日本地質学会第130年学術大会

講演情報

セッションポスター発表

J1. ジュニアセッション

[1poster69-93] J1. ジュニアセッション

2023年9月17日(日) 13:30 〜 15:00 Jr._ポスター会場 (吉田南総合館北棟1-2階)

[J1-P-20] 北海道白金青い池を「青く」見せている成分の再現

*中央大学 附属高等学校1 (1. 中央大学附属高等学校)

研究者氏名:森田光織

 北海道白金青い池は、十勝岳の防災工事による堰堤に水が溜まってできた人工池である。その青さは地形と地質による奇跡である。底に滞留した微粒子が光を反射し、コロイドが光を散乱して青く見えるとされる。コロイドは一般にはAl(OH)₃とされる。山中2015では青い池の分析がされ、高貝・阿部2014では青い池の蛍光X線スペクトルの解析結果から珪酸Alのコロイド微粒子が存在し池を青く見せると示唆される。しかし珪酸とAlが単独で存在するか珪酸Alとして存在するかは特定されていない。本研究では再現実験を通して理由解明を目的とした。
 美瑛川の水の分析について。肉眼で無色透明、pH=5.7。レーザー照射によると散乱がありコロイド溶液である。容器を振らないときと比べ容器を振ったときは光の道筋がはっきりすることで沈殿していたコロイドが分散したと考えられる。
仮説。Al(OH)₃の沈殿を用いて実験した。Al(OH)₃のコロイドと珪酸塩(水ガラス)のコロイドを共存させるためにAl(OH)₃と水ガラスを混ぜると白濁に近いがやや青く見える溶液が生成された。Al(OH)₃と珪酸塩の共存で水溶液と青い池が青く見えるという仮説を立てた。上澄みだけでは無色透明に見える。そのため青い池と同様に沈殿物による反射とコロイドによる散乱により青く見えると考える。
 結果。NaOHによる沈殿量と色の変化。
 実験方法:Al(NO₃)₃[0.1mol/L 100mL]、NaOH[1.0mol/L]を反応させてAl(OH)₃を生成した後、水ガラス[18.9g]を混ぜる。Al3+を含む溶液にOH-を少量加えるとAl(OH)₃の沈殿が生じ、過剰量のNaOH水溶液を加えるとテトラヒドロキソ酸錯体を形成して溶解し無色に戻る。ここでNaOHによる沈殿の量と溶液の色の見え方について考察した。実験よりAl(NO₃)₃[0.1mol/ 100mL]に対しNaOH[1.0mol/L 34mL]の時最も多く沈殿する。結果はNaOH[40mL]での透過スペクトル分析は美瑛川とほぼ一致した。
 NaOH[54mL]で溶液は作成時にほぼ無色透明であったが、翌日は底に沈殿があり溶液は青く見えた。時間を経たことでCO₂を吸収またはCO₂を吸収し水ガラスと反応し沈殿ができた可能性がある。後者なら珪酸Alが生成されている可能性もある。透過スペクトルは美瑛川と一致しないが肉眼では青く見える。この水溶液は塩基性である。
考察と今後の課題。水溶液が青く見える理由に青い池と同様に光が沈殿に反射してコロイドにより散乱されている可能性がある。青い池に環境を近づけ沈殿により青く見える可能性を調べるために堆積物を敷いて検証を行う必要がある。NaOH[40~54ml]で透過スペクトルが一致し青色に見える可能性がある。また、水ガラス由来のNaOHで青く見える可能性もある。美瑛川の水(他の川と合流後)はpH=5.7であるが実験の水溶液は塩基性。この齟齬に関して更なる研究が必要である。

引用文献
高貝慶隆・阿倍遼太,2014.湖面の青色色彩に関する五色沼と北海道美瑛川青い池の化学的類似性と相達点について.共生のシステム,14,80-87.福島大学学術機関.
山中 勝,2015.名水を訪ねて(111)道北の名水.地下水学会誌57,533-545.

謝辞。国土交通省北海道開発局旭川開発建設部の高貝一義様・濱中昭文様には美瑛川の水の入手についてご協力をいただいた。また中央大学附属高等学校武市雅至・佐々木亮・田島丈年・三輪貴信ほか各教員に実験・発表指導を賜った。ここに感謝申し上げる。

キーワード:
青い池・スペクトル・水酸化アルミニウム・コロイド・珪酸アルミニウム