日本地質学会第130年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T7[トピック]鉱物資源研究の最前線

[1oral401-12] T7[トピック]鉱物資源研究の最前線

2023年9月17日(日) 09:00 〜 12:15 口頭第4会場 (共北25:吉田南総合館北棟)

座長:安川 和孝(東京大学)、町田 嗣樹(千葉工業大学)

09:00 〜 09:30

[T7-O-1] [招待講演]深層学習を活用した海底鉱物資源研究の新展開:レアアース泥中のイクチオリス微化石の観察および海底熱水鉱床の物理探査を例に

*見邨 和英1,2 (1. 千葉工業大学、2. 東京大学大学院・工学系研究科)

キーワード:機械学習、深層学習、画像処理、レアアース泥、微化石、海底熱水鉱床、物理探査

深層学習は,多層のニューラルネットワークを利用してデータの持つ複雑なパターンを学習する,機械学習の一手法である.近年,深層学習は自動運転や医療画像の診断,チャットボットなど,日常生活においても様々な場面に応用され,革新的な成果がもたらされている.
本発表では特に,深層学習を用いた画像処理技術にフォーカスする.観察は地球科学の中で最も基本的な研究手法の一つでありながら,高度な知識や技術を持つ専門家が時間をかけて実施する必要があるために効率的なデータの蓄積が困難であることや,定量的な評価が難しいことなどが課題として存在した.深層学習によってこれらの課題を克服することができれば,地球科学研究における観察の意義がさらに高められると期待される. 発表者らはこれまでに,レアアースを高濃度で含む深海堆積物「レアアース泥」の成因研究を進める中で,様々な鉱物粒子を含む顕微鏡画像からレアアース泥の年代決定に有効な魚類の歯や鱗の微化石「イクチオリス」を自動で検出する深層学習システムを開発した [1, 2].この結果,従来の手作業での化石観察と比べて,観察できる化石数を1−2オーダー高めることが可能になった.さらに,この研究で使用した深層学習技術を海底熱水鉱床の物理探査にも応用し,マルチビーム音響測深機で取得した音響画像から,海底熱水活動のシグナルを自動で検知する手法を開発した [3].
上述した微化石の観察,音響画像の解析はいずれも,技術を持つ専門家が時間をかけて実施してきたが,深層学習の適用によって従来手法よりもはるかに高効率で処理を行うことが可能になった.さらに,これらの研究を通じて,深層学習が単に既存の研究を効率的に進めることに寄与するだけでなく,取得できるデータの膨大さや解析の即時性を活かした新しい展開にも繋がる可能性が示されつつある.本発表では,これまでに発表者らが検討してきた深層学習技術について概説するとともに,開発した深層学習システムによって得られた最新の研究成果について報告する.これらを踏まえ,深層学習・画像処理技術の将来展望や今後の適用課題等について議論を深めたいと考えている.

【引用文献】 [1] Mimura et al. (2023) ESS Open Archive, doi: 10.22541/essoar.168500340.03413762/v1 [2] Mimura et al. (2022) Applied Computing and Geosciences, 16, 100092. [3] Mimura et al. (2023) IEEE Journal of Selected Topics in Applied Earth Observations and Remote Sensing, 16, 2703-2710.