日本地質学会第130年学術大会

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セッション口頭発表

T2[トピック]変成岩とテクトニクス【EDI】

[3oral101-05] T2[トピック]変成岩とテクトニクス【EDI】

2023年9月19日(火) 08:45 〜 10:00 口頭第1会場 (4共11:吉田南4号館)

座長:大柳良介→ 田口知樹(早稲田大学)※変更になりました

09:45 〜 10:00

[T2-O-22] 海洋プレート最上部マントルの数100mスケールの構造安定性と地震波特性

*道林 克禎1,2、柿畑 優季1、夏目 樹1 (1. 名古屋大学大学院環境学研究科(岩鉱)、2. 海洋研究開発機構)

キーワード:海洋プレート、最上部マントル、オマーンオフィオライト、ファブリック、地震波異方性

オマーンオフィオライトは、火山岩、シート状岩脈群、斑レイ岩を含む海洋地殻部とカンラン岩からなるマントル部の構造を保持する世界最大のオフィオライトである。オマーンオフィオライト掘削プロジェクトでは、2017年11月から2018年3月までの冬季に地殻−マントル遷移帯を含む海洋地殻下部からマントル最上部までの岩石コアを掘削した。その後,マントル部を掘削したBAサイトの掘削コアの1次記載が,2018年8月5日から9月3日まで超深部探査船ちきゅう船上で実施された(ChikyuOman2018)。最初に掘削コア全体をX線コンピューター断層撮影(XCT)スキャナーや全周マルチセンサーコアロガー(MSCL-W)などの非破壊分析が行われた。その後,掘削コアは半裁されて,火成作用,変質作用,構造の順に観察と記載が行われた。BAサイトの掘削コアは、蛇紋岩であるが,残存した初生鉱物(主にカンラン石,直方輝石,スピネル)の組織から元はダナイトとハルツバージャイトであった。本研究では、BAサイトの3つの掘削孔(BA1B:400m、BA3A:300m、BA4A:300m)の掘削コアのうち溶け残りカンラン岩に相当するハルツバージャイトについて,XCT画像を参考にしてできるだけカンラン石が残存した部分を切り出して研磨薄片を作成し、電子後方散乱回折(EBSD)分析を行った。微細構造はやや粗粒粒状組織からポーフィロクラスト状組織であり、伸長した直方輝石で定義される面構造の傾斜角は比較的水平的であった。EBSD分析を基にして,蛇紋岩からカンラン岩の組織を再構築した。結果として、カンラン石の粒径はハルツバージャイトで1.2mmから2.4mm、ダナイトで2.1mmから2.3mm程度とやや粗粒であった。カンラン石の結晶方位ファブリックについて、集中度の指標であるJ-indexは2〜4であり、P波速度異方性(AVp)は5.9〜11.8%であった。カンラン石のファブリックタイプはBA1AではAタイプ、BA3AではDタイプ、BA4AではA〜Dタイプであった。本発表では,これらの結果を基にして数100mにおよぶ掘削コア全体の構造と地震波異方性について議論する。