一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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ポスター発表8
オーラルフレイル・口腔機能低下症/加齢変化・基礎研究/全身管理・全身疾患

2023年6月17日(土) 15:45 〜 16:10 ポスター会場 (1階 G3)

座長:大久保 真衣(東京歯科大学  口腔健康科学講座 摂食嚥下リハビリテーション研究室)

[P44] 寒天粒子を使用した新規義歯清掃法の開発

○三宅 晃子1、小正 聡2、内藤 達志2、前川 賢治2 (1. 大阪歯科大学 医療保健学部口腔工学科、2. 大阪歯科大学 歯学部欠損歯列補綴咬合学講座)

【目的】  
 一般的な義歯清掃法として,義歯洗浄剤による化学的清掃法と義歯ブラシを使用する機械的清掃法の併用が推奨されている。しかしながら,機械的清掃法は義歯床表面の汚染物は除去できるものの,義歯ブラシによる義歯床表面の擦傷による線条痕部に,新たに汚染物が付着しやすい状況を生み出してしまう。そこで我々は材料表面を傷つけることなく,汚染物を除去できる材料として寒天粒子に着目し,寒天粒子を使用した新規清掃法が義歯床表面の表面粗さと模擬汚染物の除去にどのような影響を与えるのかを検討した。
【方法】
 12.0mm×10.0mm×6.0mmのPMMA板を作製し,耐水研磨紙で算術平均粗さが0.15≦Ra≦0.18μmになるように研磨した。模擬汚染物として人工プラーク(ニッシン)を使用し,PMMA板に塗布した。噴射加工装置(不二製作所製)を用い,噴射には寒天粒子(S-6とWH-706,伊那食品工業株式会社供試)とグリシン(有機合成薬品工業株式会社),炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社)粒子を用いた。噴射前後で触針式表面粗さ計を用いてPMMA板の表面粗さと断面曲線を比較し,卓上型走査電子顕微鏡(SEM)と本SEMに搭載されたエネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いて表面画像と元素解析を評価した。統計学的分析には,一元配置分散分析を行った後,有意差を認めた場合Tukeyの多重比較を行った。有意水準は0.05とした。
【結果と考察】
 4種の粒子はすべて,噴射によりPMMA板に付着した人工プラークを除去していた。光学顕微鏡観察の結果,2種の寒天粒子噴射前後でPMMA板表面は変化しなかったが,グリシンと炭酸カルシウム噴射では変化した。噴射前後の表面粗さの差は,寒天粒子2種と比較して,グリシンと炭酸カルシウムを用いた場合では有意に大きかった。断面曲線の結果も,表面粗さと同様であった。EDSの結果から,噴射前のPMMA板表面は人工プラークの構成元素であるケイ素で覆われているが,噴射後にはケイ素が減少し,PMMAの構成元素である炭素と酸素が増加したことから,人工プラークが除去されていると考えられた。
 以上より,寒天粒子を使用した清掃法は義歯床面の表面粗さを変化させることなく,義歯床面上の模擬汚染物を除去することが可能であることが明らかとなった。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)