09:15 〜 09:45
[T9-O-1] (招待講演)カーボンニュートラルとCO2地中貯留
【ハイライト講演】
世話人よりハイライトの紹介:日本は2030年にCO2排出量50%削減、2050年にはカーボンニュートラルの達成を打ち出しており、それを実現し得る現実的な方法として二酸化炭素の地下貯留、CCSへの注目度は日に日に増している。本発表ではその概要、果たすべき役割のみならず、現在実施されているCCSプロジェクトの内容をカバーし、さらにCCSの将来性を左右する圧入CO2のモニタリング手法を紹介する。また、CCSに絡んで語られることの多い誘発地震への取り組みも紹介する。※ハイライトとは
キーワード:CO2回収・地中貯留 (CCS)、カーボンニュートラル、CO2モニタリング、誘発地震
人間活動によるCO2の排出によって、気候変動が引き起こされていることは間違いないとされている。大気中のCO2濃度は産業革命前に比べて1.5倍にまで増えつつある。この急激なCO2の増加は気温の上昇だけではなく、海水温の上昇など全地球システムに影響を与えている。地球システムは複雑なバランスの上で釣り合っているが、近年の急激なCO2の増加は、この地球上のバランスを速いスピードで壊しつつある。また温度上昇に伴う極域のメタンハイドレートの溶解によって、温室効果の大きなメタンが大気中に放出され、温暖化が加速することも心配されている。このように地球システムのバランスが壊れることで、将来を予測することが難しくなっており、一刻も早いCO2の排出削減が求められている。
近年、CO2の削減のため太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギー技術が普及してきた。近い将来、太陽光や風力発電等がエネルギーの中心となり、火力発電はその不安定な電力を補うような仕組みになっていくと考えられる。例えば九州では太陽光発電が盛んに実施され、条件が良い時間帯は必要な電気を発電できるようになった。また風力発電も海洋上に設置されるようになり、その発電量も火力発電所に匹敵するとされている。つまり太陽光発電や風力発電は、発電ポテンシャルは大きいといえる。一方、再生可能エネルギーの割合を大幅に増やすには、蓄電技術の低コスト化等の技術開発が必要である。特に島国である日本では、他国から電気を持ってくることが難しく、安定した電力供給が求められる。電気を貯めると言う点ではバッテリーが一般的であるが、大量の電気を蓄電することは困難である。そこで重要になってくるのが「水素」である。
余剰電力を使って水の電気分解で水素と酸素を作ることができれば、電気が足りない時にその水素を使って電気を作ることができる。さらに水素は、石油や石炭に代わる物質と考えることもできる。しかし余剰電力からの水素の製造にはコストがかかり、商用化までには時間を要する。現状では、メタンや石炭などの炭化水素から水素を作っており、副産物として出てくるCO2を大気放出していることが多い。このように大気中にCO2を排出して生成した水素をグレーな水素という。このグレーな水素を使う限り、ほとんどCO2削減には貢献していないことになる。一方、太陽光や風力で発電した電気を使ってグリーンな水素を作った場合、カーボンニュートラルな世界が近づいてくるが、先に述べた通り現状技術ではコストの面で現実的でない。そこで現在注目されているのが「ブルーな水素」である。この水素は、炭化水素から水素を作るところはグレーな水素と同じであるが、副産物として出てきたCO2を地中貯留することで大気中へのCO2の放出を低減したものである。例えばオーストラリアに豊富に存在する褐炭から水素とCO2を作成し、CO2を周辺の地層に貯留、水素を日本などに運ぶプロジェクトがある。現在、考えられている水素の多くが、このブルーな水素である。つまり、このコンセプトを実現するにはCO2回収・地中貯留(CCS)が不可欠になる。
さらに日本は2030年のCO2排出量50%削減、2050年のカーボンニュートラルの達成を打ち出した。2050年のCO2排出ゼロを達成するには、人間活動に伴って何処かからCO2が排出されるため、CO2を大気中から回収するDirect Air Capture (DAC)とCO2地中貯留を導入し、ネガティブエミッションを一部で実施する必要がある。このような状況において、CCSは水素社会とも強く関係し、CO2を削減できる現実的な方法と考えられている。
