[PF23] 避難情報の表現が避難意欲に与える影響
危険度,切迫度,状況の説明に着目した検討
キーワード:危険認知, 避難情報, 防災教育
目 的
避難情報の提供が,必ずしも適切な避難行動を誘導するとは限らない(内閣府, 2011等)ことから,防災教育・減災教育の必要性(名古屋大学こころの減災教育研究会, 2016等)やより良い避難情報の表現や提供情報に関する追究(田中・加藤, 2011;気象庁, 2013; 富山県土木課砂防課, 2014等)が行われている。本研究では,田中・加藤(2011)を踏まえ,危険度,切迫度,状況理解の3つの観点から避難情報を提供する文章を作成し,いずれの要因がもっとも避難意欲を喚起するのか,サーストンの一対比較法を用いて検討する。
方 法
調査参加者 大学生196名(男性80名;女性110名;無記入6名)。平均年齢19.78歳(SD 4.13)であった。回答方法に誤りのある7名を除いた189名を分析対象とした。
刺激文 事前調査を実施した上で,大雨による河川の氾濫を想定した避難情報を表現する文章を9種類作成した。危険度を表す語句として3種類(非常に危険です。;かなり危険です。;危険です。),切迫度表現を4種類(速やかに;緊急に;あと15分で氾濫する恐れがあります。;あと30分で氾濫する恐れがあります。),状況説明文として2種類(氾濫危険水位に達する見込みです。;川の水があふれる恐れがあります。)が用意され,最後に「避難して下さい。」という文章を示した。
評価項目 強制2肢選択としてFigure 1に示したように9種類の刺激文から異なる2種類を選択して左右に並べ,より避難意欲が湧く文章を選択させた。すべての組み合わせとして36組が作成され,調査参加者はこの全組み合わせについて評価することが求められた。A4用紙1枚につき,3組分が印刷され,ページ内での順番は固定としたが,ページ単位で表示順を入れ替え,3種類作成した。
手続き 心理学関連の授業を受講している大学生中心に集団で調査を実施し,人数調整のために数人のみ個別でデータ収集した。避難情報文による避難のしやすさに関する調査である旨を伝え,回答方法,個人情報の扱いなどについて伝えた。質問などは適宜受付け約10分で終了した。
結 果
サーストンの一対比較法を用いて,避難意欲を一次元尺度化した(Figure 2)。最も避難意欲がかきたてられる表現は時間を明示し切迫度の高い「あと15分で氾濫する恐れがあります。」で,平均Z変換得点は1.50であった。ついで危険度が高い「非常に危険です。」で1.34となった。避難意欲が生じにくい表現は,危険度のあまり強調されていない「危険です。」で0.66,次点が切迫度を副詞で表現した「速やかに」で0.76であった。
考 察
本研究の結果,先行研究同様,切迫度や危険度が高い表現ほど避難意欲を高めることが示された。ただし,先行研究ではこの2要素は切り分けられていなかったが本研究では区別を試みたところ,切迫度の方が危険度よりもさらに効果的であることが示された。また,状況説明の効果は予測より低く,難しい語句を避け,分かりやすい表現を試みると逆効果になる可能性も示された。
付 記
本研究は第二著者の平成29年度卒業研究論文を一部,再分析し,再編集したものである。
避難情報の提供が,必ずしも適切な避難行動を誘導するとは限らない(内閣府, 2011等)ことから,防災教育・減災教育の必要性(名古屋大学こころの減災教育研究会, 2016等)やより良い避難情報の表現や提供情報に関する追究(田中・加藤, 2011;気象庁, 2013; 富山県土木課砂防課, 2014等)が行われている。本研究では,田中・加藤(2011)を踏まえ,危険度,切迫度,状況理解の3つの観点から避難情報を提供する文章を作成し,いずれの要因がもっとも避難意欲を喚起するのか,サーストンの一対比較法を用いて検討する。
方 法
調査参加者 大学生196名(男性80名;女性110名;無記入6名)。平均年齢19.78歳(SD 4.13)であった。回答方法に誤りのある7名を除いた189名を分析対象とした。
刺激文 事前調査を実施した上で,大雨による河川の氾濫を想定した避難情報を表現する文章を9種類作成した。危険度を表す語句として3種類(非常に危険です。;かなり危険です。;危険です。),切迫度表現を4種類(速やかに;緊急に;あと15分で氾濫する恐れがあります。;あと30分で氾濫する恐れがあります。),状況説明文として2種類(氾濫危険水位に達する見込みです。;川の水があふれる恐れがあります。)が用意され,最後に「避難して下さい。」という文章を示した。
評価項目 強制2肢選択としてFigure 1に示したように9種類の刺激文から異なる2種類を選択して左右に並べ,より避難意欲が湧く文章を選択させた。すべての組み合わせとして36組が作成され,調査参加者はこの全組み合わせについて評価することが求められた。A4用紙1枚につき,3組分が印刷され,ページ内での順番は固定としたが,ページ単位で表示順を入れ替え,3種類作成した。
手続き 心理学関連の授業を受講している大学生中心に集団で調査を実施し,人数調整のために数人のみ個別でデータ収集した。避難情報文による避難のしやすさに関する調査である旨を伝え,回答方法,個人情報の扱いなどについて伝えた。質問などは適宜受付け約10分で終了した。
結 果
サーストンの一対比較法を用いて,避難意欲を一次元尺度化した(Figure 2)。最も避難意欲がかきたてられる表現は時間を明示し切迫度の高い「あと15分で氾濫する恐れがあります。」で,平均Z変換得点は1.50であった。ついで危険度が高い「非常に危険です。」で1.34となった。避難意欲が生じにくい表現は,危険度のあまり強調されていない「危険です。」で0.66,次点が切迫度を副詞で表現した「速やかに」で0.76であった。
考 察
本研究の結果,先行研究同様,切迫度や危険度が高い表現ほど避難意欲を高めることが示された。ただし,先行研究ではこの2要素は切り分けられていなかったが本研究では区別を試みたところ,切迫度の方が危険度よりもさらに効果的であることが示された。また,状況説明の効果は予測より低く,難しい語句を避け,分かりやすい表現を試みると逆効果になる可能性も示された。
付 記
本研究は第二著者の平成29年度卒業研究論文を一部,再分析し,再編集したものである。