[T2-P-18] (entry) Fluid-rock reactions and rheological properties of ductile shear zones within oceanic core complexes
Keywords:Oceanic Core Complex, Ductile shear zone, Gabbro
海洋コアコンプレックス(Oceanic Core Complex; OCC)は中央海嶺や背弧海盆の低速拡大系に特徴的な地形であり、海底拡大に伴う正断層運動によって下盤側が数100万年かけて露出した数10 km四方の巨大な海底地形である。OCCの表面には、主に深部地殻/上部マントルを構成する斑れい岩やかんらん岩が露出する。OCCの斑れい岩は、トロクトライト・かんらん石斑れい岩・斑れい岩・オキサイドガブロと組成のばらつきが大きく、その割合も多様である。さらに斑れい岩には、高温側のグラニュライト相から角閃岩相の延性剪断帯における結晶塑性と、拡散クリープによる塑性変形と低温側の角閃岩相から緑色岩相の流体-岩石相互作用を伴う剪断帯における脆性変形を受けた,マイロナイト、ウルトラマイロナイトおよびカタクレーサイトといった断層岩が含まれる。これらの断層岩には、海水による流体-岩石反応によって形成した角閃石などの含水鉱物が含まれる。斑れい岩でおこる流体-岩石反応は、塑性変形時に歪の局所化を生じさせてOCC深部で延性剪断帯を発達させる可能性があり、断層地形であるOCCの構造発達過程を理解する上で重要である。しかしながら、OCCにおける流体-岩石反応の研究は、200以上確認されているOCCのうち、大西洋中央海嶺のアトランティス岩塊、南西インド洋海嶺のアトランティスバンクおよびフィリピン海パレスベラ海盆のゴジラメガムリオンに限られる。また、流体-岩石反応と斑れい岩の微細構造発達の関係について詳細な解析がなされているものの、剪断帯のレオロジー特性に関してはほとんど理解が進んでいない。そこで本研究では、フィリピン海の四国海盆に存在するOCCの1つであるマドメガムリオンに着目し、構造岩石学的な手法を用いて流体-岩石反応と延性剪断帯のレオロジー特性の関係性を考察した。
本研究では、2019年の研究航海で「しんかい6500」によって、マドメガムリオンから採取された岩石10個のうち、変形斑れい岩3試料(R10,R19a,R20)の斜長石と角閃石について、組織観察、結晶方位解析および主要元素組成分析を行った。そして、組織観察と結晶方位解析の結果をもとにして変形機構を推定した。また、組織観察と主要元素組成分析の結果から流体-岩石反応を推定した。さらに、主要元素組成分析から得られた化学組成を角閃石-斜長石地質温度計に適用することによって変形温度を推定した。斜長石と角閃石の微細構造はどちらも結晶内塑性変形の証拠を示し、動的再結晶作用によって細粒化していた。斜長石と角閃石の結晶方位ファブリックは、それぞれ(001)[100]パターンと(100)[001]パターンの強い集中を示した。斜長石の化学組成は、マトリクスがポーフィロクラストよりも低いAn値を示した。角閃石の化学組成は、Hornblende–Pargasiteの範囲にあり、初生的なものと二次的なものの両方が含まれていた。得られた平衡温度は3試料でほぼ同じ温度範囲(870–680℃)だった。また、斑れい岩に貫入した珪長質脈からは680–600℃の平衡温度を得た。
