一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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シンポジウム3
地域包括ケアで高齢者口腔保健活動を円滑に実施するためのミニマムリクワイアメントとは?

2023年6月17日(土) 09:55 〜 11:20 第2会場 (3階 G303)

座長:
糸田 昌隆(大阪歯科大学 口腔保健学科)
佐々木 健(北海道釧路総合振興局 保健環境部 保健行政室(釧路保健所))

企画:支部運営委員会

[SY3-3] コロナ禍で学んだ中山間地域の特性から見た地域包括ケアシステム

○木村 年秀1 (1. まんのう町国民健康保険造田歯科診療所)

【略歴】
木村 年秀 (Kimura Toshihide)

昭和36年 香川県生まれ
昭和61年 岡山大学歯学部 卒業
同年 岡山大学歯学部 予防歯科学講座 助手
平成3年 島根県美都町国保歯科診療所 所長
平成8年 三豊総合病院 歯科保健センター 医長
平成24年 三豊総合病院企業団 歯科保健センター長
平成27年 まんのう町国民健康保険造田歯科診療所 所長
 現在に至る
【現職】
まんのう町国民健康保険造田診療所 所長
一般社団法人 ことなミライ 代表理事
岡山大学歯学部 臨床教授
【社会活動】
全国国民健康保険診療施設協議会 地域食支援部会部会長
高齢者の低栄養防止コンソーシアム香川コア・リーダー
病院歯科介護研究会 理事
NPO法人 日本フッ化物むし歯予防協会 理事
【学会】
日本老年歯科医学会(専門医,指導医,代議員)
日本口腔衛生学会(専門医,認定医,代議員)
日本プライマリ・ケア連合学会(代議員)
日本在宅医療連合学会(評議員)
【抄録(Abstract)】
私たちの診療所が活動するまんのう町琴南地区は人口1,926名,高齢化率52.2%で香川県一の高齢過疎地域である。先日,近隣の自治体合同で「在宅看取り」をテーマに在宅医療介護連携研修会が開催された。COVID-19感染拡大を理由に,対面型での顔の見える連携会議が一切行われなくなっていたが,約3年ぶりに多職種が集まる会となった。この研修会では,コロナ禍で在宅看取りにかかわったケアマネジャーとご家族とが対談型でケースの振り返りが行われた。公開型のデスカンファレンスである。がん末期の患者で,病院に入院すると最期まで会えなくなることを危惧したご家族が在宅看取りを選択したのであった。当歯科診療所も終末期の口腔のケアにかかわっていたので経過説明や意見を求められた。ケアマネやご家族からも,人生の最終段階で歯科がかかわったことに対し感謝の言葉をいただいた。コロナ禍で,在宅看取りのケースが増えたということに関しては,地域包括ケアの目指す概念に合致した方向に進んだのかもしれない。
一方,地域高齢者保健や介護予防の活動に関しては,COVID-19感染拡大により専門職や行政担当者の中で意見が割れた。感染リスクを減らすために活動を制限するのか,介護予防の観点から閉じこもり防止やフレイル予防,生活支援のために活動を推進するのか,難しい判断であったが,私たちのような中山間へき地では,ほとんどが活動制限するという判断となった。
地域包括ケアに関してもコロナ禍において,潜在していた地域課題が浮き彫りになった一方で,高齢者の生活環境へのアプローチの重要性が再認識されたなど多くの学びもあった。私たち歯科専門職にとって高齢者口腔保健活動を円滑に実施するためのミニマムリクワイアメントとは,専門領域を超えて,その地域に生活する人として,地域課題を解決するために必要な活動を信念をもってやり続けることだと思う。