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[T5-O-10] フランス南東部，ボコンチアン堆積盆地に露出する⽩亜系中部の浮遊性有孔⾍化⽯層序と群集
キーワード：白亜紀、浮遊性有孔虫、群集、生層序
フランス南東部のボコンチアン堆積盆地の白亜系は，テチス地域の保存の良好な大型化石・微化石が多産することから，化石層序学的研究が盛んにおこなわれてきた．近年では，特にステージ境界付近において炭素・オスミウム同位体比層序やサイクロ層序などの検討も盛んに実施されている．このような背景から，ボコンチアン堆積盆地の白亜系には，オーテリビアン階，アルビアン階，セノマニアン階のGSSPが定められるなど，白亜紀の国際標準年代尺度において重要である．テチス地域の白亜系の浮遊性有孔虫化石層序に関しては，主にイタリアの深海性石灰岩や大西洋の深海コアなどで詳細に検討されているが，これらの地層ではアンモナイトなどの大型化石が産出しないために，大型化石層序との統合ができない．一方，ボコンチアン堆積盆地の白亜系は大型・微化石が共産し，これまで大型化石層序，石灰質ナンノ化石層序，炭素同位体比層序がアプチアン～チューロニアンの区間において実施されてきた（例えばHerrle et al., 2004; Gyawali et al., 2017）．そのため, 浮遊性有孔虫化石層序と, 大型化石層序などの他の層序との統合が可能である. しかしながら，ボコンチアン堆積盆地の白亜系浮遊性有孔虫化石層序に関しては，アプチアン/アルビアン，アルビアン/セノマニアン，セノマニアン/チューロニアン境界や海洋無酸素事変OAE1a, 1b, 1d層準など，一部の重要な境界付近でしか行われていない（Gale et al., 2011; Takashima et al., 2009など）．
本研究では白亜系中部が連続的に露出しているフランス南東部・ボコンチアン堆積盆地南西地域において，浮遊性有孔虫化石層序を作成し，石灰質ナンノ化石や大型化石，炭素同位体比層序との統合を行った．検討した区間の地層は，全層厚約1030 ｍあり，アルビアン上部は主に泥灰岩を主体とする地層で，Breistroffer Levelと呼ばれる黒色頁岩層（OAE1d相当層）が挟まる．セノマニアン階は主に石灰岩と泥灰岩の互層からなるのに対して，チューロニアン階は層状石灰岩を主体とし，泥灰岩をほとんど挟まない．セノマニアン階とチューロニアン階の境界付近は泥灰岩と黒色頁岩の互層からなり，これはThomel Levelと呼ばれるOAE2の堆積物である．これらの地層から合計95試料を採取・処理し，浮遊性有孔虫化石の抽出および群集解析を行った．その結果，白亜系中部を下位よりTicinella primula帯〜Marginotruncana schneegansi帯に区分することができた．これらの結果を，石灰質ナンノ化石・大型化石層序，炭素同位体比層序と比較した結果，Th. reicheliの化石帯が，炭素同位体比の顕著な正のピークによって特徴づけられるMid Cenomanian Event I相当の層準と一致した．一方，Geologic Timescale 2020によると，Th. reicheli帯はMid Cenomianian Event Iよりもはるかに下位の層準に位置する．これらのことから，同化石帯の層序学的位置について疑問を投げかけるものとなった．
浮遊性有孔虫群集に関しては，本地域ではアルビアン後期からチューロニアン期の期間が大きく6の海洋環境に区別された．そのなかでも, OAE1dからアルビアン/セノマニアン境界までは貧・中栄養環境であったとみられた．また，アルビアン/セノマニアン境界からLower Cenomanian Event IIまでの期間は富栄養環境であったが，Lower Cenomanian Event IIIからOAE2開始直前までの期間は貧栄養環境へと変化したことが判明した．さらに, OAE2期間は，浮遊性有孔虫群集の顕著な変化がみられたことから，著しい富栄養化が起こったことが示唆され，OAE2以降は中・富栄養環境が継続していたことが明らかになった．
文献
Gale, A. S. et al., 2011. Cretaceous Research, 32(2), 59–130.
Gyawali, R. B. et al., 2017. Newsletters on Stratigraphy, 50, 111‒139.
Herrle, O. J. et al., 2004. Earth and Planetary Sciences Letters, 218(1-2), 149-161.
Takashima, R. et al., 2009. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology, 273, 61‒74.
本研究では白亜系中部が連続的に露出しているフランス南東部・ボコンチアン堆積盆地南西地域において，浮遊性有孔虫化石層序を作成し，石灰質ナンノ化石や大型化石，炭素同位体比層序との統合を行った．検討した区間の地層は，全層厚約1030 ｍあり，アルビアン上部は主に泥灰岩を主体とする地層で，Breistroffer Levelと呼ばれる黒色頁岩層（OAE1d相当層）が挟まる．セノマニアン階は主に石灰岩と泥灰岩の互層からなるのに対して，チューロニアン階は層状石灰岩を主体とし，泥灰岩をほとんど挟まない．セノマニアン階とチューロニアン階の境界付近は泥灰岩と黒色頁岩の互層からなり，これはThomel Levelと呼ばれるOAE2の堆積物である．これらの地層から合計95試料を採取・処理し，浮遊性有孔虫化石の抽出および群集解析を行った．その結果，白亜系中部を下位よりTicinella primula帯〜Marginotruncana schneegansi帯に区分することができた．これらの結果を，石灰質ナンノ化石・大型化石層序，炭素同位体比層序と比較した結果，Th. reicheliの化石帯が，炭素同位体比の顕著な正のピークによって特徴づけられるMid Cenomanian Event I相当の層準と一致した．一方，Geologic Timescale 2020によると，Th. reicheli帯はMid Cenomianian Event Iよりもはるかに下位の層準に位置する．これらのことから，同化石帯の層序学的位置について疑問を投げかけるものとなった．
浮遊性有孔虫群集に関しては，本地域ではアルビアン後期からチューロニアン期の期間が大きく6の海洋環境に区別された．そのなかでも, OAE1dからアルビアン/セノマニアン境界までは貧・中栄養環境であったとみられた．また，アルビアン/セノマニアン境界からLower Cenomanian Event IIまでの期間は富栄養環境であったが，Lower Cenomanian Event IIIからOAE2開始直前までの期間は貧栄養環境へと変化したことが判明した．さらに, OAE2期間は，浮遊性有孔虫群集の顕著な変化がみられたことから，著しい富栄養化が起こったことが示唆され，OAE2以降は中・富栄養環境が継続していたことが明らかになった．
文献
Gale, A. S. et al., 2011. Cretaceous Research, 32(2), 59–130.
Gyawali, R. B. et al., 2017. Newsletters on Stratigraphy, 50, 111‒139.
Herrle, O. J. et al., 2004. Earth and Planetary Sciences Letters, 218(1-2), 149-161.
Takashima, R. et al., 2009. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology, 273, 61‒74.