[G-P-4] 大山火山北西麓(淀江地域)の地質構造
キーワード:溝口凝灰角礫岩、火山泥流堆積物、ブロック アンド アッシュフロー
大山北西麓の淀江地域の地質構造については,既往研究1)2)3)において,主として地表露頭で確認可能な大山火山を噴出源とする降下火山灰や火砕流堆積物,火山泥流堆積物に関する地質分布や地質層序が示されている.また,別の既往研究4)では,水源調査用のボーリング調査等も加えて,同地域のさらに詳細な地質分布,地質層序,地質構造について示されている.
筆者らは,鳥取県が同地域の地下水流動状況を明らかにする目的で新たに実施した,全12地点・計902.96m(同地点での重複掘削含む・最長掘削深度:100m)の高品質オールコアボーリング調査のデータ5),既存の土木工事や水源調査用のボーリング調査のデータ,さらに地形判読や地表地質踏査の結果などを合わせて解析することにより,同地域一帯の地質構造について,より詳細に明らかにした.
本地域の主要な地質について,上位層から順に以下に記載する.なお,各地層の層厚は,上記のボーリング調査データに基づいている.また,地質平面図を図1,地質断面図を図2に示す.
【中期~古期大山噴出物】溝口凝灰角礫岩が形成する台地の最上位に位置し,複数の黒ボク土層,火山灰層,軽石層や火砕流堆積物を挟む.最大層厚:12.5m.
【古期扇状地Ⅰ面堆積物】溝口凝灰角礫岩の上位を覆う,火山泥流堆積物.デイサイトの亜円礫~亜角礫を多く含むが風化が進み,一部でクサリ礫化している.最大層厚:5.5m.
【溝口凝灰角礫岩】大山火山北西部の火山麓扇状地において,開析された台地面を形成する火山泥流堆積物.マトリックスは淡黄褐色の粗粒砂主体で新鮮部は固結している.デイサイトの亜円礫~亜角礫(直径:概ね0.5m以下)は,高温酸化により暗赤褐色を呈すもの,酸化されず灰色~暗灰色を示すものが混在する.最大層厚:35.5m.ボーリング調査地点では,EL.-10~+40m付近に分布する.
【火山灰質砂層(大山系)】中粒砂~細粒砂主体の未固結堆積層で,平行葉理・斜交葉理,火山灰薄層の挟みが頻繁に認められる.壷瓶山の南側を中心に広く連続して分布し,層厚は概ね10m前後だが,壷瓶山の南側で層厚が約30mと部分的に厚く,しかも上に凸な地形面を形成している(図2 A-B断面参照).このことは,本層堆積時に壷瓶山が内湾あるいは湖に浮かぶ島の状態にあり,大山山麓裾野の陸地との間で陸繋砂州を形成していた可能性を示唆している.
【火山灰質固結粘土層】一部で風化した軽石を含む火山灰質粘土層.最大層厚:約3m程度の薄層でありながら,下位の安山岩質火砕岩の上位に,調査地一帯に連続的に分布することから,同火砕岩堆積時のco-ignimbrite ashが粘土化したものと考えられる.
【安山岩質火砕岩】安山岩質の角礫を主体とする火砕岩で,礫径は概ね直径:0.5m以下(最大1.5m).同質の岩片・マトリックスで構成され,ともに高温酸化により暗赤褐色を呈している(稀に暗灰色の非酸化岩片が混入).さらに,本地層の下面形状が下位の未区分火砕岩類上の地形の起伏を埋めるように堆積している一方,上面形状はなだらかな緩斜面で大きな起伏が無い(図2参照).これらから,本層は溶岩ドームの崩壊によって形成されたblock and ash flow型の火砕流堆積物であると考えられる.また,マトリックスは未固結で,その一部には地下水の通り道となるような小空隙が頻繁に認められる.調査地一帯に広く連続的に分布し,ボーリング調査地点ではEL.-50~-20m付近と深部に分布し,その最大層厚は50m以上に及ぶ.本層は調査地域周辺の鍋山など,孝霊山の周辺に広く分布している状況から,その噴出源は現在の大山山頂付近ではなく,側火山の一つである孝霊山付近と考えられる.
【安山岩質火砕岩(塊状部)】安山岩質で塊状無層理な半固結の火砕岩で,高温酸化により赤褐色~暗赤褐色を呈し,上位の安山岩質火砕岩と類似した岩質であることから,一連の火山活動で形成された堆積物であると考えられる.調査地一帯から大山火山の北西側山腹に至るまで広く分布しており,層厚は厚いところで100mを超える.ボーリング調査地点では,EL.-70~-40m付近と比較的深部に分布する.
●参考文献
1) 津久井雅志(1984):大山火山の地質, 地質学雑誌, 90巻9号p.643-658.
2) 荒川 宏(1984):大山火山北西部における火山麓扇状地の形成, 地理学評論,57 巻12 号p.831-855.
3) 山元孝広(2017):大山火山噴火履歴の再検討,地質調査研究報告,第68巻,第1号,p.1–16.
