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[T8-O-3] 歪み集中帯における第四紀応力の均一・不均一と可検出性
キーワード:応力逆解法、小断層、テクトニクス、非弾性変形
地殻変動の原動力である応力は,直接視認できない,形のないものである.物体が変形して初めて,我々はそれに外力が働き,応力状態下にある(あった)ことを知りうる.弾性変形の範囲においては,外力が取り除かれるとその痕跡は残されないので,過去の応力は「存在しなかった」のと同義である.地層や岩石が非弾性変形をしない限り,過去の応力は知り得ないし,非弾性変形を生じるにしてもある程度の応力レベル(=媒質の強度)が達成される必要がある.このような様々な制約条件を乗り越えたものだけが古応力として地質体内に記録されることを,野外観察者として改めて意識したいと思う.著者らは,これまで,新潟―神戸,山陰,九州中部(別府–島原地溝帯)などの歪み集中帯(地殻のひずみ速度の速い領域)を対象に,小断層解析に基づいた古応力推定を広域的に実施してきた.対象としたのは,鮮新世以降の地層を切断する小断層や,未固結の断層ガウジを伴うなど定性的に新しいと判断できる小断層であり,歪み集中帯に発達する小断層が現在の応力場と調和的か否かを調べることが主目的であった.その結果,新潟―神戸歪み集中帯の南部(跡津川断層以南)や山陰歪み集中帯では,地震活動から求められる現在の応力場と調和的な古応力が得られた.一方で,新潟―神戸歪み集中帯の北部(跡津川断層以北)や九州中部では少なからず地域差が認められ,活断層を境に応力区が異なることや,ローカルな構造に支配された応力場が存在することが示唆される.また,従来注目されてこなかったこととして,歪み集中帯内部であってもテクトニックな応力が検出されなかったり,そもそも小断層が発達しない地域があるなど,応力(変形)に不均一があることも分かってきた.本発表ではこれらの結果に基づき,地殻応力の均一・不均一や,地殻応力が変形として記録される際のそもそも論などを議論し,小断層の応力逆解法によって分かること・分からないことをまとめる.