[T2-P-4] (エントリー)静岡県北西部渋川地域三波川帯泥質片岩の温度構造と石英ファブリック
キーワード:炭質物ラマン温度計、変成温度、三波川変成帯、泥質片岩、石英ファブリック
西南日本に分布する低温高圧型の変成帯である三波川帯は,泥質片岩に含まれる石墨の結晶化度から変成温度を算出する炭質物ラマン温度計を用いて,沈み込み時の温度構造や中央構造線による熱の影響などが議論されている.一方,三波川帯に分布する大小様々な超苦鉄質岩体周辺の温度構造を明らかにした例はほとんどない.そこで本研究では,静岡県北西部三波川帯の渋川超苦鉄質岩体(塩谷ほか, 2020)の周辺の泥質片岩の温度構造について泥質片岩の炭質物ラマン温度計を用いて考察した.さらに,泥質片岩の石英ファブリックとの関係についても考察した.泥質片岩の鉱物組み合わせは石英,白雲母,緑泥石,斜長石,グラファイト,ルチルであった.分析方法として,泥質片岩中のグラファイトについて炭質物ラマン温度計を用いた変成温度の推定と走査型電子顕微鏡を用いた石英の結晶方位解析と粒径測定を行った.炭質物ラマン温度計はKouketsu et al. (2014)に従い,解析プログラムはKaneki & Kouketsu (2022)を使用した.結果として,渋川超苦鉄質岩体周辺部の泥質片岩の変成温度は約320℃であったのに対し,岩体内側に分布する泥質片岩は約280℃~300℃の低い変成温度を示した.また,岩体内側の低変成泥質片岩の採取地点は,岩体周辺部の約320℃の変成温度を示す岩石の採取地点よりも約100m高い標高付近に分布する傾向があった.泥質片岩の石英粒径は,岩石試料毎に約10μmの細粒組織と約100μmのやや粗粒な組織をもつ違いが見られた.さらに,変成温度に関わらず超苦鉄質岩体との境界部で石英が細粒化する傾向が見られたが,この傾向は特に岩体南部で顕著であった.本研究では,これらの結果をふまえて,渋川超苦鉄質岩体周辺の三波川帯の大構造について考察した.
引用文献:
Kouketsu, Y. et al. (2014) Island Arc, 23, 3350.
塩谷 輝ほか (2020) 地質学雑誌, 127, 59-65.
Kaneki, S., Koukestu, Y(2022) Island Arc, 31, e12467.
引用文献:
Kouketsu, Y. et al. (2014) Island Arc, 23, 3350.
塩谷 輝ほか (2020) 地質学雑誌, 127, 59-65.
Kaneki, S., Koukestu, Y(2022) Island Arc, 31, e12467.