4) 米子市水道局・大山山麓西部域の水資源懇談会(2011):大山山麓西部域の水資源 報告書.
5) 鳥取県(2020~2022):第1~9回 鳥取県淀江産業廃棄物処理施設計画地地下水等調査会 資料.
筆者らは,鳥取県が同地域の地下水流動状況を明らかにする目的で新たに実施した,全12地点・計902.96m(同地点での重複掘削含む・最長掘削深度:100m)の高品質オールコアボーリング調査のデータ5),既存の土木工事や水源調査用のボーリング調査のデータ,さらに地形判読や地表地質踏査の結果などを合わせて解析することにより,同地域一帯の地質構造について,より詳細に明らかにした.
本地域の主要な地質について,上位層から順に以下に記載する.なお,各地層の層厚は,上記のボーリング調査データに基づいている.また,地質平面図を図1,地質断面図を図2に示す.
【中期~古期大山噴出物】溝口凝灰角礫岩が形成する台地の最上位に位置し,複数の黒ボク土層,火山灰層,軽石層や火砕流堆積物を挟む.最大層厚:12.5m.
【古期扇状地Ⅰ面堆積物】溝口凝灰角礫岩の上位を覆う,火山泥流堆積物.デイサイトの亜円礫~亜角礫を多く含むが風化が進み,一部でクサリ礫化している.最大層厚:5.5m.
【溝口凝灰角礫岩】大山火山北西部の火山麓扇状地において,開析された台地面を形成する火山泥流堆積物.マトリックスは淡黄褐色の粗粒砂主体で新鮮部は固結している.デイサイトの亜円礫~亜角礫(直径:概ね0.5m以下)は,高温酸化により暗赤褐色を呈すもの,酸化されず灰色~暗灰色を示すものが混在する.最大層厚:35.5m.ボーリング調査地点では,EL.-10~+40m付近に分布する.
【火山灰質砂層(大山系)】中粒砂~細粒砂主体の未固結堆積層で,平行葉理・斜交葉理,火山灰薄層の挟みが頻繁に認められる.壷瓶山の南側を中心に広く連続して分布し,層厚は概ね10m前後だが,壷瓶山の南側で層厚が約30mと部分的に厚く,しかも上に凸な地形面を形成している(図2 A-B断面参照).このことは,本層堆積時に壷瓶山が内湾あるいは湖に浮かぶ島の状態にあり,大山山麓裾野の陸地との間で陸繋砂州を形成していた可能性を示唆している.
【火山灰質固結粘土層】一部で風化した軽石を含む火山灰質粘土層.最大層厚:約3m程度の薄層でありながら,下位の安山岩質火砕岩の上位に,調査地一帯に連続的に分布することから,同火砕岩堆積時のco-ignimbrite ashが粘土化したものと考えられる.
【安山岩質火砕岩】安山岩質の角礫を主体とする火砕岩で,礫径は概ね直径:0.5m以下(最大1.5m).同質の岩片・マトリックスで構成され,ともに高温酸化により暗赤褐色を呈している(稀に暗灰色の非酸化岩片が混入).さらに,本地層の下面形状が下位の未区分火砕岩類上の地形の起伏を埋めるように堆積している一方,上面形状はなだらかな緩斜面で大きな起伏が無い(図2参照).これらから,本層は溶岩ドームの崩壊によって形成されたblock and ash flow型の火砕流堆積物であると考えられる.また,マトリックスは未固結で,その一部には地下水の通り道となるような小空隙が頻繁に認められる.調査地一帯に広く連続的に分布し,ボーリング調査地点ではEL.-50~-20m付近と深部に分布し,その最大層厚は50m以上に及ぶ.本層は調査地域周辺の鍋山など,孝霊山の周辺に広く分布している状況から,その噴出源は現在の大山山頂付近ではなく,側火山の一つである孝霊山付近と考えられる.
【安山岩質火砕岩(塊状部)】安山岩質で塊状無層理な半固結の火砕岩で,高温酸化により赤褐色~暗赤褐色を呈し,上位の安山岩質火砕岩と類似した岩質であることから,一連の火山活動で形成された堆積物であると考えられる.調査地一帯から大山火山の北西側山腹に至るまで広く分布しており,層厚は厚いところで100mを超える.ボーリング調査地点では,EL.-70~-40m付近と比較的深部に分布する.
●参考文献
1) 津久井雅志(1984):大山火山の地質, 地質学雑誌, 90巻9号p.643-658.
2) 荒川 宏(1984):大山火山北西部における火山麓扇状地の形成, 地理学評論,57 巻12 号p.831-855.
3) 山元孝広(2017):大山火山噴火履歴の再検討,地質調査研究報告,第68巻,第1号,p.1–16.
4) 米子市水道局・大山山麓西部域の水資源懇談会(2011):大山山麓西部域の水資源 報告書.
5) 鳥取県(2020~2022):第1~9回 鳥取県淀江産業廃棄物処理施設計画地地下水等調査会 資料.