日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

G1-4.ジェネラル サブセッション地学教育

[1oral601-08] G1-4.ジェネラル サブセッション地学教育

2022年9月4日(日) 13:30 〜 15:30 口頭第6会場 (14号館403教室)

座長:浅野 俊雄(なし)、矢島 道子(東京都立大学)

14:45 〜 15:00

[G4-O-6] 学生のヒマラヤ野外実習プログラム10年間

*吉田 勝1,2、学生のヒマラヤ野外実習 プロジェクト (1. ゴンドワナ地質環境研究所・トリブバン大学(名誉教授)、2. トリブバン大学(名誉教授))

キーワード:ヒマラヤ、学生野外実習、野外実習ツアー

ヒマラヤの地質は、そこを歩いた学生に大きなインパクトを与えるだろう。そのインパクトは日本の学生と教員の中にわずかづつでも広がって行くだろう。野外実習が軽視される最近の日本の大学教育を補強し、あるいはいずれそれに歯止めをかける力になるかもしれない」との期待(吉田、2014)で2012年に始まった学生のヒマラヤ野外実習ツアー(SHET)は、学生のヒマラヤ野外実習プロジェクトによる立案・発注を受け、ゴンドワナ地質環境研究所(GIGE)を実施主体、ネパール国立トリブバン大学トリチャンドラキャンパス地質学教室(TU)を共同実施主体としてコロナ感染症問題で休止した2021年を除いて2022年3月まで10年間毎年行なわれてきた(Student Himalayan Field Exercise Project HP, 2022)。 実習ツアーはネパールヒマラヤ中西部をバスで北から南に横断し、テチスヒマラヤ帯-高ヒマラヤ帯-低ヒマラヤ帯-亜ヒマラヤ帯-ガンジス沖積帯の地質・地形・自然災害を10日間程で観察する(第1図)。実習ツアーのコースと日程は毎年ほぼ同一ではあったが、年を追って実習内容とロジスティックスが少しずつ変化した。詳細は毎年の実習ツアー報告書(吉田,2022ほか毎年発行されている)で見ることができるほか、本学術大会でもポスターで報告した(吉田・学生のヒマラヤ野外実習プロジェクト、2022)。 10年間の参加者は日本、ネパール、インド、中国の28大学2高校の学生・生徒139人と市民11人であった。航空運賃など全ての経費を含む学生の実習ツアー参加費は138000円~201000円で10年間の平均は約169000円であった。毎年実習ツアーでは寄付金収入があるため、参加費は実際の経費より数万円安価であった。実習ツアーは10年間無事故で、重大な健康問題も発生しなかった。本プロジェクトに対する実習ツアー参加者の評価は高く、ヒマラヤの地質のすばらしさに加えて、英語の実習テキスト(Yoshida & Ulak, 2017 ) の活用とトリブバン大学生らとの緊密な交流による英語環境への親密感の高揚が特筆された。 発表では実習ツアー10年間のハイライト、ロジスティックス、参加者構成、ツアー経理、評価と成果を報告する。 なお、来年以後のSHET参加学生の参加費補助を目的として、学生のヒマラヤ野外実習プロジェクト主宰による通年常時受け付けのクラウドファンディング「学生ヒマラヤ-学生にヒマラヤで学ぶ機会を!」を立ち上げ、広くご関心の皆様にご支援をお願いすることにしました。趣旨にご賛同、ご興味の方は下記「学生ヒマラヤCFサイト」(www.gondwnainst.org/shet-cf)をご覧下さるよう、お願いします。 引用文献 学生のヒマラヤ野外実習プロジェクトHP,2022,www.gondwanainst.org/geotours/ Studentfieldex_index.htm 吉田勝,2014,学生のヒマラヤ野外実習プログラムI―プロジェクトの発足とプログラムの準備.地学教育と科学運動,73,57-62. 吉田勝,2022(編),ヒマラヤ造山帯大横断2022-第10回学生のヒマラヤ野外実習ツアー2022年3月の記録.フィールドサイエンス出版,191頁.https://www.data-box.jp/ pdir/8d74595d276149a99b6ffac68d9b6391 吉田勝・学生のヒマラヤ野外実習プロジェクト、2022、第10回学生のヒマラヤ野外実習ツアー(2022年3月)報告と第11回実習ツアーへの誘い。日本地質学会2022年学術大会ポスター発表。 Yoshida, M. and Ulak, P.D., 2017, Geology and Natural Hazards along Kaligandaki and Highways Kathmandu-Pokhara-Butwal-Mugling –guidebook for Student Himalayan Exercise Tour--. GIGE Miscellaneous Publication No. 35, Field Science Publishers, Hashimoto, 145 pages.
[1] 第18回ゴンドワナからアジア国際シンポジウム(2021年9月)で一部を発表. [2] ゴンドワナ地質環境研究所,トリブバン大学(名誉教授). [3] 世話人会:吉田勝(代表)、在田一則(北大総合博物館)、酒井哲弥(島根大理工学部)、ウプレティB. N.(ネパール科学技術アカデミー)