一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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シンポジウム12
アドバンスケアプランニング(ACP)に関わる歯科衛生士になるには~エンドオブライフケアを理解した実践へ

2023年6月18日(日) 13:50 〜 15:10 第2会場 (3階 G303)

座長:
阪口 英夫(陵北病院)
藤原 千尋(国立病院機構福山医療センター)

企画:歯科衛生士委員会

[SY12-3] 最期まで人の尊厳に関わることのできる歯科衛生士を目指して

○齊藤 理子1 (1. 医療法人社団 為世為人会 ヒューマンデンタルクリニック)

【学歴・職歴】
1993年   横浜歯科技術専門学校 歯科衛生士科 卒業
1993年~  東京都内の診療所勤務(外来) 
2002年~  出産育児のため7年間休業
2009年~  吉武歯科医院(訪問診療部) 
2020年   ヒューマンデンタルクリニック 現在に至る
【所属学会等】
日本歯科衛生士会認定歯科衛生士 (在宅療養指導口腔機能管理、摂食嚥下リハビリテーション、研修指導者・臨床実地指導者) 、日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士 、日本老年歯科医学会 、アメリカ心臓協会(AHA)BLSヘルスケアプロバイダー
【抄録(Abstract)】
卒後歯科診療所で一般歯科を経験し、その後産休育休の7年を経て訪問診療の部門で働きだした。これまで歯科衛生士として多くの在宅、施設での療養患者に関わってきました。人生の最終段階における歯科衛生士の役割や可能性、またそのような方々を支援するために必要と感じたこと、理念などを、療養生活を支えるチームの一員としてエンドオブライフケアに関わった症例を通じてお話しさせていただく。
 訪問診療に関わりだしたとき学会などにはひとつも所属していなかった。しかし現場では基礎疾患や服用薬も多く吸引の必要な方もおられ、何もわからず接するのは失礼であると感じた。そして何よりも怖かった。「自信をもって患者、その家族と向き合いたい」という思いが学会入会、認定士取得を目指したきっかけであった。それにより多職種との連携を行う際の自信にもつながった。例えば吸引については、施設などで忙しく働いている看護師へ引け目を感じながらその都度お願いしていたが、自分でも徐々に吸引ができるようになると、以前よりも摂食機能療法や口腔健康管理を担うことに自信がついた。療養患者やご家族への身近な支援者として歯科衛生士が口腔健康管理の専門職として働くにあたり、学会や衛生士会に入会して良かったことについてもお話ししたい。
 口腔機能は呼吸、コミュニケーション、食物摂取はもちろん、いつも清潔できれいな口でいることが人としての尊厳を支える。食べる楽しみ、コミュニケーションの維持は療養患者にとって生きる意欲に繋がると願う。また最期まで尊厳ある口で口から食べる楽しみを持ってもらうことは、家族のグリーフケアにも繋がると考える。「最期まで口をきれいにしてくださりありがとう」舐める程度であっても「最期、好きな物を食べさせることができました。ありがとう」など家族からお礼を言われ、これもまたグリーフケアの大切な1つであったのだと思う。そして歯科衛生士という職種に誇りを感じる瞬間でもある。
 また口から食べられなくなっても、最期を迎える時まで口腔環境を良好な状態に保つことがその人の尊厳を守ることだと思う。時に訪問先で数時間前に亡くなられた患者さんと対面することもあるが、時間の許す時にはエンゼルケアをさせていただいている。
 一般歯科診療所でACPに関わる会議に参加する経験はなかったが、本人または家族から、経口摂取が難しくなった際の人工的な水分・栄養補給について、また最期どういった場所や形で過ごしたいのかといったことを、普段の会話から聴き取れることも多い。一生懸命に心を込めて口をきれいにすることの繰り返しの中に、自然とそのような話や相談をしてくださる関係性ができることもある。そしてケアすることはケアされることであると気がつくことがあり、歯科衛生士としてのやりがいに繋がっている。