日本地質学会第130年学術大会

講演情報

セッションポスター発表

T12[トピック]地球史【EDI】

[2poster53-67] T12[トピック]地球史【EDI】

2023年9月18日(月) 13:30 〜 15:00 T12_ポスター会場 (吉田南総合館北棟1-2階)

[T12-P-10] 過去1000万年間における中部北西太平洋の古海洋学的進化(ODPサイト1208

*松崎 賢史1 (1. 東京大学大気海洋研究所)

キーワード:中新世後期、表層水温、放散虫、アルケノン

中新世のスーパー温暖期以降、地球の気候が徐々に寒冷してきた。特に後期中新世には、地球全体の寒冷化が起こり、北半球の初期氷床の確立の原因の一つとなったとも考えられている。そのイベントはLate Miocene Global Cooling (LMGC)と名付けられている。 この研究では、国際深海科学掘削計画(ODP) のサイト1208から得られたコアの堆積物中の放散虫微化石の群集の変動を分析し、過去1000万年間の海洋環境の変化を復元した。気候の寒冷化をより理解するために、現生放散虫種に基づいて過去1000万年間の表層水温も復元した。この復元は堆積物の有機物の分析(アルケノン)に基づく表層水温とも比較し、現在放散虫種を用いて復元した中新世の表層水温が適切であることを示した。
しかし、LMGCの期間中は、現生放散虫種とアルケノンに基づく表層水温の間には大きなオフセットも記録した。可能性としては放散虫種が堆積物中に含まれるアルケノンに比べると、より東アジア冬季モンスーンの影響を強く受けるため、放散虫種はより冬の表層水温を反映していることを仮定した。また、他の放散虫の環境指標種の相対頻度から、LMGC中には北西太平洋の古海洋学的な再編成が起こったことも明らかにした。この期間には、太平洋子午面循環が弱化し、南北の温度勾配が増大するとともに、亜熱帯フロントが南進した可能性があることも仮定した。