10:30 〜 10:45
[T13-O-8] 関東平野中央部野田地域におけるMIS 7e〜5e相当層の層相とテフラ・花粉群集の層序関係の検討
関東平野中央部に分布する更新統下総層群は,これまでにボーリングコア及び土質ボーリング柱状図資料を用いて詳細な分布形態や層序が検討されてきた[1],[2],[3]など.産総研では現在この地域において都市DXに対応した3次元地質地盤図の整備を進めている.今回は,3次元地質地盤図作成のための標準層序構築を目的とした,千葉県野田地域の更新統下総層群の上泉層(MIS 7e)から木下層(MIS 5e)の層序の再検討結果について報告する.
これまでの調査により,MIS 7c(清川層堆積期)の海域は,現在の千葉県野田市南部付近まで広がっていたことが推測されている.つまり下総台地北部に分布する清川層は,野田市南部付近を境に層相が大きく変化することが予想される.また既報によれば,この付近では清川層とその上位の横田層(MIS 7a?)や木下層(MIS 5e)との関係も不明である.以上のことから,下総台地北部に位置する千葉県野田市山崎でGS-ND-2コアを掘削採取し,MIS 7e〜5e相当層の層相記載とテフラ・花粉群集の分析を行い層序関係の検討を行った.
GS-ND-2コアのMIS 7〜5e相当層は大きく4つの堆積サイクル(下位より堆積サイクルA〜D)に区分される.このうち最下部の堆積サイクルAは陸成の泥層から海成の砂層へと変化し,泥層の最上部付近に上泉層のKm2(TCu-1)テフラが挟在することから,下総層群上泉層に相当するMIS 7eを中心としたサイクルであることが分かる.堆積サイクルBは下位のサイクル最上部(海浜相)を覆う土壌から始まり河川チャネル成の礫混じり砂層,そして生物擾乱の著しい砂質泥層へと変化するサイクルである.ただしこのサイクルにテフラの挟在はない.堆積サイクルCは河川チャネル成の礫混じり砂層から氾濫原の泥層へと変化する.このサイクルには下部に清川層のKy3に類似するテフラが挟在する.堆積サイクルDは生物擾乱を受けた砂優勢の砂泥互層から植物根痕を含む砂質泥層へと変化する.
花粉化石群集に基づけば堆積サイクルDはCryptomeria(スギ属)を多産することから木下層上部に相当するMIS 5e後期を中心としたサイクルであると推測される.また下位の堆積サイクルCは層相からは木下層下部の谷埋め堆積物の可能性も否定できないが,花粉化石群集に基づけば木下層下部に特徴的なHemiptelea(ハリゲヤキ属)の多産がみられないことから木下層下部の可能性は低い.
ここで問題になるのは,清川層のKy3に類似するテフラと上泉層の間に,海水の影響を受けたと考えられる生物擾乱を強く受けた泥質が挟まることである.房総半島ではKy3テフラは清川層の下部に挟在する.清川層は上泉層の直上の層であるが,GS-ND-2の堆積サイクルC下部のテフラがKy3テフラならば清川層と上泉層の間にもうひとつ海進イベントがあったことになる.
本講演では以上のような関東平野中央部の下総層群の層序の問題点を整理したうえで,層相・テフラ・花粉化石群集の統合層序により改めてMIS 7e〜5e相当層の層序の再構築を試みたい.
[1] 中澤・遠藤(2002)大宮地域の地質,5万分の1地質図幅; [2] 中澤・中里(2005)地質雑, 111, 87-93; [3] 中澤・田辺(2011)野田地域の地質,5万分の1地質図幅
これまでの調査により,MIS 7c(清川層堆積期)の海域は,現在の千葉県野田市南部付近まで広がっていたことが推測されている.つまり下総台地北部に分布する清川層は,野田市南部付近を境に層相が大きく変化することが予想される.また既報によれば,この付近では清川層とその上位の横田層(MIS 7a?)や木下層(MIS 5e)との関係も不明である.以上のことから,下総台地北部に位置する千葉県野田市山崎でGS-ND-2コアを掘削採取し,MIS 7e〜5e相当層の層相記載とテフラ・花粉群集の分析を行い層序関係の検討を行った.
GS-ND-2コアのMIS 7〜5e相当層は大きく4つの堆積サイクル(下位より堆積サイクルA〜D)に区分される.このうち最下部の堆積サイクルAは陸成の泥層から海成の砂層へと変化し,泥層の最上部付近に上泉層のKm2(TCu-1)テフラが挟在することから,下総層群上泉層に相当するMIS 7eを中心としたサイクルであることが分かる.堆積サイクルBは下位のサイクル最上部(海浜相)を覆う土壌から始まり河川チャネル成の礫混じり砂層,そして生物擾乱の著しい砂質泥層へと変化するサイクルである.ただしこのサイクルにテフラの挟在はない.堆積サイクルCは河川チャネル成の礫混じり砂層から氾濫原の泥層へと変化する.このサイクルには下部に清川層のKy3に類似するテフラが挟在する.堆積サイクルDは生物擾乱を受けた砂優勢の砂泥互層から植物根痕を含む砂質泥層へと変化する.
花粉化石群集に基づけば堆積サイクルDはCryptomeria(スギ属)を多産することから木下層上部に相当するMIS 5e後期を中心としたサイクルであると推測される.また下位の堆積サイクルCは層相からは木下層下部の谷埋め堆積物の可能性も否定できないが,花粉化石群集に基づけば木下層下部に特徴的なHemiptelea(ハリゲヤキ属)の多産がみられないことから木下層下部の可能性は低い.
ここで問題になるのは,清川層のKy3に類似するテフラと上泉層の間に,海水の影響を受けたと考えられる生物擾乱を強く受けた泥質が挟まることである.房総半島ではKy3テフラは清川層の下部に挟在する.清川層は上泉層の直上の層であるが,GS-ND-2の堆積サイクルC下部のテフラがKy3テフラならば清川層と上泉層の間にもうひとつ海進イベントがあったことになる.
本講演では以上のような関東平野中央部の下総層群の層序の問題点を整理したうえで,層相・テフラ・花粉化石群集の統合層序により改めてMIS 7e〜5e相当層の層序の再構築を試みたい.
[1] 中澤・遠藤(2002)大宮地域の地質,5万分の1地質図幅; [2] 中澤・中里(2005)地質雑, 111, 87-93; [3] 中澤・田辺(2011)野田地域の地質,5万分の1地質図幅