一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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認定医審査ポスター4

2023年6月16日(金) 12:00 〜 13:30 ポスター会場 (1階 G3)

[認定P-19] 咀嚼・嚥下障害を伴う舌癌高齢患者に対し舌接触補助床を製作し摂食機能が改善した1症例

○永島 圭悟1、菊谷 武1 (1. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)

【緒言】舌癌により再建術を受けた患者では,舌の器質的障害に伴い可動範囲の縮小や舌筋力の低下により摂食嚥下機能が低下することがある。今回,舌癌術後の摂食嚥下障害を有する高齢患者に対し,言語聴覚士(以下,ST)と協働し,舌接触補助床(以下,PAP)を製作,摂食機能訓練および言語訓練を行い,良好に経過した症例について報告する。 【症例】82歳,女性。義歯製作を主訴に当院受診。既往歴は,左舌癌T4N1(stage IV A)で,化学療法および頚部郭清術,舌亜全摘術,遊離腹直筋皮弁再建術を受けた。口腔内は,アイヒナー分類C-1で上顎のみ義歯を使用。皮弁は患側舌根部から舌尖におよび下顎左側歯槽部まで含み,舌圧は1.1kPaであった。BMI 15.9,Barthel Index 100点,独居で,食事は自炊し,全粥,刻み食,とろみなし水分を60分かけて摂取していた。嚥下造影検査より,刻み食の食塊形成および移送不良により,少量誤嚥を認めたが,喀出できなかった。摂食嚥下機能評価は藤島Gr7,DSS 3(水分誤嚥)と診断し,PAPおよび下顎義歯の製作と,舌の可動域訓練や咳嗽訓練などの間接訓練を行う計画とした。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。【経過】PAP製作時はST同席のもと,口蓋の形態を調整した。食形態は,刻み食にとろみをかけ,水分にも薄いとろみを付与するよう指示した。また,栄養不足を補うため補助食品の摂取を勧めた。さらに,STに言語訓練を行うよう依頼した。PAPおよび下顎義歯完成後の嚥下造影検査結果では,誤嚥なく,嚥下後の咽頭残留量が,減少した。半年後には食事時間が約20分に短縮し,BMIが 17.3に増加した。PAP装着時の舌圧は12.9kPaであった。嚥下に対し,自覚症状と機能の乖離があり,自宅で軟菜一口大ととろみなし水分を摂取していたため,一口量の調整や健側で代償するよう指導した。言語訓練の結果,発話明瞭度が改善したため,受診意欲は高く,月に1回,STによる言語訓練,および管理栄養士同席のもと摂食機能訓練を継続した。【考察】本症例は高齢の舌癌患者であり,舌の可動域や巧緻性,舌筋力の低下が認められた。食塊移送と嚥下反射のタイミングのずれや咽頭収縮力の低下から誤嚥を生じたと推測された。PAPの製作や間接訓練の実施により誤嚥が減少し食事時間の短縮と体重増加につながった。さらにSTと協働し言語訓練を行うことで発話明瞭度が改善し,QOLの向上につながったと考える。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)