09:15 〜 09:30
[R22-O-5] 現世の鉄鉱層形成:水酸化鉄チムニーマウンドと水酸化鉄沈殿層について
-鹿児島県薩摩硫黄島-
キーワード:太古代、縞状鉄鉱層、鉄石層、薩摩硫黄島
薩摩硫黄島は九州南沖約50 kmに位置する火山島であり,鬼界カルデラの北西縁に位置する.島の周辺海域には酸性熱水が流出しており,海水と混合することで褐色〜乳白色の海水がみられる.特に島南部の長浜湾は溶存鉄や遊離CO2に富む,pH 4.4 ~ 5.5程度の弱酸性の熱水 (四ヶ浦・田崎, 2001;坂元, 2015) が供給され,析出した鉄酸化物が海底に堆積し,海底湧水部分では水酸化鉄チムニーの存在が明らかになってきた(e.g., Kiyokawa and Ueshiba, 2015, Kiyokawa et al., 2021).
本発表では,長浜湾における熱水湧出場の特定やチムニーマウンドおよび堆積層における鉄の酸化・沈殿プロセスについて,水酸化鉄の形成・沈殿・沈殿後の続成最初期状況について検討を行った.コア試料は潜水により取得し,堆積物トラップは半年ごとに追加しながら,連続9xrd年間の試料を取得しており,実際の地層に残される堆積層との比較を行っている.取得した試料は,すぐに高知大学海洋総合コアセンターに運び,冷蔵して保存し,記載,CTスキャン,化学分析を行っている.海水の分析: ICP-OES, 結晶構造:XRD(ともに九州大学)を使用した.
海底湧出場所の特定のために,湾内の船付き場(East and West sites)および海岸線における赤外線サーモグラフィドローン探査を行った.結果,今まで明らかでなかった湾内の複数箇所で熱水噴出源が特定され,弱酸性熱水が海水面に広がる様子が見られた.また水質の測定では,海水面付近付近では相対的に低いpH,ORP,EC値と高い濁度を示し,特にpHと濁度値は強い相関を示し,表層付近でpHは最小で濁度は最大であった.海中カメラの水塊画像においても,表層では濁りが強く,海底付近(pH≈8)では析出物の凝集が進み,濁りが弱くなっている.
Eastサイトでは,チムニーマウンドが形成されており,比較的古いマウンドについてCTスキャン,薄片観察,電顕観察,微生物(DNA)解析などを行った.マウンドには,細いパイプ上の熱水の抜け後がみられ,パイプはバクテリア形体をした水酸化鉄で形成されていた.水酸化鉄部分は,鉄還元バクテリアに特有のツイストをした組織を持ち,Zetaproteobacteria (Mariprofundus ferrooxydans : Hoshino et al., 2016)である. 一方,Westサイトでは.1-2mの水酸化鉄沈殿層が確認されている.本層の水酸化鉄には,バクテリアの痕跡がほとんどなく,水酸化鉄コロイドや火山性細粒堆積物が互層をする.
海底表層コア試料(約40 cm:2020年10月取得)について間隙水元素測定を行った結果,海底表層から下に向かってpHの値は海水に近い7.5から熱水に近い5.8程度まで下がり,FeやMn,Siといった元素の濃度が増加した.さらに別の海底コア試料(2020年取得)から採取した試料のXRDを行った結果,堆積物上部(10~20 cmbsf)からはゲーサイト,それ以深からはシデライトのピークが得られた.このシデライトはSEM観察においてこのシデライトは菱形の自形を表していた. つまり,Westサイトでは水塊表層付近では鉄の無機酸化が生じ,まず,水酸化鉄の初生物やゲーサイトの前駆体であるフェリハイドライトとして個体析出する.海水との混合により生じるpHの上昇は,沈殿途中の水酸化鉄の凝集を強く支配していると考えられる.沈殿後,表層付近で一部はゲーサイトに変化し,20-40cmほどから非晶質の水酸化鉄堆積物の再還元・もしくは2価鉄を含む温泉水によりシデライトの形成が考えられる.シデライト結晶は堆積物内でより成長していると考えられる.これは,太古代で見られるシデライトBIFにおいても,堆積直後にはすでに形成可能であることを示唆している.
