130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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T8[Topic Session]Stress Inverse Analysis on Field Data

[1poster28-37] T8[Topic Session]Stress Inverse Analysis on Field Data

Sun. Sep 17, 2023 1:30 PM - 3:00 PM T8_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[T8-P-5] Paleo-Stress Analysis of Paleo-Submarine Landslide Outcrops in Yokote City, Akita Prefecture

*MARIKA HAYASHI1, Hiroki HAYASHI1, Souichirou TANAKA2, Kenta KOBAYASHI2 (1. Nuclear Regulation Authority, 2. Faculty of Science. Niigata University)

はじめに  
 断層が構造性の断層であるか非構造性の断層であるかを特定することは、その断層が将来的に活動するかどうかを判断する上で重要である。原子力規制庁では、活断層を含む構造性断層と非構造性断層を識別するための知見を蓄積しており、その中で古海底地すべりとの識別に係る検討を実施している。林ほか(2022)では、阿部ほか(1994)等で古海底地すべりの存在が報告されている秋田県横手市を対象に、断層破砕物質の化学的な性状の違いを検討した。ただし、古海底地すべりの認定は露頭記載の情報のみで判断している。
 そこで本研究は、林ほか(2022)で扱った3露頭を対象に古応力解析を実施し、断層面の応力履歴の検討を行った。なお、本研究は原子力規制庁と新潟大学との共同研究「断層の成因評価に関する基礎的研究」の一部として実施したものである。

露頭概説  
 本研究の対象露頭は、林ほか(2022)で古海底地すべりとして扱った、横手市大屋沼東方の2露頭(S3露頭及びその150m南西にあるS4露頭 )及び横手市北部にある金沢断層の副断層である活断層露頭(細矢ほか, 2018)(F11露頭)である。断層スリップデータは、露頭観察、ボーリング掘削及び定方位ブロック試料から条線を観察することで取得した。 解析条件 S3、S4、F11露頭からそれぞれ63、38、44条の完全断層スリップデータを取得し、露頭ごとに多重逆解法(山路, 1999; Yamaji, 2000)を用いて古応力解析を行った。さらに、露頭内の各小断層について詳細な検討を行うため、S3露頭では露頭とボーリングコア、S4露頭では主断層周辺と副断層群、F11露頭では北面と西面を対象とした応力解析も実施した。また、地層傾動後の活動であることが明らかなF11断層を除き、傾動補正(富田・山路, 2003)を0%、50%、100%の割合で実施し、最適条件を検討した。なお、応力解のクラスターの認定に際し、解析者の主観を可能な限り排除するため、K-meansクラスタリングによる自動決定(Otsubo et al., 2006)を行った。

結果と考察
 S3露頭全体の解析では傾動補正の割合に関わらず、σ1は鉛直、σ3は南西~北の応力解が得られた。露頭及びボーリングコアからは傾動補正50%の時に最も説明性の高い応力解が得られたが、露頭において支配的な応力解である鉛直圧縮応力は、ボーリングコアではほとんど見られなかった。これは、地表と地下で記録している応力状態が異なるためであると考えられるが、この理由の検討はできておらず今後の課題である。
 S4露頭全体は傾動補正50%、副断層群及び主断層周辺は傾動補正100%の時、最も説明性の高い応力解が得られた。いずれの場合でもσ1が鉛直となる応力解が得られているが、主断層周辺ではσ1が鉛直となる応力よりσ1が北北西-南南東、σ3が北東-南西となる応力の方がクラスターの集中度が良い。この応力は主断層を切断する高角なすべり面を動かしうる応力であることから、重力性の変形の後に一部断層面が再活動したことで条線が上書きされていると考えられる。また副断層群からは、上記以外に4つ応力解が得られており、副断層群は主断層よりも複雑な応力履歴を有すると考えられる。
 活断層露頭であるF11露頭全体からは、広域応力を反映したと考えられるσ1は東西、σ3は鉛直となる逆断層性の応力解が得られた。北面では南北圧縮応力がみられ、西面では高角寄り又は南寄りにクラスターの中心が移動するものの、概ね同様の傾向を示す。
 S3及びS4露頭は、構造性断層であるF11露頭と異なる応力を記録していることから、非構造性断層であると考えられる。さらにS3及びS4露頭は、150mと近傍にあるにも関わらず応力解が一致しないため、それぞれが局所的な応力を記録していると考えられること、広域応力である東西方向の圧縮又は引張応力(中嶋, 2018)が見られず、鉛直圧縮応力が見られることから地すべり起因の断層である可能性が高い。

引用
阿部ほか(1994)応用地質, 35, 5, 15-26.林ほか(2022)地質学会要旨, G8-P-1.細矢ほか(2018)地質学会要旨, R22-O-18.中嶋(2018)地質学雑誌, 124, 693-722. Otsubo et al. (2006) J. St. Geol., 28, 991-997.冨田・山路(2003)情報地質, 14, 85-104. 山路(1999)構造地質, 43, 79-88. Yamaji(2000)J. St. Geol., 22, 429–440.