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[T16-O-5] 大阪堆積盆地の堆積変遷の特徴について -長尺ボーリングデータを用いた検討-
キーワード:堆積物、第四紀、大阪湾
大阪湾と大阪平野部は周辺を山地(山地の麓には活断層)に囲まれた堆積盆地である.その中には1000m以上の未固結の堆積物が堆積している.下部の地層は砂礫~粘土の堆積物であるが,基本的に淡水成の地層であり,上部では海成粘土層と砂礫層の互層がみられる.関西空港で実施されたKIX18-1ボーリング調査の結果より堆積の開始時期はおよそ350万年前と推定され(Kitada et al,2011),その後,盆地の中を土砂が埋積する環境が継続することによって厚い堆積物がたまっているといえる.長尺の地質調査ボーリングは北の魚崎浜で実施されたGS-K1も着岩ボーリングの一つである(吉川他,2000).そのほかにも1960年代に実施されたODボーリングや兵庫県南部地震以降に調査ボーリングとして実施されたGSボーリングなどの長尺ボーリングが存在する.本研究では,それら長尺ボーリングデータを用いて,堆積場の違いなどを検討したので報告する. 長尺ボーリングの特徴を読み取りやすいように,50m毎に層相の構成割合の変化を作成し(地質構成図),粘性土の割合を青で示し,砂を黄,礫をオレンジで示した.例えばGS-K1の場合,基盤直上から海成粘土層が堆積盆地内で確認されるまでの部分(深度650m)は砂が優勢で50%以上である.粘性土は基盤岩上部から増減を繰り返す.深度700m以浅では海成粘土層が繰り返し堆積するが,50m毎に集約すると全体に少しずつ粘性土の割合が大きくなる傾向にある.最も粘性土の割合の大きな深度400~450mの区間はMa3層に相当し,粘性土の割合は80%を超える.その後,粘性土の割合は少しずつ減少し,深度0~200mでは,礫の割合が多くなる.一方,基盤岩に着岩するまで掘削されたKIX18-1(関西空港島)は基盤岩直上には礫が多く分布する.また,全体に砂の割合が多く,粘性土は深度1100~1150m,深度100~150mで大きくなる.全体の特徴として,海成粘土層が出現する深度500mで粘性土の割合が最小となり,少しずつ粘性土分が多くなる.最も粘性土の割合が大きくなるのはMa10層の深度である.また,粘性土の割合が大きく低くなるポイントが,海成粘土が堆積を始める時期にほぼ該当しているようにも見える. 長尺ボーリングデータから地層構成図作成すると,いくつかの特徴が見いだせる.淀川から北部域のOD-2,OD-1,OD-5,GS-K1は海進開始後粘性土割合が多くなる傾向が同じであり,いずれもMa3層堆積時期に最大となる.その後,礫が出現し,その割合を増加させる.これは,淀川水系および六甲で礫を継続的に供給させるような状況が発生したことになる.六甲側では六甲山地の隆起の活動が活発化し,淀川水系では上町断層や生駒断層などの活動が活発化した可能性が考えられる.海成粘土層が出現する前の時期には,淀川水系では比較的礫の供給が多い時期があったことがOD-5やOD-1,OD-2コアより推測できる.海成粘土の最初の出現の下位に200~300mの区間の礫が多い区間がある.しかし,六甲エリアのGS-K1では,ほとんど見られない.よって,この礫は淀川水系付近にみられる特徴である.OD-2は上町台地で掘削されたボーリングであり,OD-1との間には上町断層を挟むが,海成粘土出現前の礫が多い時期からMa3層までの区間は西大阪のOD-1,OD-5とほとんど堆積フェーズが同じである.よって,上町断層の活動が活発になったのは,Ma3層が堆積した後であると考えられる.淀川水系から離れたKIX18-1,YUでは,礫の分布が乏しく,大きな河川からの礫の供給がほとんどなかったと考えられる.また,KIX18-1では,海成粘土出現時に最も粘性土の割合が少なくなる傾向が北部と同じであるが,その後粘性土の割合はどんどん増加して,最大はMa10層となり,北部とは異なる.上町台地南部のYUでは他の地域とは異なってMa0層付近で粘性土が多くなる.以上の傾向は,関西空港付近では,比較的静穏で大きな地殻変動の影響を受けていない堆積変遷であるのに対して,北部や上町台地上では六甲断層や上町断層,生駒断層や有馬高槻構造線などの地殻変動によって山地が隆起することで礫の供給や堆積場が変化していると考えられる.