日本地質学会第130年学術大会

講演情報

セッションポスター発表

J1. ジュニアセッション

[1poster69-93] J1. ジュニアセッション

2023年9月17日(日) 13:30 〜 15:00 Jr._ポスター会場 (吉田南総合館北棟1-2階)

[J1-P-24] えっ!?島が浮いてる?浮島現象を科学するⅥ

★日本地質学会ジュニアセッション優秀賞★

*熊本県宇土高等学校 科学部地学班1 (1. 熊本県宇土高等学校 科学部地学班)

研究者氏名:2年 本田琢磨・徳丸亮汰・新宅草太・小林 瑞/1年 米田直人・村上聖真・吉田大暉・西川幸輝

1.はじめに~浮島現象とは~
 海面上に発生し、沿岸の陸地や島などが浮いて見える下位蜃気楼の一種。昼間に日光で温められた海水の影響を受け、海面付近の空気と上空の空気とで温度差がうまれ、大気中の光の屈折により像が反転し、虚像が見える自然現象である。観測点の高さや気温と海水温に差があるなどの条件がそろうことで見ることができる。

2.研究の目的
 熊本の不知火海で見ることができる浮島現象を観測していたときに、どのような条件がそろえば、さらに浮いた浮島が見られるのかと考え、過去の浮島観測から考えた①気温と海水温の温度差がある、②観測点の高さが低い(海岸付近)、③適度の距離という条件を再現実験を通して観測・発生条件を探ろうと考えた。

3.研究の方法
 ヒーターや温度調節器から自作の再現装置を作り、①ヒーターの温度②観測点の高さ③ヒーターの長さを調べる。それぞれの条件による違いを調べるため、共通条件を定め対照実験を行う。

4.研究結果
A 浮島の発生条件
①ヒーターの温度が高くなるほど、②観測点が低いほど、③ヒーターを長くするほど対象が浮いて見えた。それぞれの浮き具合の数値化すると、観測点の高さによる変化が大きく、実験から観測点の位置が低くないとそもそも見ることができないことがわかった。

B 浮島の発生原理
(1)ヒーター上の気温の鉛直分布を調べ、蜃気楼の発生要因となる“温度層”の計測を行った。ヒーターの温度が高くなると、気温変化する“温度層”の厚さが厚くなり、温度変化による密度差で光は屈折するため、蜃気楼が発生するのを確認した。
(2)シミュレーションを用いた光路説明
 A. 海面と気温に温度差がない場合
光は直進するが、地面を基準にすると地球の丸い効果によって光路が曲線になる。よってある程度高い場所でないと、光源が見えない。
 B. 海面と気温に温度差がある場合
  ア.シリコンラバーヒーターによる温度の計測
  観測時の温度層を再現するために、ヒーター上の気温の鉛直分布を計測した。海面と気温の温度差(約4.3℃)をヒーターの温度と室温との温度差に近づけて計測を行った。
  イ.観測点の高さが低いとき
  海面と気温との温度差による空気の密度差が光を屈折させ、二つに光路が交差したときに、対象が反転して見える浮島が発生し、ある程度高い場所にあるものでも反転して見えることがわかった。
  C.観測点の高さが高いとき
  対象物の下ほうが少し反転して見えるが、低い場所と比較すると見えづらいと言える。

5.一番浮島が見られる時期や場所は?
 実験からわかった条件によると永尾神社から①冬の早朝に②海岸付近で③大島方面を見ると最も浮いた浮島現象が見られると考えた。③に10km程度の距離が必要であることがわかった。

6.結論および成果
 浮島現象を再現し、記録することに成功した。浮島現象の発生・観測条件は①気温と海水温の温度差があり、②観測点の高さが低い、③適当な距離があることが必要であると考えた。また最も浮島が浮いて見られるのは①冬の早朝に②海岸付近で潮位が満潮に近い時③観測対象まで10km程度の距離が必要であることがわかった。海面上は、気温が急変して密度変化がある。それにより、海面付近を通過する光は屈折し、浮島現象が発生することが確認できた。また、排除が難しい地球の丸い効果を除くことで、光の屈折による浮き具合の変化のみを調べることができた。

7 今後の展望
 風(風速、風力)が上位蜃気楼の発生に影響するとされており、ヒーターを用いた上位蜃気楼の再現実験を行いたい。

キーワード:浮島現象、蜃気楼、シミュレーション、再現実験、数値化