日本地質学会第130年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T16[トピック]都市地質学:自然と社会の融合領域【EDI】

[2oral501-11] T16[トピック]都市地質学:自然と社会の融合領域【EDI】

2023年9月18日(月) 09:00 〜 12:00 口頭第5会場 (共北27:吉田南総合館北棟)

座長:野々垣 進(産総研 地質調査総合センター)、中澤 努(産業技術総合研究所地質調査総合センター)

11:00 〜 11:15

[T16-O-8] (エントリー)サブボトムプロファイラーデータによって明らかになった大阪湾における小断層の分布と沖積層の音響層序区分

*岩波 知宏1、大塚 宏徳2、松野 哲男2、島 伸和1,2、浜橋 真理3、佐野 守2,4、井和丸 光2,4、鈴木 啓太2,4、杉岡 裕子2,1 (1. 神戸大学大学院理学研究科惑星学専攻、2. 神戸大学海洋底探査センター、3. 山口大学国際科学部、4. 日本海洋事業株式会社)

キーワード:大阪湾、大阪湾断層、活断層、サブボトムプロファイラー

大阪湾は、上町断層帯や六甲・淡路島断層帯、中央構造線断層帯など、いくつかの主要活断層帯によって囲まれた閉鎖性海域である。六甲・淡路島断層帯においては1995年に兵庫県南部地震(気象庁マグニチュード7.3)が発生しており、2013年にも気象庁マグニチュード6.3の地震が淡路島で発生している。また、大阪府北部においては、2018年に気象庁マグニチュード5.5の地震が発生している。これまでの反射法地震探査の結果から、大阪湾断層帯と呼ばれる北東-南西走向で約39 km延びている北西側隆起の逆断層帯が大阪湾西部で確認されており、このような大規模な断層だけでなく、他にも数多くの活断層が発達している(岩淵ほか, 1995)。大阪湾内全域の断層分布や活動履歴を把握することは、大阪湾にかかる応力とそれによるテクトニックな変遷を理解するために重要である。また、海底下に存在する断層は津波を引き起こす可能性もあるため(たとえば河田ほか, 2005)、大阪湾付近にある大都市の災害のリスク評価にも役立てることができる。
 本研究では、大阪湾において、最終氷期以降(約18,000年前以降)の断層活動の影響を受けていると考えられる沖積層の層厚分布を面的に作成すること、および、小断層を見つけ、その分布や活動履歴を把握することを目的とした。解析に用いたデータは、2022年8月、10月、および2023年3月に神戸大学の練習船「海神丸」に搭載されたKongsberg社のサブボトムプロファイラーTOPAS PS18によって大阪湾中・南部を対象として1~3 km間隔の格子状に広範囲に取得した。一般的な反射法地震探査で用いる音源は100 Hz程度の低周波であるのに対して、サブボトムプロファイラーは1-10 kHz程度の高周波であるため、反射法地震探査と比べて、高分解能のデータを得ることができる。本調査では、帯域幅2~6 kHz、信号長1 msのチャープ波を主に使用した。調査の結果、底下30 m程度の沖積層や洪積層上部に関して数十cm程度の細かい層を認定できるような高分解能のデータが得られた。
 データ解析では、まず音響基盤となる洪積層より上位の沖積層を地震学的に3~5の堆積ユニットに区分した。OpendTectやPetrelを用いて海底面や各堆積ユニットの境界面をピックし、QGISを用いて、境界面の深度の差を取ることから各堆積ユニットの層厚分布を面的に得ることができ、各堆積ユニットの深度変化をマッピングすることができた。区分した堆積ユニットの年代の制約には過去に行われたボーリング調査の結果(たとえば七山ほか, 2000)を用いた。断面上で断層を確認した位置もマッピングを行った。大阪湾断層帯以外の顕著な変形構造として、岩淵ほか(2000)で津名沖断層として記載されている活断層の近傍に撓曲構造を確認した。この撓曲構造は表層付近まで変位が確認できることから、最近まで活動していたことが考えられ、今後活動履歴を詳細に考察する必要がある。本発表では、これらの堆積ユニットの層厚分布を面的に示して、大阪湾における過去の海底面や堆積環境の復元や断層活動との関連を議論する予定である。

引用文献:
岩淵ほか(1995)大阪湾西部の活断層, 海洋調査技術, 7, 11-19
岩淵ほか(2000)反射法音波探査に基づく大阪湾の基盤と活構造, 水路部研究報告, 36, 1-23
河田ほか(2005)大阪湾臨海都市域の津波脆弱性と防災対策効果の評価, 海岸工学論文集, 52, 1276-1280
七山ほか(2000)大阪湾断層及び和田岬断層の完新世活動性調査, 平成11年度活断層・古地震研究調査概要報告書, 179-193