および活動に対する態度が前向きになれるのだと思われる。
結果から学生の「建学の理念」に対する認知度が大学生活の適応感に関連することが明らかになった。特に,「建学の理念」の教育は,大学生活での目標・目的意識に寄与している可能性が示唆された。その効果は特に2回生から表れてくるのかもしれない。
近年「自校教育」と呼ばれる活動が,多くの大学で展開されている。「自校教育」は,「『自分が大学とどう関わっていくか』を意識させる授業科目である(大川,2015)」と定義されている。「自校教育」のもたらす効果について,寺崎(2007)は,学生の「居場所発見」に効果があると述べている。一方,読売新聞(2014)は,学生たちに安心感を持たせ,学習意欲を向上させると説明している。つまり「自校教育」は,学生の大学生活への適応感を高めようとする活動といえる。
寺崎(2010)によれば,特に私立大学の「自校教育」は,国立大学や公立大学とは違い「建学の理念と建学の精神」の理解を重視している。大西・佐藤(2006)によれば,私立大学における「建学の理念」は,教育理念・事業理念を社会に示す為に重要であり,大学案内には,必ず「建学の理念」が掲載されている。
自校教育の効果については,飯吉(2008),岡崎(2012),近藤(2012)などによって,実践的な研究が行われている。しかし,私立大学において重要である「建学の理念」に焦点を当てて,大学生活の適応感との関連を検討した実証的な研究は,ほとんど示されていない。
目 的
私立大学の学生の「建学の理念」に対する認知度と大学生活の適応感に関連があるかを検討する。
方 法
2017年7月に関西圏の仏教精神に基づく「建学の理念」を持つ私立大学に通う大学生486名を対象として質問紙調査を行った。「建学の理念」を知っているかとその具体的な内容を尋ねる質問項目と,大久保(2005)によって開発された青年用適応感尺度を組み合わせた質問紙を使用した。
結果と考察
学生の「建学の理念」の認知度の回答ごとに群分けを行った。「わからない」と回答した学生を低群(N=410),「仏教の考えに基づいている」と回答した学生を中群(N=30),「建学の理念」をきちんと回答できていた学生を高群(N=43)とした。
3群間に大学生活の適応感に差があるかを分析したところ,下位尺度の「課題・目的の存在」に有意な差がみられた(F(2,480)=3.36,p<.05)。Tukey法による多重比較を行った結果,高群は低群より「課題・目的の存在」の意識が高かった。高群は学校への関心が高く,大学生活をどう過ごしていきたいかという目標・目的意識が高いと考えられるため,このような結果になったと推測することができる。
学年別に分散分析を行ったところ,1回生において「居心地の良さの感覚」に有意な差がみられ(F(2,263)=4.41,p<.05),2回生において「課題・目的の存在」に有意な差がみられた(F(2,106)=8.14,p<.001)。多重比較を行った結果,1回生は低群が高群よりも「居心地の良さの感覚」が高く,2回生は高群が低群よりも「課題・目的の存在」の意識が高かった。1回生は大学生活への期待と「建学の理念」あるいは現実のギャップによる葛藤が関係していると考えられる。一方で2回生は「建学の理念」と大学生活の目標が,専門科目の増加によって,徐々に一致してくるため,授業や課外での学習および活動に対する態度が前向きになれるのだと思われる。
結果から学生の「建学の理念」に対する認知度が大学生活の適応感に関連することが明らかになった。特に,「建学の理念」の教育は,大学生活での目標・目的意識に寄与している可能性が示唆された。その効果は特に2回生から表れてくるのかもしれない。