[G-P-11] 布田川断層浅部掘削コアに見られる変形構造と阿蘇火砕流堆積物の層序(序報)
キーワード:布田川断層、阿蘇火砕流堆積物、帯磁率、かさ密度、断層掘削
2016年熊本地震を引き起こした布田川断層の後期更新世以降の活動史解明,および地下浅部の断層帯におけるルミネッセンス年代のリセットを検証することを目的に,布田川断層の浅部ボーリング掘削を行った.本発表では掘削の概要を説明するとともに,コア試料中に認められる変形構造と阿蘇火砕流堆積物の層序について予察的に発表する.掘削地点は2016年熊本地震において最大の右横ずれ変位量が認められた益城町堂園地区で,京都大学(2018)において最大深度G.L.–691.7 mを含む3孔(FDP-1, FDP-2, FDB-1)のボーリングが掘削された場所である.本研究で実施したボーリング掘削(FFD-1)は,掘削孔径φ86 mm,掘削角度69°,断層との離隔距離54 m,掘削長131 mで,京都大学(2018)の地下断面図においてG.L.–100 m付近で断層と交差するように計画した.コア採取は全区間で実施し,断層に近い80〜131 m区間ではルミネッセンス信号がリセットしないよう,コアフロー全体を通して遮光状態を維持した.コア試料の観察の結果,試料中には複数の阿蘇火砕流堆積物が含まれることが分かった.49.8 m以浅の区間は軽石を多く含む白色〜淡褐色の非溶結凝灰角礫岩であり,Aso-4火砕流堆積物(小谷軽石流)に相当する.49.8〜131 m区間はスコリアを多く含む暗灰色〜灰色の溶結凝灰岩を主とし,Aso-3火砕流堆積物もしくはより下位層に相当する.溶結の程度には強弱が認められ,またシルトの薄層を挟むなど複数のユニットもしくは阿蘇火砕流堆積物からなると考えられる.これに対応する層準が得られているFDP-1および FDP-2を含めて,コアのかさ密度および帯磁率を測定した結果,これらの値が溶結の程度を表す指標として有効であり,コア間の対比が可能であることが分かった.一方,102.1〜102.3 m区間には複合面構造を有する傾斜した断層ガウジ帯が認められ,これを境に堆積物の層相が変化する.本ボーリング掘削は全区間において回収率がほぼ100%であり,他に明瞭な断層ガウジは認められないことから,本区間の断層ガウジ帯が布田川断層本体であると考えられる.
【謝辞】本研究では,原子力規制庁の委託業務として京都大学より実施された布田川断層掘削プロジェクトで取得されたデータおよびコア試料を使用させて頂きました.記して感謝申し上げます.
【引用文献】京都大学 (2018), 追加ボーリングコアを用いた断層破砕物質の分析 ボーリングコア及びボーリング孔を用いた応力測定 ②布田川断層(3/3). 平成29年度原子力規制庁委託成果報告書, 平成30年3月.
【謝辞】本研究では,原子力規制庁の委託業務として京都大学より実施された布田川断層掘削プロジェクトで取得されたデータおよびコア試料を使用させて頂きました.記して感謝申し上げます.
【引用文献】京都大学 (2018), 追加ボーリングコアを用いた断層破砕物質の分析 ボーリングコア及びボーリング孔を用いた応力測定 ②布田川断層(3/3). 平成29年度原子力規制庁委託成果報告書, 平成30年3月.