一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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ポスター発表3
症例・施設

2023年6月17日(土) 10:00 〜 10:30 ポスター会場 (1階 G3)

座長:伊藤 加代子(新潟大学医歯学総合病院口腔リハビリテーション科)

[P17] 新型コロナウイルス感染症による隔離後の一症例

○稲富 みぎわ1、秋山 悠一1、氷室 秀高2 (1. 医療法人社団秀和会 水巻歯科診療所、2. 医療法人社団秀和会 小倉南歯科医院)

【緒言・目的】
今回,私たちは,新型コロナウイルス感染症による隔離後に,口腔機能低下と老人性うつの増悪により,食欲の低下を生じた一例に居宅療養指導を経験したので報告する。
【症例および経過】
96歳男性。家族と同居。糖尿病, 房室ブロックによるペースメーカー植え込み, 脳梗塞,左片麻痺,老人性うつ病による活動の不活発化と食欲不振の既往あり。新型コロナウイルス感染症による呼吸不全で入院し,隔離され酸素療法を受ける。 入院前のADLはほぼ自立だったが,隔離中に喫食量が減少し,体重が5㎏減少となり,起立不能,左踵に褥瘡を生じていた。退院時,ADLはほぼ全介助(食事のみ一部介助)の状態となる。 当院初診時,ほぼ寝たきりで傾眠傾向にあった。 摂食嚥下の状態は,喉頭挙上の不全があり,咽頭に液体貯留音を聞き,ときに自分の唾液でむせていた。これらから咽頭クリアランスの低下を疑った。 口腔機能では,欠損と歯周病の状態から咀嚼機能不全の状態と考えられた。 患者と家族は,検査・訓練・歯周病治療以外の歯科治療を希望しなかった。 短期目標を口腔衛生状態の改善と歯周病の炎症のコントロールとし,誤嚥性肺炎の防止を行なうことを長期目標として介入を開始した。 約2週間で口腔衛生状態は著しく改善し,オーラルリテラシーにも改善が見られた。歯周病による炎症も軽減し,肺炎は現在まで再発を見ていない。 さらに食べてくれないことについて相談を受けた。食事は介助が必要なためベッドで家族と別にしていた。 寝食分離の原則に従いベッドから食卓まで歩き,家族と食卓を囲み食事時間を共にすることを指導した。1週間後には定着した。4割程度だった摂取量が毎食7~8割程度へ増加し,また食に対する意欲も生じた。 初診から3か月後には,体重が増加し,褥瘡も改善傾向となった。 なお,本報告の発表について患者本人から同意を得,快諾者より文書による同意を得ている。
【考察】
食欲不振には,多くの因子が関与する.そのなかでうつは大きな原因となる。 老人性うつ病は,介助者との何気ない会話から回復を見せることもあるという。 私たち歯科衛生士は,包括的に患者と接すことに慣れているとはいいがたい。 今後も様々なことを学び,研鑽に励みたい。 (COI開示:なし) (医療法人社団秀和会 倫理委員会承認番号 2302)