[T12-P-12] (entry) Upper Pliocene-Lower Pleistocene calcareous nannofossil datums and sequential size variation of Reticulofenestra in the eastern equatorial Pacific Ocean
Keywords:calcareous nannofossils, datums, Upper Pliocene, Lower Pleistocene, the eastern equatorial Pacific Ocean, Reticulofenestra spp.
上部鮮新統―下部更新統における石灰質ナノ化石帯の標識種には,主に星形の形態が特徴的なDiscoaster属の産出上限が用いられる.一般的に,Discoaster属は低緯度海域で明瞭に確認されることが多く,相対産出頻度の少ない中―高緯度地域においては見いだされることが困難な場合もある.そのため,上部鮮新統–下部更新統の年代決定には,Discoaster属以外の分類群を用いた基準面を設定する必要性があると考えられる.上部鮮新統–下部更新統においてもっとも相対産出頻度が高い分類群はReticulofenestra属である.Kameo and Takayama (1999)は,数十万年で繰り返されるReticulofenestra属の個体サイズの規則的な変動を指摘し,大型個体が消滅するイベントと,古地磁気イベントとの関係を明らかにした.同様な周期的変化は,より古い時代においても認められており,様々な時間スケールにおいて数十万年から数百年の周期的な変動が確認されている(e.g., Young, 1990).そこで本研究では,低緯度でのReticulofenestra属の個体サイズの変化を詳細に検討し,後期鮮新世―前期更新世での周期的変動がグローバルに適用できるものか,基準面に適しているかを明らかにすることを目的のひとつとした.併せて,その個体サイズの周期的な変化の要因についても考察した.
本研究で取り扱った試料は,国際深海掘削計画(Ocean Drilling Program: ODP)第138次研究航海で得られた東部赤道太平洋の深海底コアのうち,Hole 846B, 846C, 846Dの堆積物である.偏光顕微鏡を用いて,試料中の石灰質ナノ化石を無作為に200個体抽出し同定を行い,各種の相対産出頻度を求めた.そのうちReticulofenestra属については接眼ミクロメーターを用いて1 µmごとにサイズを分けて記録した.また,Reticulofenestra属は最低100個体を検鏡できるまで追加で検鏡を行った.
検討の結果,少なくとも15属29種以上の石灰質ナノ化石の産出が認められた.本研究では石灰質ナノ基準面として、年代の古いものから順にReticulofenestra pseudoumbilicus,Reticulofenestra minutula var. A,Discoaster tamalis,Reticulofenestra minutula var. B,Discoaster variabills,Discoaster surculus,計6種の産出上限が認定できた。いずれも最大で0.1 Ma程度の地域差であることから,時間決定精度がよい基準面といえる.その中でもR. minutula var. Aやvar. Bの産出上限は,ほかのDiscoaster属に比べ地域差が少ない傾向にあった.これらの結果から,これらの基準面は汎世界的に同時であり,広域に適用な可能であると考えられる.
一方,Reticulofenestra属の個体サイズの変動を詳細に検討すると,以下の3つの顕著なバイオイベントが見られた.
①:3.370 Ma(~MIS M2):1–2 µm個体の減少,>3 µm個体の増加
②:2.800 Ma(~MIS G8):1–2 µm個体の微増,2–3 µm個体の増加,>3 µm個体の減少
③:2.511 Ma(~MIS 100):1–2 µm個体の急減,2–3 µm個体の微減,>3 µmの増加
このうち①や②の時期は他の古海洋プロキシでも大きな変化が見られており,世界規模の海洋表面温度などの変化に伴って生じたバイオイベントと示唆される.一方で,③では他の古海洋プロキシでは大きな変動は指摘されていない.これらの新たに検討されたReticulofenestra属の個体サイズの変動は,栄養塩や海洋表面温度などよりも他の環境要因に影響されている可能性があり,今後検討していく必要がある.
引用文献: Imai et al., 2015, Marine Micropaleontology, 116, 15–27. Imai et al., 2020, Island Arc, 29, 1, 1–13. Kameo and Takayama, 1999, Marine Micropaleontology, 37, 41–52. 佐藤・高山, 1999, 石油技術協会誌, 55, 2, 121–128. Young J., 1990, J. Micropaleontol, 9, 71–86.
本研究で取り扱った試料は,国際深海掘削計画(Ocean Drilling Program: ODP)第138次研究航海で得られた東部赤道太平洋の深海底コアのうち,Hole 846B, 846C, 846Dの堆積物である.偏光顕微鏡を用いて,試料中の石灰質ナノ化石を無作為に200個体抽出し同定を行い,各種の相対産出頻度を求めた.そのうちReticulofenestra属については接眼ミクロメーターを用いて1 µmごとにサイズを分けて記録した.また,Reticulofenestra属は最低100個体を検鏡できるまで追加で検鏡を行った.
検討の結果,少なくとも15属29種以上の石灰質ナノ化石の産出が認められた.本研究では石灰質ナノ基準面として、年代の古いものから順にReticulofenestra pseudoumbilicus,Reticulofenestra minutula var. A,Discoaster tamalis,Reticulofenestra minutula var. B,Discoaster variabills,Discoaster surculus,計6種の産出上限が認定できた。いずれも最大で0.1 Ma程度の地域差であることから,時間決定精度がよい基準面といえる.その中でもR. minutula var. Aやvar. Bの産出上限は,ほかのDiscoaster属に比べ地域差が少ない傾向にあった.これらの結果から,これらの基準面は汎世界的に同時であり,広域に適用な可能であると考えられる.
一方,Reticulofenestra属の個体サイズの変動を詳細に検討すると,以下の3つの顕著なバイオイベントが見られた.
①:3.370 Ma(~MIS M2):1–2 µm個体の減少,>3 µm個体の増加
②:2.800 Ma(~MIS G8):1–2 µm個体の微増,2–3 µm個体の増加,>3 µm個体の減少
③:2.511 Ma(~MIS 100):1–2 µm個体の急減,2–3 µm個体の微減,>3 µmの増加
このうち①や②の時期は他の古海洋プロキシでも大きな変化が見られており,世界規模の海洋表面温度などの変化に伴って生じたバイオイベントと示唆される.一方で,③では他の古海洋プロキシでは大きな変動は指摘されていない.これらの新たに検討されたReticulofenestra属の個体サイズの変動は,栄養塩や海洋表面温度などよりも他の環境要因に影響されている可能性があり,今後検討していく必要がある.
引用文献: Imai et al., 2015, Marine Micropaleontology, 116, 15–27. Imai et al., 2020, Island Arc, 29, 1, 1–13. Kameo and Takayama, 1999, Marine Micropaleontology, 37, 41–52. 佐藤・高山, 1999, 石油技術協会誌, 55, 2, 121–128. Young J., 1990, J. Micropaleontol, 9, 71–86.