[T2-P-22] Structural geology and petrology of metamorphic rocks and plutonic rocks in Horoman area, Samani, Hokkaido, Japan.
Keywords:Structural geology, Metamorphic rock, Zircon U-Pb age, Hidaka Metamorphic Belt, Peridotite
日高帯南部に分布する日高変成帯は,日高帯の中の川層群などの砂泥質堆積岩・塩基性岩を原岩として火成活動で形成された島弧地殻の断片である(小松ほか,1982など)とされ,島弧地殻形成プロセスを理解するために研究が活発に行われてきた.ジルコンU-Pb年代の普及前,日高変成帯において,東から西に向かって変成度が累進的に上昇していくことから,56Ma頃の一度の変成・火成作用で形成された地殻の上部から下部までが東から西に向かって露出しているとされた(Owada et al. 1991など).しかし,ジルコンU-Pb年代の普及後,日高変成帯には37Ma頃と19Ma頃の2回の熱イベントを記録していることが示された(Kemp et al., 2007).さらに,日高変成帯は,37Ma頃にできた上部変成岩と19Ma頃にできた下部変成岩の2つの地殻が重なってできた(志村ほか,2015)ことや, 2回の変成作用が重複していること(志村ほか,2018)も明らかになっている.また,日高帯北部-中部では19Ma頃,37Ma頃,45Ma頃の3回の火成活動を示す年代が得られている(Jahn et al., 2014など).また,日高変成帯においても37Ma頃と19Ma頃,42Ma頃の3ステージの熱イベントがあったことも示されており(菅野・豊島,2019;Kanno et al., 2020),2回だけでなくより多くの地殻形成に関わる熱イベントがあったことが示されている.このようにジルコンU-Pb年代の普及によって日高変成帯の形成テクトニクスの再構築が必要となってきている.また,日高変成帯の島弧地殻形成・衝突プロセスに大きく関係する幌満かんらん岩体と日高変成帯との構造的関係についても議論がある.Sawaguchi(2004)によれば,幌満かんらん岩体と日高変成岩類は北傾斜の断層で接し,前者は後者に挟まれ,前者南縁の構造的下位に後者が分布する.しかし,Yamamoto et al. (2010)によると,幌満かんらん岩体は初生的にほぼ水平な断層によって日高変成岩類と接し,その構造的下位に分布するとされている.
そこで,本研究では,複数回の熱イベントを記録している可能性のある変成岩・火成岩が幌満かんらん岩体と接している本地域を対象とした.本地域では変成帯が西に張り出した特異な地質構造であり,形成・衝突プロセスを解析できると考えられる.踏査より地質図を作成,本地域の火成岩・変成岩のジルコンU-Pb年代測定を行った.その結果,以下のことが示された.
(1)日高変成帯上部層に相当するとされる黒雲母片麻岩・片岩に,37Ma頃の花崗岩が貫入している.その花崗岩の一部にアルカリ花崗岩が認められる.これは日高変成帯で初報告となる. (2)20Ma以降に形成されたトーナル岩が,37Ma頃に形成された花崗岩や黒雲母片麻岩・片岩に貫入している.このトーナル岩にはグラニュライトなど高度変成岩が捕獲されている.
(3)本研究によって明らかになった本地域の地史は,次の通りである.
(i)日高変成帯上部層相当の黒雲母片麻岩・片岩の形成(おそらく37Ma頃)
(ii)37Ma頃の花崗岩の貫入
(iii)グラニュライトなど高度変成岩の形成(おそらく20Ma頃)
(iv)20Ma以降のトーナル岩の貫入と高度変成岩の包有
(v)地質図オーダーのWNW-ESE走向褶曲の形成
(vi)おおむね北傾斜の基底断層により幌満かんらん岩体が日高変成岩類の上に衝上した.上盤南方への断層運動である.その分岐断層で,構造的下位の変成岩類にはシート状かんらん岩体が挟まれている.基底断層は北から南に向かって80°→30°へと傾斜が変化している.
(vii)幌満かんらん岩体の上盤南方への断層運動後,上盤北方への断層運動が重複して起こった.
引用文献
Jahn, B.M. et al (2014) Am J Sci, 314, 704-750.
菅野萌子・豊島剛志(2019),JPGU要旨.
Kanno M et al (2020) , Abstracts of JpGU-AGU.
Kemp, A.I.S. et al. (2007) Geology , 35 , 807-810.
小松正幸ほか (1982) 岩鉱, 3 , 229-238.
Owada M et al (1991), Jour. Geol. Soc. Japan, 97, 751-754.
Sawaguchi T (2004), Tectonophysics, 379, 109 – 126.
志村俊昭ほか(2018)地質学会要旨.
志村俊昭ほか (2015) 地質学会要旨.
Yamamoto H et al (2010) Island arc, 19, 458-469.
そこで,本研究では,複数回の熱イベントを記録している可能性のある変成岩・火成岩が幌満かんらん岩体と接している本地域を対象とした.本地域では変成帯が西に張り出した特異な地質構造であり,形成・衝突プロセスを解析できると考えられる.踏査より地質図を作成,本地域の火成岩・変成岩のジルコンU-Pb年代測定を行った.その結果,以下のことが示された.
(1)日高変成帯上部層に相当するとされる黒雲母片麻岩・片岩に,37Ma頃の花崗岩が貫入している.その花崗岩の一部にアルカリ花崗岩が認められる.これは日高変成帯で初報告となる. (2)20Ma以降に形成されたトーナル岩が,37Ma頃に形成された花崗岩や黒雲母片麻岩・片岩に貫入している.このトーナル岩にはグラニュライトなど高度変成岩が捕獲されている.
(3)本研究によって明らかになった本地域の地史は,次の通りである.
(i)日高変成帯上部層相当の黒雲母片麻岩・片岩の形成(おそらく37Ma頃)
(ii)37Ma頃の花崗岩の貫入
(iii)グラニュライトなど高度変成岩の形成(おそらく20Ma頃)
(iv)20Ma以降のトーナル岩の貫入と高度変成岩の包有
(v)地質図オーダーのWNW-ESE走向褶曲の形成
(vi)おおむね北傾斜の基底断層により幌満かんらん岩体が日高変成岩類の上に衝上した.上盤南方への断層運動である.その分岐断層で,構造的下位の変成岩類にはシート状かんらん岩体が挟まれている.基底断層は北から南に向かって80°→30°へと傾斜が変化している.
(vii)幌満かんらん岩体の上盤南方への断層運動後,上盤北方への断層運動が重複して起こった.
引用文献
Jahn, B.M. et al (2014) Am J Sci, 314, 704-750.
菅野萌子・豊島剛志(2019),JPGU要旨.
Kanno M et al (2020) , Abstracts of JpGU-AGU.
Kemp, A.I.S. et al. (2007) Geology , 35 , 807-810.
小松正幸ほか (1982) 岩鉱, 3 , 229-238.
Owada M et al (1991), Jour. Geol. Soc. Japan, 97, 751-754.
Sawaguchi T (2004), Tectonophysics, 379, 109 – 126.
志村俊昭ほか(2018)地質学会要旨.
志村俊昭ほか (2015) 地質学会要旨.
Yamamoto H et al (2010) Island arc, 19, 458-469.