一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査ポスター

2023年6月16日(金) 14:30 〜 16:30 ポスター会場 (1階 G3)

[摂食審査P-5] パーキンソン病と小脳出血による摂食嚥下障害に対し摂食訓練と舌接触補助床適用により症状が改善した症例

○内山 宙1,2 (1. 東京歯科大学千葉歯科医療センター、2. 東京歯科大学老年歯科補綴学講座)

【緒言・目的】
 パーキンソン病(以下PD)と小脳出血の併存による摂食嚥下障害と高度な体重減少を呈した患者に対し,摂食機能訓練と舌接触補助床(以下PAP)の適用により,症状改善がみられた1 例を経験したので報告する。
【症例および経過】
 73歳,女性。PDに罹患している(Hoehn & Yahr分類Ⅴ度)。令和3年12月に小脳出血にて入院中に経口摂取困難と診断され胃瘻造設となった。令和4年6月に自宅退院したが,入院前のBMI16.0kg/m2と比較し,退院後13.5kg/m2(体重6.0kg減少)であった。同年6月に経口摂取の再開と体重増加を希望し歯科訪問診療の依頼があった。初回評価時,座位保持はやや不安定で,嗄声を認めた。上下顎残存歯はすれ違い咬合で,義歯は不適合,舌に軽度固縮を認めた。RSST1回,咳テスト陽性,FT3点(口腔内残留あり),舌圧13.0kPa,VEは兵頭スコア6点で,咽頭残留はあるが,誤嚥は認めなかった。以上より準備期,口腔期および咽頭期の障害と判断した。栄養提供量は胃瘻より1200kcal/日であったがSGAでは高度栄養不良であった。ゴール設定は経口摂取量の増大により入院前のBMIに回復することとした。 対応法は間接訓練として舌抵抗訓練,開口訓練および前舌保持嚥下訓練を本人と家族に指導の上,直接訓練として誤嚥を予防しつつ嚥下調整食3の摂取訓練,さらに低舌圧に対しPAPを適用した。PAP装着後は舌圧31.6kPaとなり,訓練を継続したところ,胃瘻による栄養に加え嚥下調整食4の経口摂取が可能となった(摂取エネルギー量:約1400kcal/日)。令和5年1月時点でBMI15.3kg/m2まで回復,SGAは中等度栄養不良まで回復した。多職種とは経口摂取状況のほか体幹保持能力,呼吸および排痰機能の情報共有を継続している。 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 PDの錐体外路症状と小脳失調が舌運動障害の一因と考えられた。PAPの適用により即時的な準備期/口腔期障害の改善が得られた。咽頭残留も同じく咽頭収縮筋の運動障害によると考えられたが,誤嚥性肺炎なく設定したゴールにほぼ到達でき,介入の成果と考える。PD症状の進行により,今後は経口摂取がより厳しくなると予想されるため,サポートの継続が重要と考える。 (COI開示:なし) (倫理審査対象外)