[T8-P-10] (エントリー)活断層未成熟地域における小断層の再活動性:2000年鳥取県西部地震余震域の例
キーワード:2000年鳥取県西部地震、古応力場、断層ガウジK-Ar年代、活断層未発達地域、断層発達過程
地形学的特徴に基づく活断層の認定は,断層の発達過程の理解や地震防災上きわめて重要である(例えば,Wesnousky, 1988; 活断層研究会,1991).一方で,世界中のみならず日本国内でも,地形学的に活断層が認識されていない地域において,中規模~大規模地震が発生している(例えば,Uhrhammer and Bolt, 1991; Fukuyama et al.,2003; Kubo et al., 2017; Nie et al. 2018).このような地形学的情報が乏しい地域においては,小断層の分布や性状が地震活動を反映している可能性があると考えられる.
本研究では,地形学的に活断層が不明瞭な地域であったにもかかわらず内陸地震が発生した2000年鳥取県西部地震の余震域を対象として,フィールドで観察される小断層に着目し,小断層の性状の記載と古応力解析,断層ガウジのXRD分析およびK-Ar年代測定結果に基づき,広域的な地殻応力場と小断層群の発達過程,2000年鳥取県西部地震との関係を議論した.
調査地域の地質は主に約65Maの根雨花崗岩類から成り,多数の節理と7-1Maに貫入した横田単成火山岩群起源の玄武岩~安山岩質岩脈および中新世に貫入したと考えられる少量の流紋岩質岩脈が観察される.小断層の多くは,mm~cmスケールの断層幅を持ち,それらは節理や岩脈に沿って発達している.また,小断層はしばしば岩脈を切断している様子が確認される.これらの小断層から不完全なスリップデータを取得し,古応力解析を行った(Yamaji et al. 2006; Sato 2006).また,断層ガウジのK-Ar年代測定とXRD分析は,4つの粒径(< 0.2μm,0.2–0.5μm,1.0–2.0μm,0.5–1.0μm)に分離した試料に対して実施した.最も細粒なフラクションでは母岩起源のカリ長石などの混入が少なく,自生イライトの量が増加することを確認し,これを断層ガウジの生成年代と解釈した.
本調査地域の小断層および貫入岩から推定される古応力場は,(1)N-S圧縮―E-W伸長の横ずれ断層型~正断層型応力場,(2) NE–SW伸長の正断層型応力場, (3)E-W圧縮N-S伸長の横ずれ断層型応力場から成る.(1)で説明される小断層の断層ガウジから得られたK-Ar年代結果は約26Maを示し,日本海拡大期に形成されたと考えられる.(2)は7-1Maに貫入した横田単成火山岩群起源の岩脈から推定された応力場である.また,小断層と貫入岩の切断関係に基づくと,(3)は7-1Ma以降の応力場であると考えられ,これは地震学的に推定された現在の中国地方の広域応力場(Kawanishi et al., 2009)と調和的である.
上記のような応力場の整理に基づくと,2000年鳥取県西部地震余震域の小断層群は,日本海拡大期に既存の節理に沿って発達した小断層の一部が,貫入岩の形成以降に再活動したと考えられ,その活動は近年まで続いている可能性がある.また断層の変位量と断層破砕帯の幅の関係に基づくと,本調査地域の小断層は,地形学的に不明瞭であることと調和的である.本研究の成果は,地形学的に活断層が不明瞭な地域において,地質学的情報から構築された地殻応力の評価が断層の発達過程の理解に貢献するだけでなく地震防災上も重要であるということを提案する.
本研究では,地形学的に活断層が不明瞭な地域であったにもかかわらず内陸地震が発生した2000年鳥取県西部地震の余震域を対象として,フィールドで観察される小断層に着目し,小断層の性状の記載と古応力解析,断層ガウジのXRD分析およびK-Ar年代測定結果に基づき,広域的な地殻応力場と小断層群の発達過程,2000年鳥取県西部地震との関係を議論した.
調査地域の地質は主に約65Maの根雨花崗岩類から成り,多数の節理と7-1Maに貫入した横田単成火山岩群起源の玄武岩~安山岩質岩脈および中新世に貫入したと考えられる少量の流紋岩質岩脈が観察される.小断層の多くは,mm~cmスケールの断層幅を持ち,それらは節理や岩脈に沿って発達している.また,小断層はしばしば岩脈を切断している様子が確認される.これらの小断層から不完全なスリップデータを取得し,古応力解析を行った(Yamaji et al. 2006; Sato 2006).また,断層ガウジのK-Ar年代測定とXRD分析は,4つの粒径(< 0.2μm,0.2–0.5μm,1.0–2.0μm,0.5–1.0μm)に分離した試料に対して実施した.最も細粒なフラクションでは母岩起源のカリ長石などの混入が少なく,自生イライトの量が増加することを確認し,これを断層ガウジの生成年代と解釈した.
本調査地域の小断層および貫入岩から推定される古応力場は,(1)N-S圧縮―E-W伸長の横ずれ断層型~正断層型応力場,(2) NE–SW伸長の正断層型応力場, (3)E-W圧縮N-S伸長の横ずれ断層型応力場から成る.(1)で説明される小断層の断層ガウジから得られたK-Ar年代結果は約26Maを示し,日本海拡大期に形成されたと考えられる.(2)は7-1Maに貫入した横田単成火山岩群起源の岩脈から推定された応力場である.また,小断層と貫入岩の切断関係に基づくと,(3)は7-1Ma以降の応力場であると考えられ,これは地震学的に推定された現在の中国地方の広域応力場(Kawanishi et al., 2009)と調和的である.
上記のような応力場の整理に基づくと,2000年鳥取県西部地震余震域の小断層群は,日本海拡大期に既存の節理に沿って発達した小断層の一部が,貫入岩の形成以降に再活動したと考えられ,その活動は近年まで続いている可能性がある.また断層の変位量と断層破砕帯の幅の関係に基づくと,本調査地域の小断層は,地形学的に不明瞭であることと調和的である.本研究の成果は,地形学的に活断層が不明瞭な地域において,地質学的情報から構築された地殻応力の評価が断層の発達過程の理解に貢献するだけでなく地震防災上も重要であるということを提案する.