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[T5-O-7] 伊那地域に分布する領家花崗岩類のジルコンU–Pb年代
キーワード:ジルコンU-Pb年代、領家花崗岩類、伊那地域
日本列島には花崗岩類が広く分布しており,国土の約30%を占めるとされている(中島,2018).この花崗岩類のうち,白亜紀から古第三紀の初期にあたる130~50 Maの花崗岩類(白亜紀花崗岩類)が最も多くを占めており,その露出面積は日本列島の全花崗岩類の80%以上を占める(中島,2018).よって,日本列島の形成史の解明において,白亜紀花崗岩類は重要な存在と考えられる.西南日本に分布する領家花崗岩類は,白亜紀花崗岩類を代表する花崗岩類の一つである.この領家花崗岩類については,K-Ar年代やRb-Sr年代などを中心に多くの年代測定が行われ,西から東に向かって若くなる傾向を有することが指摘されている(例えば,Nakajima et al., 1990; Yuhara et al., 2000).木下・伊藤(1986)やNakajima et al. (1990)は,この年代の東西変化を海嶺の沈み込み位置の移動に起因するとしている.一方で,Tani et al. (2015)は,閉鎖温度が高く,自己検証能力の高いジルコンU–Pb年代測定結果から,年代に東西変化は認められなく,85,60,35 Maにパルス的花崗岩類の形成があったとしている.しかし,ジルコンU–Pb年代測定が行われていない地域も多く存在しており,伊那地域に分布する白亜紀花崗岩類(伊那領家花崗岩類)もその一つである.よって本研究では,伊那領家花崗岩類のジルコンU–Pb年代測定を行った.
伊那花崗岩類は,木曽山脈およびその周辺に広く分布しており,大小約20個の岩体に区分されている(領家団体研究グループ,1955).これらの岩体のほぼすべてを対象としてジルコンU–Pb年代測定を行った結果,伊那花崗岩類のジルコンU–Pb年代は約100~60 Maを示した.つまり,伊那地域では40 Myという長い期間,火成活動が生じていたと考えられることに加え,中国地方の柳井地域や四国地方の香川地域などよりも最終の活動時期が若いことも示している.また本研究では,火成活動の度合いをより正確に捉えるため,岩体ごとの露出面積を産出し,今回得られた年代との整理を行った.その結果,伊那地域の主要な火成活動は約72~65 Maに限定され,約100~60 Maの40 Myの間に絶え間なく火成活動が生じていたのではなく,数Myという短期間の火成活動により形成されたことが明らかとなった.この岩体ごとの露出面積について,国地方の柳井地域や四国地方の香川地域など他の地域にも適用させたところ,主要な活動時期も西から東に若くなっている結果となった.よって,領家花崗岩類の主要な形成は,西から東に向かって若くなる傾向があるのは間違いなさそうである.この結果は一見,海嶺沈み込み説を支持するようにも考えられる.しかし,近年の地球物理学的な解析から,海嶺が沈み込んだ時期は約50 Maという結果もあり(Seton et al., 2015),領家花崗岩類の形成についてはマグマ形成の不均質性や構造侵食なども考慮して考える必要がある.
引用文献:木下・伊藤, 地質雑, 92, 723-725; 中島, 2018, 地質雑, 124, 603-625; Nakajima et al., 1990, Cont. Min. Pet., 104, 381-389; 領家団体研究グループ, 1955, 地球科学, 26, 1-3; Seton et al., 2015, Geophys. Res. Lett., 42, 1732–1740; Tani et al., 2014, 8th Hutton Sympo. Abst., 109; Yuhara et al., 2000, Island Arc, 9, 64-80.
伊那花崗岩類は,木曽山脈およびその周辺に広く分布しており,大小約20個の岩体に区分されている(領家団体研究グループ,1955).これらの岩体のほぼすべてを対象としてジルコンU–Pb年代測定を行った結果,伊那花崗岩類のジルコンU–Pb年代は約100~60 Maを示した.つまり,伊那地域では40 Myという長い期間,火成活動が生じていたと考えられることに加え,中国地方の柳井地域や四国地方の香川地域などよりも最終の活動時期が若いことも示している.また本研究では,火成活動の度合いをより正確に捉えるため,岩体ごとの露出面積を産出し,今回得られた年代との整理を行った.その結果,伊那地域の主要な火成活動は約72~65 Maに限定され,約100~60 Maの40 Myの間に絶え間なく火成活動が生じていたのではなく,数Myという短期間の火成活動により形成されたことが明らかとなった.この岩体ごとの露出面積について,国地方の柳井地域や四国地方の香川地域など他の地域にも適用させたところ,主要な活動時期も西から東に若くなっている結果となった.よって,領家花崗岩類の主要な形成は,西から東に向かって若くなる傾向があるのは間違いなさそうである.この結果は一見,海嶺沈み込み説を支持するようにも考えられる.しかし,近年の地球物理学的な解析から,海嶺が沈み込んだ時期は約50 Maという結果もあり(Seton et al., 2015),領家花崗岩類の形成についてはマグマ形成の不均質性や構造侵食なども考慮して考える必要がある.
引用文献:木下・伊藤, 地質雑, 92, 723-725; 中島, 2018, 地質雑, 124, 603-625; Nakajima et al., 1990, Cont. Min. Pet., 104, 381-389; 領家団体研究グループ, 1955, 地球科学, 26, 1-3; Seton et al., 2015, Geophys. Res. Lett., 42, 1732–1740; Tani et al., 2014, 8th Hutton Sympo. Abst., 109; Yuhara et al., 2000, Island Arc, 9, 64-80.