[G-P-5] 沖縄県宮城島西部に分布する島尻層群の堆積環境及び 貝化石と砕屑性ジルコンを用いた年代測定
キーワード:島尻層群、タービダイト、砕屑性ジルコン、U-Pb年代、Sr同位体比
沖縄本島勝連半島沖の島々には,島尻層群,知念層,琉球層群が分布している.島尻層群はシルト岩を基本に砂岩層と凝灰岩層を挟み下位から豊見城層,与那原層,新里層の3つに区分され,地質年代は後期中新世-前期更新世である(兼子,2007,地質ニュース).これまで勝連半島及び周辺離島では,岩相や微化石に着目した研究が行われてきた(e.g.,大清水・井龍,2002,地質学雑誌;花方,2004,瑞浪市化石博物館研究報告;千代延ほか,2009,地質学雑誌).一方,この地域で産出する大型化石については,MacNeil(1960,U. S. Geol. Surv. Prof. Pap.)やNoda(1988,Sci. Rep. Inst. Geosci., Tsukuba Univ., Sec. B)において軟体動物が,大塚(2020MS,琉大卒論)や稲葉(2021MS,琉大卒論)においてイシサンゴが検討されている.宮城島南西部の海岸には大規模露頭が露出しており,花方(2004,瑞浪市化石博物館研究報告)が詳細な浮遊性有孔虫化石層序を研究している.しかし,この地域からの数値年代の報告はない.
そこで本研究では当露頭で地質調査を行い,岩相と産出化石を詳細に検討し,凝灰質岩層から採取したジルコンのU-Pb同位体比と二枚貝化石のSr同位体比をレーザー・アブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)で分析し,絶対年代測定を行った.
本研究露頭は,激しく生物撹拌されたシルト岩-砂質シルト岩を主体とし,下位では,層厚10 cm以下の火山噴出物を主体とした凝灰質細粒砂-極細粒砂岩層が多数認められた.その上位では砂岩層の出現頻度は減少するが,直径数cmの軽石を含む層厚10–30 cm程度の比較的厚い凝灰質細粒-極細粒砂岩層が認められた.砂岩層中には平行葉理,クライミングリップル葉理や,正級化構造などが確認されることから,これらの砂岩層は混濁流などにより浅海域から流入した堆積物により形成された可能性が高い.Sr同位体年代測定では最下位から8 m上位の砂質シルト岩層から採集した二枚貝化石Acila sp.1個体およびLucinoma acutilineatum 2個体の計3個体を用いた.測定の結果,それぞれ2.04 Ma,1.81 Ma,1.45 Maという値を得た.また,最下位より1.5 m上位の初生的な堆積構造が残存している凝灰質砂岩層から採集された32粒のジルコンのU-Pb年代測定法によるTera-Wasserburg図でのintercept年代(T-W年代)は3.14 ± 0.05 Maであった.また,最下位より6.4 m上方の軽石を多数含む砂岩層から採集された8粒のジルコンのT-W年代は2.89 ± 0.10 Maであった.花方(2004,瑞浪市化石博物館研究報告)は本研究露頭であるT07a地点においてGloboquadrina (= Dentoglobigerina) altispira(LAD=3.47 Ma in Pacific; Raffi et al., 2020, Geol. time scale)の産出を報告した.Sr同位体年代測定結果は最も古い年代が2.04 Maであり,有孔虫化石から推定した年代より若い.しかし今回の測定誤差の下限は4–2.8 Maの年代決定が困難な範囲が含まれるため,少なくとも4 Maまでの年代幅を想定する必要がある.一方,当露頭ではメタン湧水などの痕跡も見つかっており,本測定に用いた二枚貝骨格が二次的な続成作用により化学組成が変化していた可能性もある.
また,本研究のジルコンU-Pb年代測定では本露頭は下位で3.14 ± 0.05 Ma,その上位で2.89 ± 0.10 Maの年代を示した.この年代も化石から推定された年代より若い結果となった.本露頭では浅海域からの流入と考えられる砂岩層が多数含まれ,それらの中には生物撹拌により上下の地層との境界が不明瞭なものもあった.今後は,有孔虫化石の再堆積などの可能性なども考慮し,化石群集解析を再検討する必要がある.
そこで本研究では当露頭で地質調査を行い,岩相と産出化石を詳細に検討し,凝灰質岩層から採取したジルコンのU-Pb同位体比と二枚貝化石のSr同位体比をレーザー・アブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)で分析し,絶対年代測定を行った.
本研究露頭は,激しく生物撹拌されたシルト岩-砂質シルト岩を主体とし,下位では,層厚10 cm以下の火山噴出物を主体とした凝灰質細粒砂-極細粒砂岩層が多数認められた.その上位では砂岩層の出現頻度は減少するが,直径数cmの軽石を含む層厚10–30 cm程度の比較的厚い凝灰質細粒-極細粒砂岩層が認められた.砂岩層中には平行葉理,クライミングリップル葉理や,正級化構造などが確認されることから,これらの砂岩層は混濁流などにより浅海域から流入した堆積物により形成された可能性が高い.Sr同位体年代測定では最下位から8 m上位の砂質シルト岩層から採集した二枚貝化石Acila sp.1個体およびLucinoma acutilineatum 2個体の計3個体を用いた.測定の結果,それぞれ2.04 Ma,1.81 Ma,1.45 Maという値を得た.また,最下位より1.5 m上位の初生的な堆積構造が残存している凝灰質砂岩層から採集された32粒のジルコンのU-Pb年代測定法によるTera-Wasserburg図でのintercept年代(T-W年代)は3.14 ± 0.05 Maであった.また,最下位より6.4 m上方の軽石を多数含む砂岩層から採集された8粒のジルコンのT-W年代は2.89 ± 0.10 Maであった.花方(2004,瑞浪市化石博物館研究報告)は本研究露頭であるT07a地点においてGloboquadrina (= Dentoglobigerina) altispira(LAD=3.47 Ma in Pacific; Raffi et al., 2020, Geol. time scale)の産出を報告した.Sr同位体年代測定結果は最も古い年代が2.04 Maであり,有孔虫化石から推定した年代より若い.しかし今回の測定誤差の下限は4–2.8 Maの年代決定が困難な範囲が含まれるため,少なくとも4 Maまでの年代幅を想定する必要がある.一方,当露頭ではメタン湧水などの痕跡も見つかっており,本測定に用いた二枚貝骨格が二次的な続成作用により化学組成が変化していた可能性もある.
また,本研究のジルコンU-Pb年代測定では本露頭は下位で3.14 ± 0.05 Ma,その上位で2.89 ± 0.10 Maの年代を示した.この年代も化石から推定された年代より若い結果となった.本露頭では浅海域からの流入と考えられる砂岩層が多数含まれ,それらの中には生物撹拌により上下の地層との境界が不明瞭なものもあった.今後は,有孔虫化石の再堆積などの可能性なども考慮し,化石群集解析を再検討する必要がある.