日本地質学会第130年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

G-1.ジェネラル サブセッション構造・海洋・堆積・地域地質

[1oral601-11] G-1.ジェネラル サブセッション構造・海洋・堆積・地域地質

2023年9月17日(日) 09:00 〜 12:15 口頭第6会場 (共北37:吉田南総合館北棟)

座長:松崎 賢史(東京大学)、佐藤 大介(産業技術総合研究所)、野田 篤(産業技術総合研究所)、常盤 哲也(信州大学)

11:30 〜 11:45

[G1-O-9] 縮小模型による変形構造の再現:最近の実験材料開発から

MASSARO Luigi1、ADAM Jurgen1、*山田 泰広1,2 (1. Royal Holloway University of London、2. 九州大学)

キーワード:縮小模型、材料、フラクチャー、物性

地質現象は、一般に規模や時間が人間にとって直感的に理解できる範囲を超えている。それを補うために、実験や数値シミュレーションを用いてスケールを変更する試みが行われてきた。中でも褶曲や断層などの変形に関する分野では、時間的にもサイズ的にも現象を縮小して再現することで、最終的な変形形態やその形成過程について理解するだけではなく、その知見を地下資源開発の探査と開発に役立ててきた。

褶曲形成に関する理論化がほぼ完成され、それを解析する能力が十分に向上した1980年代には、褶曲変形に関する検討は数値シミュレーションで十分に行えるようになった。一方断層などの破壊に関する検討は、数値シミュレーションの制約が大きいことから主として物理実験によって検討が進められてきた。

物理実験によって変形現象を縮小再現する際、現象の物理的な意味を保ったまま(つまり物理的等価に)縮小するための理論的な条件(相似則)は1950年代に完成していたが、その条件を満たすように実験を行うことは困難であった。しかし、2000年以降に微小物性を計測できる試験機が開発されたことに伴い、相似律を満たすように実験材料の物性を微調整することができるようになった。これを受けて、様々な地質環境における変形構造を物理的等価に縮小・再現する物理実験が可能となってきている。

本講演では、Massaro et al 2021, Massaro et al 2023の成果を基に、縮小模型実験の可能性が広がりつつある状況を報告する。

Massaro, L., Adam, J., Yamada, Y. 2023. Tectonophysics 855, 229828.
Massaro, L., Adam, J., Jonade, E., Yamada, Y. 2021. Geological Magazine. 1-24.