130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T7[Topic Session]Frontiers of Mineral Resources Research

[1oral401-12] T7[Topic Session]Frontiers of Mineral Resources Research

Sun. Sep 17, 2023 9:00 AM - 12:15 PM oral room 4 (25-North Wing, Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

Chiar:Kazutaka Yasukawa, Shiki Machida(Chiba Institute of Technology)

11:30 AM - 11:45 AM

[T7-O-10] (entry) Structure and Thermoelectromotive Force Distribution of Sulfide Chimneys in Hydrothermal Vents - Considerations for Deep-sea Power Generation Phenomena -

★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★

*Misaki Takahashi1, Atsushi Okamoto1, Ryoichi Yamada1, Yoshinori Sato1, Tatsuo Nozaki2 (1. Tohoku University Graduate School of Environmental Studies., 2. Submarine Resources Research Center, Research Institute for Marine Resources Utilization, Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)

Keywords:submarine hydrothermal vent, chimney, Kuroko, submarine hydrothermal deposits

海底熱水噴出孔では噴出した熱水が周囲の海水と混合して急速に冷却されて硫化鉱物などの粒子が析出して煙突状のチムニーを形成する。チムニーは内側から外側へ硫化鉱物の種類と割合が変化しており、還元的な噴出熱水と酸化的な海水との間で触媒として働き、化学反応を通して海中に電子が放出されるプロセスが提案されている(Yamamoto. et al, 2018)。チムニーを構成する硫化鉱物は半導体の特性を持ち、温度勾配によって電子を移動させる働きがあることが知られている。しかし、硫化鉱物の半導体特性は微量元素によって変化する可能性があること、チムニーが複数鉱物からなる複雑な累帯構造を持つことから、熱水が噴出するチムニー全体として、電子を海水側と熱水側のどちらに移動させているのかはわかっていない。本研究では、現世の海底熱水噴出孔から採取したチムニー試料について、鉱物組織解析と熱起電力測定を行い、チムニーの発達過程と発電プロセスについて検討した。  伊豆諸島南部の明神礁カルデラから採取した縦30㎝、横21㎝、高さ10㎝のアクティブチムニーと、縦40㎝、横19㎝、高さ17㎝のデッドチムニーの解析を行った。サンプルは縦50 ㎜・横 28㎜・厚さ3 ㎜に整形した。アクティブチムニーは全体的に黄鉄鉱、ウルツ鉱、方鉛鉱から構成され、直径が数百µmの熱水流路が数多く分布していた。デッドチムニーは、最も内側に厚さ5㎜の方鉛鉱と黄銅鉱の層が存在し、外側は重晶石とウルツ鉱の混合層が存在した。熱水流路に近い部分では方鉛鉱の粒子サイズが大きく、離れるにつれて重晶石とウルツ鉱の割合が増え、海水に近い側では組織のほとんどが重晶石で構成されていた。 電位測定では2つのペルチェ素子の上にサンプルを置き、同心円構造の内側を加熱、外側を冷却し、熱水噴出孔付近と同じ方向に温度勾配を作った。最大約120 ℃まで加熱を行い、プローブ接触点は直径100㎛、プローブ間距離を約1㎜として起電力を測定してp型およびn型のキャリアを判別した。 測定はチムニーサンプルと、チムニーが変化したものと考えられている同心円構造を持つ陸上の黒鉱鉱石試料、硫化鉱物の単結晶で行った。デッドチムニーの熱水流路に近傍の方鉛鉱と黄銅鉱の混合領域では負の熱起電力が得られ、n型の領域であると分かった。一方、外側のウルツ鉱と重晶石の領域では熱起電力の測定ができなかった。ウルツ鉱は先行研究よりp型半導体であると指摘されているが、温度当たりの熱起電力の大きさを示すゼーベック係数が小さいことと、空隙の多い組織であったために抵抗が大きくなり、測定ができなかったと考えられる。アクティブチムニーでは組織内のどの部分でも測定が不可能であった。これは組織全体がデッドチムニーよりも空隙の多い構造で抵抗が大きかったことと、組織内に不導体である重晶石が多く分布していることが原因と考えられる。チムニー内に含まれるZnSはラマン分光測定により閃亜鉛鉱ではなくウルツ鉱であると確認されたが、黒鉱の閃亜鉛鉱の熱起電力測定を行ったところ数百~千㎶/Kの大きな正の熱起電力が得られ、p型の特性を持つと分かった。 組織観察と熱起電力の測定結果より、チムニーの累帯構造の形成過程とそれに伴う熱起電力の状態モデルを提案する。初期は硬石膏の壁ができ、最外部に硫化鉱物の微粒子が付着・成長し、それらが外壁を作ることで内部の温度が上がり、黄銅鉱や方鉛鉱などの硫化鉱物が形成すると考えられる。その発達時に最も内側に高密度の方鉛鉱、黄銅鉱の層ができると熱水と海水間の急激な温度勾配によりn型の熱起電力が発生する。これは電子をチムニーの内側から外側へ移動させる働きを持ち、チムニー表面での有機分子の合成や還元反応を進行させると考えられる。後にウルツ鉱の層が形成することでp型の熱起電力も部分的に発生するが、方鉛鉱や黄銅鉱のn型の領域に比べゼーベック係数が小さいため、チムニー全体では電子を海水側に移動させる働きをしていると考えられる。重晶石は初期から硫化鉱物層の外側に形成しているが、半導体特性を持たないため熱起電力には関与しない。熱水活動が停止してからはチムニー内外に温度差が存在しないため、熱起電力は発生しない。もし熱水活動が続いている状態で組織内のウルツ鉱が閃亜鉛鉱に変化するのに十分な時間が経過した場合、大きなp型の熱起電力が発生する可能性がある。その場合はp型のチムニーが形成し、全体として電子を海水側から熱水側へ移動させる働きをする可能性がある。 本研究の結果は、非常に高い温度勾配をもつ海底のチムニーで熱起電力が発生しうること、また、組織改変過程において半導体特性と温度環境が変化するために、特定の時期に熱起電力を発生する可能性を示唆している。