このように,薩摩硫黄島長浜湾では,2価鉄を含む温泉水の流出により,1)微生物が寄与した水酸化鉄チムニーの形成,2)化学的な水酸化鉄形成がみられる.また,海岸線には,水酸化鉄をまとった砂(グラニュール)が広がっている.長浜湾の鉄沈殿物は,太古代/原生代のBIF, GIF, 顕生代の鉄層などの堆積場を考える上で重要な化学的・生物学的なヒントが観察される.
本発表では,長浜湾における熱水湧出場の特定やチムニーマウンドおよび堆積層における鉄の酸化・沈殿プロセスについて,水酸化鉄の形成・沈殿・沈殿後の続成最初期状況について検討を行った.コア試料は潜水により取得し,堆積物トラップは半年ごとに追加しながら,連続9xrd年間の試料を取得しており,実際の地層に残される堆積層との比較を行っている.取得した試料は,すぐに高知大学海洋総合コアセンターに運び,冷蔵して保存し,記載,CTスキャン,化学分析を行っている.海水の分析: ICP-OES, 結晶構造:XRD(ともに九州大学)を使用した.
海底湧出場所の特定のために,湾内の船付き場(East and West sites)および海岸線における赤外線サーモグラフィドローン探査を行った.結果,今まで明らかでなかった湾内の複数箇所で熱水噴出源が特定され,弱酸性熱水が海水面に広がる様子が見られた.また水質の測定では,海水面付近付近では相対的に低いpH,ORP,EC値と高い濁度を示し,特にpHと濁度値は強い相関を示し,表層付近でpHは最小で濁度は最大であった.海中カメラの水塊画像においても,表層では濁りが強く,海底付近(pH≈8)では析出物の凝集が進み,濁りが弱くなっている.
Eastサイトでは,チムニーマウンドが形成されており,比較的古いマウンドについてCTスキャン,薄片観察,電顕観察,微生物(DNA)解析などを行った.マウンドには,細いパイプ上の熱水の抜け後がみられ,パイプはバクテリア形体をした水酸化鉄で形成されていた.水酸化鉄部分は,鉄還元バクテリアに特有のツイストをした組織を持ち,Zetaproteobacteria (Mariprofundus ferrooxydans : Hoshino et al., 2016)である. 一方,Westサイトでは.1-2mの水酸化鉄沈殿層が確認されている.本層の水酸化鉄には,バクテリアの痕跡がほとんどなく,水酸化鉄コロイドや火山性細粒堆積物が互層をする.
海底表層コア試料(約40 cm:2020年10月取得)について間隙水元素測定を行った結果,海底表層から下に向かってpHの値は海水に近い7.5から熱水に近い5.8程度まで下がり,FeやMn,Siといった元素の濃度が増加した.さらに別の海底コア試料(2020年取得)から採取した試料のXRDを行った結果,堆積物上部(10~20 cmbsf)からはゲーサイト,それ以深からはシデライトのピークが得られた.このシデライトはSEM観察においてこのシデライトは菱形の自形を表していた. つまり,Westサイトでは水塊表層付近では鉄の無機酸化が生じ,まず,水酸化鉄の初生物やゲーサイトの前駆体であるフェリハイドライトとして個体析出する.海水との混合により生じるpHの上昇は,沈殿途中の水酸化鉄の凝集を強く支配していると考えられる.沈殿後,表層付近で一部はゲーサイトに変化し,20-40cmほどから非晶質の水酸化鉄堆積物の再還元・もしくは2価鉄を含む温泉水によりシデライトの形成が考えられる.シデライト結晶は堆積物内でより成長していると考えられる.これは,太古代で見られるシデライトBIFにおいても,堆積直後にはすでに形成可能であることを示唆している.
このように,薩摩硫黄島長浜湾では,2価鉄を含む温泉水の流出により,1)微生物が寄与した水酸化鉄チムニーの形成,2)化学的な水酸化鉄形成がみられる.また,海岸線には,水酸化鉄をまとった砂(グラニュール)が広がっている.長浜湾の鉄沈殿物は,太古代/原生代のBIF, GIF, 顕生代の鉄層などの堆積場を考える上で重要な化学的・生物学的なヒントが観察される.