日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T14.[トピック]大地と人間活動を楽しみながら学ぶジオパーク

[2oral101-10] T14.[トピック]大地と人間活動を楽しみながら学ぶジオパーク

2022年9月5日(月) 09:30 〜 12:00 口頭第1会場 (14号館501教室)

座長:天野 一男(東京大学空間情報科学研究センター)、松原 典孝(兵庫県立大学 大学院 地域資源マネジメント研究科)

11:00 〜 11:15

[T14-O-7] 糸魚川ユネスコ世界ジオパークにおける県立高校と連携したジオパーク学習の実践

*小河原 孝彦1、香取 拓馬1、茨木 洋介1、郡山 鈴夏1、竹之内 耕1、小林 猛生2 (1. フォッサマグナミュージアム、2. 糸魚川ジオパーク協議会)

キーワード:糸魚川ユネスコ世界ジオパーク、フォッサマグナミュージアム、新潟焼山、ジオパーク学習

新潟県糸魚川市にある糸魚川ユネスコ世界ジオパークでは,日本列島の大地を知る活動として地域学習や防災学習を推進してきた.学校や地域住民向けの出前講座では,変動する大地である日本列島の形成史とその大地がもたらした恵みや災害について知り,大地から受ける恩恵と災いは切離せないことを伝えている.

糸魚川市では,学校教育として0歳から18歳までの子ども一貫教育を実施しており,その中にふるさと学習としてのジオパーク学習が体系的に盛込まれている.これは,0歳から8歳を地元ジオサイト体験期,9歳から10歳を地元ジオサイト探索期,11歳から12歳をジオパーク学習期,13歳から18歳をジオパーク研究期としており,保育園・幼稚園の周囲から関心を広げ,最終的にはジオパークを活用した地域づくりの実践や交流活動の推進を目標としている.

現在までのジオパーク学習の到達点は,市内小学校・中学校に対して糸魚川市教育委員会事務局と連携しながら取組みを進めることで,全ての学校で多くの実践がなされている.その一方で,糸魚川市内の高校に対する取組みは遅れがちであった.2019年度に文部科学省の地域との協働による高等学校教育改革推進事業(地域魅力化型)のアソシエイト校に糸魚川市内の高校が認定されたことは,糸魚川市と高校,ジオパーク協議会が一体となったジオパーク学習の推進に対して良い影響をもたらしている.糸魚川高校ではSDGsを始めとする地域課題の探究活動を実施している.糸魚川白嶺高校では,まちづくりと防災に関わる探究活動を推進し, 新潟県立海洋高校では,水産資源,製造・販売等の探究活動を実施している.特に糸魚川白嶺高校は,白嶺防災フォーラムなどを通じて室戸ユネスコ世界ジオパークの室戸高校ともジオパーク学習で連携し,2021年度に糸魚川フォッサマグナミュージアムと連携協定を締結するなど関係を深めている.

2021年度,糸魚川ジオパーク協議会は,内閣府が主催する防災教育チャレンジプランの実践団体に採択され活動してきた.テーマは,「活火山の新潟焼山を知る!楽しむ!備える!プロジェクト ~ボトムアップの防災学習実践~」である.防災学習の対象である新潟焼山は,日本国内に50山ある気象庁の常時観測火山の一つである.今回の防災教育チャレンジプランでは,活火山である新潟焼山を知り,楽しみ,備えることを目標としている.今回は,糸魚川白嶺高校を舞台として,地域住民や大学研究者,他地域のジオパーク関係者,山岳団体など多くの関係者と関係を持ちながらボトムアップのジオパーク学習を実践したことから報告する.

学校での焼山を知る・楽しむ・備える活動として,糸魚川白嶺高校での新潟焼山防災学習を実践するにあたり重要視したことは,一方的に教える従来の出前授業形式ではなく,双方向の学びの場とすることであった.初回は生徒を対象に新潟焼山の何を知りたいかワークショップ形式で意見出しを行い,主催者側の押しつけではない自発的な学びのきっかけを作る努力をした.次に,生徒の興味・関心を念頭に,高校での講義を実施した.ジオパークのネットワークを生かし,新潟焼山を研究している大学教員や類似した活火山を有した島原半島ジオパーク,洞爺湖有珠山ジオパークの専門員にも講師をお願いした.これは,高校のICT設備を活用し,Zoomを利用した講義で実現した.学習の成果は,2月に開催された「高校生国際交流会(高知県室戸高校主催)」で発表した(図1).

このような,生徒の意見を聞きながらボトムアップの活動を推進することは大きな労力や時間を必要とする.しかし,レジリエンスの本質を考えた際に,行政や研究者からの押しつけで防災力は向上していくものではなく,地域住民の生活や人間関係から育まれ向上していくものであることから,今後とも学校と連携したボトムアップのジオパーク活動を推進していきたい.