一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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認定医審査ポスター1

2023年6月16日(金) 12:00 〜 13:30 ポスター会場 (1階 G3)

[認定P-4] 増悪する開口障害から破傷風を疑い緊急対応を行った症例

○中村 純也1、足立 了平2 (1. 国立長寿医療研究センター 歯科口腔外科部、2. 医療法人社団関田会ときわ病院 歯科口腔外科)

【緒言・目的】
 破傷風はワクチン導入により罹患率・死亡率ともに減少傾向にあり,非常に稀な疾患とされるが,開口障害,嚥下障害など歯科口腔領域の症状を初発症状とすることも多い。さらには早期の診断と治療が行われなければ呼吸不全や循環動態の悪化から死に至る重症感染症である。今回,嚥下困難感,開口障害を主訴に当科紹介受診され,日々増悪する開口障害から破傷風を疑い,緊急対応を行った症例を報告する。
【症例および経過】
 76歳,男性。腰痛症の既往あり。2022.10月当科初診。3日前から嚥下困難・開口困難感自覚し耳鼻咽喉科受診,嚥下内視鏡検査施行され嚥下機能には問題がないとのことから同日当科紹介となる。初診時初見:開口量25mm,強制開口量35mm,開口時正中偏位-,RSST 3回,開口時顎関節部疼痛-,両側咬筋圧痛+から顎関節症の診断。当科初診から2日後,食事がとれない,全身が痛くて歩けない,を主訴に当院救急外来受診。WBC5200,CRP0.03,筋緊張性疼痛として鎮痛剤処方。同3日後,前日と同主訴で当院救急外来再受診。WBC6800,CRP0.05,胸腹部造影CT:器質的な異常なし,バイタルサインにも問題なく,心因性の疼痛と判断され,開口障害についてのコンサルあり当科再紹介となる。開口量5mm,強制開口不可,頸部~背筋の後弓反張認め,破傷風を疑い高次医療機関に救急搬送した。(搬送直後気管内挿管,転院2日後気管切開,同12日後抜管,同25日後退院)
 なお,本報告の発表について患者家族から文書による同意を得ている。
【考察】
 今回の症例は外傷歴がなく,また疼痛の表現により不定愁訴と捉えられ診断に苦慮したが,増悪する開口障害,頸部~背筋の後弓反張から破傷風を強く疑い対応することができた。 今回の症例から,歯科医師は,破傷風ワクチンは日本では1968年からの定期接種であり高齢者では接種されていない方が多いこと,破傷風の開口障害は顎関節症によるものとは異なり日単位で増悪すること,開口障害と同時期には構音障害,嚥下障害,痙笑,歩行障害,後弓反張などといった症状が存在する可能性があること,必ずしも全例外傷歴があるわけではないこと,さらには早期診断と治療が非常に重要な疾患であること,これらを念頭に日々臨床に取り組むべきであると思われた。 (COI開示:なし)(倫理審査対象外)