130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T2[Topic Session]Metamorphic rocks and tectonics【EDI】

[3oral101-05] T2[Topic Session]Metamorphic rocks and tectonics

Tue. Sep 19, 2023 8:45 AM - 10:00 AM oral room 1 (4-11, Yoshida-South Campus Bldg. No 4)

Chiar:Ryosuke Oyagi(Kokushikan Univ.)

8:45 AM - 9:00 AM

[T2-O-18] Detrital zircon U-Pb ages of metamorphic rocks from Otsujima and Nojima, southern Yamaguchi Prefecture: Regional structure in southwest Japan

*ZEJIN LU1, Masaaki Owada1 (1. Yamaguchi University The Graduate School of Science and Technology for Innovation)

Keywords:Detrital zircon U-Pb ages, Suo belt, Ryoke belt

近年,周防帯の分布域から白亜紀貫入岩類に伴われた低圧型の変成岩類が各地から報告されてきた。例えば、大牟田地域では、Miyazaki et al. (2017) は角閃岩相高温部の条件を示すミグマタイトのジルコンU–Pb年代105 Maを報告した。変成岩類の原岩堆積年代は250Maであった。さらに柚原ほか. (2021) は、福岡県築上町に分布する田川変成岩の原岩堆積年代が約250Maで、領家帯に相当する低圧型の変成作用を被ったとした。 
 山口県南部の瀬戸内海にある大津島産変成岩類は,変成鉱物組合せから、Sil Zone、And-Crd ZoneとBt zoneに分帯された。Sil Zoneのピーク変成条件は600 ℃- 720 ℃、350 MPa-420 MPaである。一方、野島産変成岩類の最高変成温度と圧力条件は480-530 ˚C、180-300 MPaで、これらは低圧高温型変成作用を受けた領家帯に相当する。
 しかしながら、九州の例でも明らかなように、山口県中部の島嶼部は周防帯と領家帯の境界が不明瞭である。そのため、地帯構造を検討するためには、原岩年代に遡って検討することが急務であった。そこで、本研究は、大津島と野島に産する変成岩に注目し、砕屑性ジルコンの U–Pb 年代と変成条件から西南日本の地帯構造を検討した。本研究結果による地帯構造区分をもとに視野を広げることで、東アジア東縁部の沈み込み帯におけるトリアス期中期から白亜紀までの地殻形成過程の解明に貢献できると考えている。 
 大津島の砕屑性ジルコンはKDE図から1800Maと250Maの年代ピークが認められる。最も若いU–Pb 年代値は250.3 ±2.74 Maで、原岩の堆積年代はペルム紀最末期〜トリアス期初頭と考えられる。一方、野島の砕屑性ジルコンは大津島のKDE図とは異なり、200Ma、250Ma、371Ma、511Ma、887Maそして1853Maと6つのピークで特徴づけられる。最も若いU–Pb 年代年代は200Maで、原岩の堆積年代はトリアス紀最末期〜ジュラ紀初頭であると考えられる。従って、原岩の堆積年代から見ると、大津島と野島は異なる地質帯に帰属し、それぞれの原岩は周防帯と柳井地域に代表される領家帯に相当する。 
 大津島の砕屑性ジルコンとほかの周防帯変成岩が分布する地域に産する変成岩類の砕屑性ジルコン年代を比較すると、九州では田川地域、久留米地域 (260-250 Ma; Tsutsumi et al., 2003)、大牟田地域、そして山口県に産する津野層群(250Ma; Tsutsumi et al ., 2000)で、これらはほぼ同じ年代値を示す。大牟田や田川地域の変成岩類は、低圧高温型の鉱物組み合わせを持つことで特徴付けられる。すなわち、大津島を含むこれら変成岩類は、周防帯に相当する原岩の地質体が白亜紀に高温型変成作用を受けたと考えられる。さらに、野島・大津島産の変成岩類と柳井地域に産する領家変成岩類は同じ地温勾配を示すことから、これらの地域に分布する変成岩類は、白亜紀の火成活動に伴って形成した可能性が高い。  
 中国地方から九州にかけて分布する変成岩類は、大局的に見ると250 Maの原岩年代を示す変成岩類が200 Maの原岩年代を示す変成岩類より大陸側に位置する。このことは、これまで主に付加体から検討されてきた日本列島の地帯構造区分と調和的である。大津島と野島の変成岩類は共に低圧型の変成作用を被っている。しかしながら、原岩の形成年代は異なり、もともと異なる地質帯に帰属していたと考えられる。こうした関係は九州の肥後帯と類似している。肥後帯は、北側の間の谷変成岩が260 Maの原岩年代を示し 、南側肥後変成岩の原岩形成年代は190 –200 Maである (Suga et al., 2017)。以上から、中国地方から九州に分布する低圧型変成作用を被った変成岩類は、原岩形成年代は異なるが、白亜紀の火成活動に伴う広域的な接触変成作用によって形成されたと推察される。
引用文献:
柚原ほか(2021), 地質学雑誌, 127, 447-459; Tsutsumi et al. (2003) J. Mineral.Petrol. Sci., 98, 181–193; Miyazaki et al. (2017) Island Arc. 2017;26; Tsutsumi et al. (2000) J. Mineral.Petrol. Sci., 95, 216-227; Suga et al. (2017) J. Asian Earth Sci., 143, 218-235.