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[T16-O-4] 中部更新統下総層群藪層下部の指標テフラ
キーワード:中期更新世、テフラ、MIS10
都市域の地質地盤図「東京都区部」1)では,東京層下部に相当する軟弱な谷埋め堆積物を識別し,その分布を可視化したことが注目されたが,この谷埋め堆積物の識別においては,東京層下部のテフラのほか,削剥された側の地層のテフラの同定も極めて重要な役割を担った.特に藪層の指標テフラとしてYb1.5を新称・記載したうえで,東京都区部のボーリングコア試料にこのテフラを見出したことは極めて大きな意義を持つ.このテフラは,Yb2~Yb5?が記載された千葉県木更津市宿2)において藪層下部のYb2より下位の内湾層基底にパッチ状に挟在するもので,比較的高屈折率を示す直方輝石の屈折率特性に基づきYb0として報告3)されたテフラである.本発表では,直方輝石の屈折率γが1.714前後のモードを示して類似する藪層の指標テフラYb0,1.5,3の相違点を整理する.
Yb0は姉崎図幅地域の藪層基底部に認定された数mm径の軽石及びスコリアからなるテフラ2)で,直方輝石の屈折率γが1.714前後のモードを示すことで特徴づけられる4).千葉県船橋市のGS-FB-1コアでは深度117.25–117.35mの藪層基底部に本テフラが確認されている5).この試料の火山ガラスの屈折率はn=1.518–1.521(1.519モード)と高屈折率を示すが,陸上露頭のYb0では粘土化により屈折率測定はできていない.場所により本テフラの上下に,低屈折率モードを示す直方輝石を含むテフラが複数認められ,Yb0グループ(Yb0G)として記載されている4),5).Yb0の重鉱物組成は両輝石を主とするが,市原市南岩崎では普通角閃石(n2=1.673–1.682)を含む4).
木更津市宿におけるYb1.5は重鉱物として普通角閃石,直方輝石,黒雲母を含み,Yb0とYb3に対し角閃石に富む.直方輝石の屈折率はγ=1.709–1.718(1.714)とYb0に類似する.火山ガラスの屈折率はn=1.496–1.500,1.503–1.506であり,この点でYb0と区別できる.普通角閃石の屈折率はn2=1.666–1.686とレンジが大きく,主成分化学組成ではMnOが低くK2Oが高い成分とMnOが高くK2Oが低い2つのグループに分けられる.大田区GS-OT-1コア,台東区GS-UE-1コア,練馬区GS-NM-1コアでは火山ガラスもしくは普通角閃石の屈折率特性および主成分化学組成の類似からYb1.5に対比できるテフラが検出された1). Yb3は市原市瀬又では径数cmの白色軽石からなり,重鉱物は両輝石を主とし,わずかに普通角閃石を含む.火山ガラスの屈折率はn=1.502–1.508(1.505),普通角閃石の屈折率はn2=1.677–1.687である.Yb3とYb1.5は直方輝石のみならず火山ガラス,普通角閃石の屈折率も類似するため,その識別には重鉱物組成における角閃石の含有率と黒雲母の有無と,Yb2の下位に認定されている温暖化石群集層準との層位関係とに着目する必要がある.
藪層下部では上記テフラのほかに,下位からYb1,Kkt,So-TN,So-OTが記載されており1),Yb1の直上及び直下には角閃石に富む軽石テフラが挟在する場合があるが,これらのテフラとYb1.5との上下関係は直接には確認されていない.直方輝石の屈折率が高い特徴を持つ複数のテフラがあることを踏まえて,これらのテフラの上下関係を明らかにするとともに,藪層基底に相当するMIS10の低海面期を他地域に追跡することが今後の課題である.
引用文献:1)納谷ほか(2021)都市域の地質地盤図「東京都区部」,2)徳橋・遠藤(1984)姉崎地域の地質,5万分の1地質図幅,3)佐藤(1993a)堆積学研究会1993年秋季研究集会講演要旨,4)佐藤(1993b)千葉中央博自然誌研究報告第2巻第2号,5)納谷ほか(2018)都市域の地質地盤図「千葉県北部地域」
Yb0は姉崎図幅地域の藪層基底部に認定された数mm径の軽石及びスコリアからなるテフラ2)で,直方輝石の屈折率γが1.714前後のモードを示すことで特徴づけられる4).千葉県船橋市のGS-FB-1コアでは深度117.25–117.35mの藪層基底部に本テフラが確認されている5).この試料の火山ガラスの屈折率はn=1.518–1.521(1.519モード)と高屈折率を示すが,陸上露頭のYb0では粘土化により屈折率測定はできていない.場所により本テフラの上下に,低屈折率モードを示す直方輝石を含むテフラが複数認められ,Yb0グループ(Yb0G)として記載されている4),5).Yb0の重鉱物組成は両輝石を主とするが,市原市南岩崎では普通角閃石(n2=1.673–1.682)を含む4).
木更津市宿におけるYb1.5は重鉱物として普通角閃石,直方輝石,黒雲母を含み,Yb0とYb3に対し角閃石に富む.直方輝石の屈折率はγ=1.709–1.718(1.714)とYb0に類似する.火山ガラスの屈折率はn=1.496–1.500,1.503–1.506であり,この点でYb0と区別できる.普通角閃石の屈折率はn2=1.666–1.686とレンジが大きく,主成分化学組成ではMnOが低くK2Oが高い成分とMnOが高くK2Oが低い2つのグループに分けられる.大田区GS-OT-1コア,台東区GS-UE-1コア,練馬区GS-NM-1コアでは火山ガラスもしくは普通角閃石の屈折率特性および主成分化学組成の類似からYb1.5に対比できるテフラが検出された1). Yb3は市原市瀬又では径数cmの白色軽石からなり,重鉱物は両輝石を主とし,わずかに普通角閃石を含む.火山ガラスの屈折率はn=1.502–1.508(1.505),普通角閃石の屈折率はn2=1.677–1.687である.Yb3とYb1.5は直方輝石のみならず火山ガラス,普通角閃石の屈折率も類似するため,その識別には重鉱物組成における角閃石の含有率と黒雲母の有無と,Yb2の下位に認定されている温暖化石群集層準との層位関係とに着目する必要がある.
藪層下部では上記テフラのほかに,下位からYb1,Kkt,So-TN,So-OTが記載されており1),Yb1の直上及び直下には角閃石に富む軽石テフラが挟在する場合があるが,これらのテフラとYb1.5との上下関係は直接には確認されていない.直方輝石の屈折率が高い特徴を持つ複数のテフラがあることを踏まえて,これらのテフラの上下関係を明らかにするとともに,藪層基底に相当するMIS10の低海面期を他地域に追跡することが今後の課題である.
引用文献:1)納谷ほか(2021)都市域の地質地盤図「東京都区部」,2)徳橋・遠藤(1984)姉崎地域の地質,5万分の1地質図幅,3)佐藤(1993a)堆積学研究会1993年秋季研究集会講演要旨,4)佐藤(1993b)千葉中央博自然誌研究報告第2巻第2号,5)納谷ほか(2018)都市域の地質地盤図「千葉県北部地域」