一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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シンポジウム3
地域包括ケアで高齢者口腔保健活動を円滑に実施するためのミニマムリクワイアメントとは?

2023年6月17日(土) 09:55 〜 11:20 第2会場 (3階 G303)

座長:
糸田 昌隆(大阪歯科大学 口腔保健学科)
佐々木 健(北海道釧路総合振興局 保健環境部 保健行政室(釧路保健所))

企画:支部運営委員会

[SY3-1] 地域包括ケアシステムの推進に向けた取組
-高齢者の口腔保健を中心に-

○古元 重和1 (1. 厚生労働省老健局老人保健課長)

【略歴】
慶應義塾大学医学部卒業
医学博士

厚生労働省保険局医療課、ロンドン大学、環境省環境保健部、老健局老人保健課、三重県健康福祉部医療政策監、大臣官房厚生科学課主任科学技術調整官、医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長、千葉県健康福祉部保健医療担当部長、保険局医療課企画官、医薬・生活衛生局血液対策課長、健康局がん・疾病対策課長等を経て、
令和3年11月より現職
【抄録(Abstract)】
団塊の世代が全員75歳以上となる2025年、更にはその先の2040年にかけて、85歳以上の人口が急増するとともに、高齢者の単独世帯や夫婦のみの世帯が増加することが見込まれる。85歳以上の年代では、要介護度が中重度の高齢者や、医療・介護双方のニーズを有する高齢者、認知症が疑われる人や認知症の人が大幅に増加する。また、高齢者世帯の増加により、生活支援や住まいの支援を要する世帯も増加することが見込まれる。
 また、2040年に向けて生産年齢人口の急激な減少が生じ、介護人材の不足が深刻になる。限りある資源で増大する介護ニーズを支えていくため、介護サービスの提供体制の最適化を図っていくという視点が重要であり、医療・介護の質を維持しつつ、相対的に少ない人材により医療・介護を提供できるようなサービス・支援の提供体制に変えていくことが必要となる。
 さらに、こうした変化についての地域差も大きい。都市部では75歳以上人口が急増する一方で、既に高齢化が進んだ地方ではその伸びが緩やか、あるいは減少していくなど、地域によって置かれている状況や課題は全く異なる。そのため、今まで以上に、地域の特性に応じた対応が必要となってくる。
 これまで、いわゆる「団塊の世代」が全員75歳以上を迎える2025年を目途に、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まいおよび自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制(地域包括ケアシステム)の構築を目指すこととされ、医療介護総合確保法等に基づいて、各自治体においては、取組が推進されてきたところである。
 このような中で、社会の活力を維持・向上させつつ「全世代型社会保障」を実現していくためには、高齢者をはじめとする意欲のある方々が社会で役割を持ち、互いに支え合う地域共生社会づくりに向けて、多様な就労・社会参加ができる環境整備を進めることが必要である。その前提として、介護保険制度としても、特に介護予防・健康づくりの取組を強化して、健康寿命の延伸を図ることが求められている。
また、令和3年度介護報酬改定では、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養関する取組を一体的に運用し、自立支援・重症化防止を効果的に進める観点から、見直し充実等が図られた。本年度は令和6年度介護報酬改定に向けて、その効果を検証するとともに、更なる推進方策の検討等に取り組むこととしている。
 本講演では、地域包括ケアシステムの推進に向けた厚生労働省の取組や今後の方向性について、口腔保健の重要性の観点を中心に述べる。