組織観察と結晶方位解析から、斜長石と角閃石の変形機構は転位クリープであったと推定される。斜長石と角閃石の主要組成元素分析の結果は、流体の存在下で、Calcic plagioclase + Clinopyroxene + H2O → Sodic plagioclase + Hornblendeの変成反応を斑れい岩が経験したことを示唆する。斜長石と角閃石の結晶すべり面が同じであることから、平衡温度を変形時の温度範囲と仮定すると、分析した斑れい岩は870–680℃(グラニュライト相)において流体の存在下で塑性変形したと考えられる。試料中の高歪領域における剪断歪速度を求めるために、転位クリープで変形した斜長石の動的再結晶粒径、平衡温度および斜長石の流動則から変形機構図を作成した。その結果、マドメガムリオンの延性剪断帯の剪断歪速度は10–10 s–1以下、厚さは約2 m以下であることが推定された。マドメガムリオンにおける剪断歪速度は、一般的な剪断帯における歪速度よりも速く、また剪断帯の厚さも薄いことが明らかとなった。本研究で得られた知見と同様に、ゴジラメガムリオンの延性剪断帯では斑れい岩が流体の存在下で塑性変形を経験したことが報告されており、その時の剪断歪速度と剪断帯の厚さの値は、本研究で得られた値とおおよそ一致している。すなわち、本研究の結果は、マドメガムリオンとゴジラメガムリオンの延性剪断帯における斑れい岩の変形条件が共通であることを示唆する。中央海嶺のOCCで報告されている斑れい岩についても、流体の存在下における変形を経験した場合、剪断歪速度が速くなり、剪断帯の厚さが薄くなる可能性がある。
本研究では、2019年の研究航海で「しんかい6500」によって、マドメガムリオンから採取された岩石10個のうち、変形斑れい岩3試料(R10,R19a,R20)の斜長石と角閃石について、組織観察、結晶方位解析および主要元素組成分析を行った。そして、組織観察と結晶方位解析の結果をもとにして変形機構を推定した。また、組織観察と主要元素組成分析の結果から流体-岩石反応を推定した。さらに、主要元素組成分析から得られた化学組成を角閃石-斜長石地質温度計に適用することによって変形温度を推定した。斜長石と角閃石の微細構造はどちらも結晶内塑性変形の証拠を示し、動的再結晶作用によって細粒化していた。斜長石と角閃石の結晶方位ファブリックは、それぞれ(001)[100]パターンと(100)[001]パターンの強い集中を示した。斜長石の化学組成は、マトリクスがポーフィロクラストよりも低いAn値を示した。角閃石の化学組成は、Hornblende–Pargasiteの範囲にあり、初生的なものと二次的なものの両方が含まれていた。得られた平衡温度は3試料でほぼ同じ温度範囲(870–680℃)だった。また、斑れい岩に貫入した珪長質脈からは680–600℃の平衡温度を得た。
組織観察と結晶方位解析から、斜長石と角閃石の変形機構は転位クリープであったと推定される。斜長石と角閃石の主要組成元素分析の結果は、流体の存在下で、Calcic plagioclase + Clinopyroxene + H2O → Sodic plagioclase + Hornblendeの変成反応を斑れい岩が経験したことを示唆する。斜長石と角閃石の結晶すべり面が同じであることから、平衡温度を変形時の温度範囲と仮定すると、分析した斑れい岩は870–680℃(グラニュライト相)において流体の存在下で塑性変形したと考えられる。試料中の高歪領域における剪断歪速度を求めるために、転位クリープで変形した斜長石の動的再結晶粒径、平衡温度および斜長石の流動則から変形機構図を作成した。その結果、マドメガムリオンの延性剪断帯の剪断歪速度は10–10 s–1以下、厚さは約2 m以下であることが推定された。マドメガムリオンにおける剪断歪速度は、一般的な剪断帯における歪速度よりも速く、また剪断帯の厚さも薄いことが明らかとなった。本研究で得られた知見と同様に、ゴジラメガムリオンの延性剪断帯では斑れい岩が流体の存在下で塑性変形を経験したことが報告されており、その時の剪断歪速度と剪断帯の厚さの値は、本研究で得られた値とおおよそ一致している。すなわち、本研究の結果は、マドメガムリオンとゴジラメガムリオンの延性剪断帯における斑れい岩の変形条件が共通であることを示唆する。中央海嶺のOCCで報告されている斑れい岩についても、流体の存在下における変形を経験した場合、剪断歪速度が速くなり、剪断帯の厚さが薄くなる可能性がある。