日本地質学会第130年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T10[トピック]文化地質学【EDI】

[2oral701-10] T10[トピック]文化地質学【EDI】

2023年9月18日(月) 08:45 〜 12:00 口頭第7会場 (共北38:吉田南総合館北棟)

座長:猪股 雅美(広島大学)、森野 善広(パシフィックコンサルタンツ株式会社)、鈴木寿志(大谷大学)

09:15 〜 09:30

[T10-O-3] 石灰岩の性質と利用を体験的に学ぶ学習プログラム

*岡本 研1 (1. 東海大学生物学部海洋生物科学科)

キーワード:石灰岩、学習プログラム、人間生活

【はじめに】北海道北部士別市の「石灰山」では,1960年より良質の石灰岩が生石灰及び消石灰の材料として採掘され,1970年代には北海道の生消石灰の生産量の60%を超えていた(田中,1971)。しかし,一時閉山し,2001年より土壌改良材や融雪剤の材料として再び採掘が行われている。
 この石灰岩は中生代のオリストストロームとされており(長谷川,1988),二枚貝や有孔虫等の化石により,三畳紀中期~後期の形成時代が推定されている(川村・橋本,2014)。また,ウーライトの発見により,形成環境としてラグーン環境が推定されている(岡本,2018)。
 士別市の石灰岩について,観察や実験を通して石灰岩の成因や人間生活での活用について学ぶ学習プログラムを考案し,教育資料を作成した(岡本,2023)。
【成因を考察する学習】露頭の観察(図)や岩石サンプルの観察から堆積性メランジュの形成について高校生,大学生,一般市民に考察させる学習プログラムを考案した。この学習を通して,古代のプレート境界で発生した付加体の大規模な崩落という事件を推定し,巨大地震に関連するという考察に結びつけた。
【石灰岩の性質を考察する学習】士別市の石灰岩が酸性土壌の改良材として利用されている理由について,次のような実験を行って考察させた。
(1) 石灰岩と酸の反応を調べる実験(土壌改良剤としての活用)
 石灰岩を食酢に浸して石灰岩の溶解やpHの変化を調べる実験を通して,土壌中の酸と石灰岩の反応で生じる水酸化物イオンが土壌の酸性を中和し,中和されると溶解しにくくなり,長期間継続的に土壌が中和されるという優れた性質を持つことを理解する。
(2) 石灰岩の加熱による変化を調べる実験(生石灰と消石灰としての活用)
 砕いた石灰岩をガストーチで強熱することで起きる化学反応と温度の上昇を調べる実験を行い,一連の実験で起きた化学反応式を考えさせる。この化学反応については,高校「化学基礎」や高校「化学」でも扱われており,建築材料,酸性土壌の改良材,乾燥剤,発熱剤など,人間生活での活用と結びつけられている。
 これらの観察・実験による学習プログラムの他にも,石灰岩に関する多数の学習プログラムを考案した。

田中寿雄(1971):北海道上川郡士別石灰石鉱山の鉱床の形態と開発について.応用地質第12巻,第3号.
長谷川美行(1988):奥士別南方の日高累層群の放散虫,コノドント年代.北海道中軸体に分布する日高累層群の再検討(昭和62年度科学研究費総合研究A研究成果報告書).
川村寿郎・橋本健一(2014):北海道の石灰岩にみる中生代海山頂炭酸塩の堆積相と古生物相の変遷.日本地質学会第121年学術大会講演要旨,p76.
岡本研(2018):士別周辺の岩石の教材化-石灰岩編-.士別市立博物館報告,35.
岡本研(2023):士別の岩石と地質を学ぼう-士別の石灰岩-.士別市立博物館発行物.