CCSはCO2排出施設や大気中からCO2を回収し、地中に貯留する技術である。地中にCO2を貯留するといっても、地下に巨大空間を建設する必要はなく、岩石の間隙に貯留する。良質な貯留層では、全体の20~30%くらいが間隙である。その間隙を有効に利用してCO2を貯留する。日本周辺だけでも1000億トン以上のCO2を貯留できる地層があるという試算もある。この貯留可能量は、日本の総CO2排出量の100年分以上に相当し、CCSプロジェクトは大きな可能性を持っていることが分かる。国際エネルギー機関(IEA)は、気温上昇を1.5度以内に抑えるためにCCSで約15%のCO2を削減する必要があるとしている。しかしIEAのシナリオを実現するためには、世界中の数千箇所で大規模なCO2貯留を行う必要があり、覚悟を持って取り組む必要がある。
本発表では、カーボンニュートラルに向けた取り組みの中でのCCSの役割と概要、現在実施されているCCSプロジェクト、圧入したCO2の挙動を調べるモニタリング手法、誘発地震への取り組みなどを紹介する。
近年、CO2の削減のため太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギー技術が普及してきた。近い将来、太陽光や風力発電等がエネルギーの中心となり、火力発電はその不安定な電力を補うような仕組みになっていくと考えられる。例えば九州では太陽光発電が盛んに実施され、条件が良い時間帯は必要な電気を発電できるようになった。また風力発電も海洋上に設置されるようになり、その発電量も火力発電所に匹敵するとされている。つまり太陽光発電や風力発電は、発電ポテンシャルは大きいといえる。一方、再生可能エネルギーの割合を大幅に増やすには、蓄電技術の低コスト化等の技術開発が必要である。特に島国である日本では、他国から電気を持ってくることが難しく、安定した電力供給が求められる。電気を貯めると言う点ではバッテリーが一般的であるが、大量の電気を蓄電することは困難である。そこで重要になってくるのが「水素」である。
余剰電力を使って水の電気分解で水素と酸素を作ることができれば、電気が足りない時にその水素を使って電気を作ることができる。さらに水素は、石油や石炭に代わる物質と考えることもできる。しかし余剰電力からの水素の製造にはコストがかかり、商用化までには時間を要する。現状では、メタンや石炭などの炭化水素から水素を作っており、副産物として出てくるCO2を大気放出していることが多い。このように大気中にCO2を排出して生成した水素をグレーな水素という。このグレーな水素を使う限り、ほとんどCO2削減には貢献していないことになる。一方、太陽光や風力で発電した電気を使ってグリーンな水素を作った場合、カーボンニュートラルな世界が近づいてくるが、先に述べた通り現状技術ではコストの面で現実的でない。そこで現在注目されているのが「ブルーな水素」である。この水素は、炭化水素から水素を作るところはグレーな水素と同じであるが、副産物として出てきたCO2を地中貯留することで大気中へのCO2の放出を低減したものである。例えばオーストラリアに豊富に存在する褐炭から水素とCO2を作成し、CO2を周辺の地層に貯留、水素を日本などに運ぶプロジェクトがある。現在、考えられている水素の多くが、このブルーな水素である。つまり、このコンセプトを実現するにはCO2回収・地中貯留(CCS)が不可欠になる。
さらに日本は2030年のCO2排出量50%削減、2050年のカーボンニュートラルの達成を打ち出した。2050年のCO2排出ゼロを達成するには、人間活動に伴って何処かからCO2が排出されるため、CO2を大気中から回収するDirect Air Capture (DAC)とCO2地中貯留を導入し、ネガティブエミッションを一部で実施する必要がある。このような状況において、CCSは水素社会とも強く関係し、CO2を削減できる現実的な方法と考えられている。
CCSはCO2排出施設や大気中からCO2を回収し、地中に貯留する技術である。地中にCO2を貯留するといっても、地下に巨大空間を建設する必要はなく、岩石の間隙に貯留する。良質な貯留層では、全体の20~30%くらいが間隙である。その間隙を有効に利用してCO2を貯留する。日本周辺だけでも1000億トン以上のCO2を貯留できる地層があるという試算もある。この貯留可能量は、日本の総CO2排出量の100年分以上に相当し、CCSプロジェクトは大きな可能性を持っていることが分かる。国際エネルギー機関(IEA)は、気温上昇を1.5度以内に抑えるためにCCSで約15%のCO2を削減する必要があるとしている。しかしIEAのシナリオを実現するためには、世界中の数千箇所で大規模なCO2貯留を行う必要があり、覚悟を持って取り組む必要がある。
本発表では、カーボンニュートラルに向けた取り組みの中でのCCSの役割と概要、現在実施されているCCSプロジェクト、圧入したCO2の挙動を調べるモニタリング手法、誘発地震への取り組みなどを紹介する。