日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T11.[トピック]堆積地質学の最新研究

[2oral412-21] T11.[トピック]堆積地質学の最新研究

2022年9月5日(月) 13:30 〜 16:45 口頭第4会場 (14号館401教室)

座長:足立 奈津子(大阪公立大学)、加藤 大和(東京大学大学院理学系研究科)、白石 史人(広島大学)

15:00 〜 15:15

[T11-O-23] ブラジル・ラゴアベルメーリャにおける微生物炭酸塩の分解過程

*白石 史人1、半澤 勇作1、朝田 二郎2、CURY Leonardo3、BAHNIUK Anelize3 (1. 広島大学、2. INPEXソリューションズ、3. パラナ連邦大学)

ブラジルのラゴアベルメーリャにおいて,微生物炭酸塩の分解に対する環境変化の影響を理解するため,ラグーンに見られるストロマトライトと塩田に見られる微生物マットを調査した.ストロマトライトは主にMg方解石とあられ石からなり,ドロマイトを含む炭酸塩クラスト上に発達していた.多くのストロマトライトが水面まで侵食されていたが,いくつかの小さな緑色のストロマトライトは,水面下でドーム状形態を保持していた.しかしながら,ストロマトライト表面では岩内性シアノバクテリアが卓越しており,それらによって多数の微小穿孔が形成されていた.また,微生物の好気呼吸は暗条件で炭酸塩の溶解を引き起こしており,多細胞動物はストロマトライト内部を削り取って糞源ペレットを排出していた.これは,恐らく近年のラグーン水化学組成の変化によってストロマトライトの形成が停止し,それらが分解していることを示している.一方,炭酸塩と石膏を沈殿している塩田では,厚さ約3 cmの微生物マットが発達しており,石英・方解石・あられ石・石膏が含まれていた.本研究の調査時点ではCaCO3の沈殿は見られず,従属栄養菌が光合成菌よりも優勢であるために,むしろ溶解が起こっていた.これは,塩田で蒸発が進行することでシアノバクテリアの個体数が低下し,その結果として光合成によるCaCO3沈殿が抑制されたためと考えられる.ラゴアベルメーリャにおけるこれら2つの微生物炭酸塩から得られた結果は,グレージングと微小穿孔に加えて微生物代謝も微生物炭酸塩を分解するための重要なプロセスであること,また塩分濃度変動などの環境変化によって炭酸塩を形成する微生物群集から炭酸塩を破壊する微生物群集へと変化しうることを示している.