130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T9[Topic Session]From magma source to magma plumbing system【EDI】

[3oral501-08] T9[Topic Session]From magma source to magma plumbing system

Tue. Sep 19, 2023 9:00 AM - 11:00 AM oral room 5 (27-North Wing, Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

Chiar:Satoshi SAITO, Keisuke ESHIMA

9:30 AM - 9:45 AM

[T9-O-3] Magma plumbing system of youngest magmatic eruption products of Azuma Volcano, NE Japan

*Masao Ban1, Shun Kanno1, Motohiro Sato1, Takumi Imura1, Kae Tsunematsu1, Takeshi Hasegawa2 (1. Yamagata Univ., 2. Ibaraki Univ.)

Keywords:magma plumbing system, mobilization, mixing, deep magma reservoir, Azuma volcano

吾妻山は東北日本火山フロント中央部に位置する活火山である。本研究では吾妻山の最新マグマ噴火によるブルカノ式降下火砕岩について岩石学的研究を行い、噴出物をもたらしたマグマ供給系について考察した。火砕岩中の火山弾は暗灰色と明灰色タイプに分けられる。両者が縞状構造を形成している場合もある。両者共かんらん石直方輝石単斜輝石安山岩で、前者の全岩SiO2量は58-59.5 wt%、後者のそれは60-63 wt%である。SiO2組成変化図では直線的なトレンドを示す。輝石斑晶は、コア組成が低Mgのものと高Mgのものがある。前者は外縁部に~80 μmの高Mg帯を持つものと持たないものがある。後者は高Mg単斜輝石のコア中にパッチ状の高Mg直方輝石と低Mg単斜輝石を含ものである。かんらん石斑晶は正累帯と逆累帯のものがある。前者はコアがFo84程度で外縁部がFo~80、後者はコアがFo82 程度で外縁部がFo84程度である。Fo84程度のFo量の高い部分にのみクロムスピネルが包有されている。斜長石斑晶は、波動累帯構造にパッチ状構造が重複したコアを持つもの、蜂の巣状構造を示すコアを持つもの、均質なコアを持つものがある。1番目のものの低An、高An部、2番目のもののコア、3番目のもののコアの組成は、各々An55-65、An70-90、An70-90、An~90である。また、主に正累帯を示すかんらん石と均質なコアを持つ斜長石からなる集斑晶が認められ、接触部での両者の組成はFo80及びAn~90である。
 全岩組成の組成変化図上での直線的変化及び斑晶組織・組成の多様性は主に珪長質と苦鉄質の2端成分マグマの混合によって説明できる。斑晶については、輝石の低Mgコア、斜長石の低An部は珪長質マグマから、スピネルを包有しているFo84程度のかんらん石は苦鉄質マグマ由来と考えられる。高Mg輝石、An70-90程度の斜長石、Fo82程度のかんらん石は、上記2端成分マグマの混合によって形成された組成幅を持つ中間マグマ由来と考えられる。地質温度圧力計とMELTSを用いて検討したところ、珪長質と苦鉄質端成分マグマの全岩SiO2量・温度・圧力・含水量は次の範囲内にあったと推定された。すなわち、各々64-65 wt%・880~900 ℃・1~2.5 kbar・2.5~3.5 wt%及び約49 wt%・1140~1150 ℃・3.5~5 kbar・3.5~4.5 wt%である。吾妻山では、地球物理観測が進められており、火山下の地殻浅部(約4~12 km)と深部(約20 km以深)に部分溶融体の存在が推定されている。これらを基にすると、上記の珪長質及び苦鉄質マグマは各々地殻浅部と深部の部分溶融体由来であると考えられる。
 地殻浅部部分溶融体は苦鉄質マグマの注入が基となって活性化したと考えられるが、斑晶内の中間マグマ由来の部分の組成が幅広いことを考えると以下のような浅部部分溶融体の活性化~噴火プロセスが一案として考えられる。すなわち、活性化開始時には苦鉄質マグマの上昇に伴って部分溶融体内での流動部の形成が起こり、さらにその流動部と苦鉄質マグマの混合による中間マグマの形成、流動部と中間マグマの部分溶融体上部への成長と続き、さらなる苦鉄質マグマの注入がきっかけとなり噴火に至った。なお、最新期マグマ噴火の噴出量は浅部部分溶融体の100万分の1以下と推定され、地表に噴出したものの10倍のマグマが形成されていたとしても、浅部部分溶融体の極一部の部分を占めていたと考えられる。また、暗灰色と明灰色の2種が噴出しており、両者が縞状構造を形成しているものも認められることは、上記の浅部部分溶融体の極一部の部分で、混合度合いの異なる2種の混合マグマが形成されていたと推定できる。このような混合度合いの異なるものが活性化部分の頂部付近に同時に形成されていたと思われる。なお、低Mg輝石外縁部の高Mg帯の組成累帯を基に見積もった混合から噴火までのタイムスケールは数か月~半年程度ととても短い。よって、その頂部付近に活性化が及んでから噴火までは短時間であったと思われる。
 一方、苦鉄質マグマについては、深部部分溶融体から分離したマグマがやや上昇した位置でかんらん石とスピネルを結晶化させていたものと考えられる。すなわち、深部部分溶融体中のメルトは苦鉄質マグマよりも未分化なものであったと推定される。また、逆累帯を持つかんらん石の存在から、部分溶融体よりやや浅部にはマグマ溜りが形成され、そこに深部部分溶融体からの分離上昇が繰り返されて、より未分化なマグマとやや分化したものとの混合が行われていたと推定できる。