一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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認定医審査ポスター2

2023年6月16日(金) 12:00 〜 13:30 ポスター会場 (1階 G3)

[認定P-12] 粘膜類天疱瘡を有する高齢患者の咀嚼障害に対して抜歯と補綴治療を行った症例

○渡辺 昌崇1、水口 俊介2 (1. 昭和大学 口腔健康管理学講座口腔機能管理学部門、2. 東京医科歯科大学 高齢者歯科学分野)

【緒言・目的】
 粘膜類天疱瘡は自己免疫性水疱症で高齢者に多く,口腔粘膜が脆弱であることから有床義歯による補綴治療が困難な場合が多い。本症例では,類天疱瘡と全身状態に配慮しながら,予後不良歯の抜歯を行い,また脆弱な口腔粘膜に配慮して有床義歯による補綴治療を行った。その結果,咀嚼能力の改善につながった症例を経験したので報告する。
【症例および経過】
 69歳の女性。2021年8月に「口腔粘膜のただれと入れ歯が合わず食べにくい」を主訴に口腔外科から紹介受診した。既往歴は,足爪白癬であった。口腔外科より皮膚科を紹介受診し,生検により類天疱瘡と診断され,ステロイドパルス療法を受けたが完治せず,プレドニゾロン11mg/日で経過観察中である。口腔内診察より#16,#35,#37に6mm以上の歯周ポケットを認め,パノラマX線写真でも重度骨吸収を認め,重度歯周炎と診断した。ステロイドとアレンドロン酸を服用中のため,医科主治医に対診した上で予後不良歯の抜歯を行い,有床義歯補綴を行うこととした。易感染性と顎骨壊死を考慮し,ガイドラインを参考に術後の手術部位感染が高リスクと判断し,アモキシシリン250mg 1cを前投薬し,また,抜歯は水疱形成部位へ配慮して行った。有床義歯補綴については,咬合圧の分散を考慮して可及的に義歯床の延長を行った。義歯調整を数回行い,問題なく使用することが可能となったため,経過観察に移行した。治療前後の口腔関連QOLの評価はOHIP-J54を用い,咀嚼機能の評価では,食品摂取アンケートとグルコース溶出法を用いた。口腔関連QOLの大きな改善は認められなかったが,咀嚼能力の改善が認められた。
 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 ステロイド長期服用のためにビスフォスフォネート製剤を服用する高齢者は多い。また,粘膜疾患を有する高齢義歯装着患者では,義歯床が病変部を避ける設計も多く,義歯の維持安定不良の原因になりやすい。本症例では易感染性や顎骨壊死のリスクを考慮して抜歯を行い,咬合圧による粘膜への影響と義歯の維持安定の両者を考慮しながら可及的に義歯床の延長を行なった。その結果,義歯の安定性向上や支持域増加による粘膜の負担軽減,食物等の刺激からの粘膜保護につながり,主訴である咀嚼困難を改善することができたと考えた。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)