14:10 〜 16:10
[TH-01] 劇「はるながまちにやってきた」
大会会長として、本大会に「インクルージョン」「共生社会」を語り考える場を作りたいと大会全体を設計する段階から考えていました。しかし、なぜか微かな抵抗もありました。なぜなら、こうしたテーマは扱い方によっては、とても浅薄で、理念的で、思いばかりの語りに終始し、未来への指針が見えてくるものにならないかもしれないという不安もあったからです。そして結果的には、本大会では、このテーマを正面から取り上げるシンポジウム等を行いませんでした。しかし、大会会長としての私の気持ちの中には、それに対する心残りがずっとありました。そんなときに「劇団かたつむり」の演劇を観る機会を得たのです。そこから、私が受けた衝撃を、皆さんとも共有する場を設定することで、その大会会長としての思いを少しでも緩和できそうな気がしたのです。
「ライフステーションワンステップかたつむり」の代表である三井絹子さんは、今年74歳になられる方です。ほぼ全身を動かすことが困難な重度の障がいが幼い頃からありました。その人生は壮絶です。施設に入って生活するのが「当たり前」の1960年代、それを「当たり前」のままにしないために、1年9ケ月もの間、都庁前で座り込みをします。障がいとともに、それを実行することがどのくらいのことだったのか想像もつきません。さらに、施設を飛び出し、結婚、出産をなさいます。ご本人も含めて誰も想像しなかったような人生が始まります。もちろん、差別も偏見も悪意も体験します。しかし、自立したその生活を、三井さんは、今、本当に楽しんでいるのです。「自分は何も出来ないから、死んだほうがいい…と20数年間。自己否定の年月から、私は生きていていいんだ…と自己肯定になるまで、20数年間かかったけど、私は今、不思議なくらい自己否定の意識はありません(〈私は人形じゃない〉三井絹子著 2006年 千書房)」。そうした三井さんを頼って「町で暮らしたい」「自立したい」という強い思いを持つ障がいのある方々が集まってできたのが「かたつむりの会」です。「かたつむりの会」が演劇という手段を使って、その考えを世の中に伝えています。その演劇は、多くの反響を呼んでいます。舞台に上がるのは様々な障がいのある方々です。しかし「素人が素人なりに…」というレベルではありません。ここまでの作品を作るのには、どのくらいの自立心が必要かと本当に考えます。
ここで披露されるものは、あくまで「劇」です。ですから、その表現、主張への感じ方、味わい方、捉え方は、観劇された方々が自由に受け止めてくださってよいのです。その感じ方に、正解も、不正解も、善も、悪もありません。ただ、どなたにとっても、障がいのある方々の「自立」「共生」というテーマを正面から考えざるを得ない機会となることだけは確実です。本大会の最後のセッションの時間帯となり、もしかすると、時間的に無理をしないと観られない方が多いのではないかと心配しています。しかし、その無理をきっと無駄にしないものになると期待しています。
抄録本文には「かたつむり」から送られてきた演劇の紹介文を載せています。送られたままの文章です。きっと、「かたつむり」のみなさんで、いろいろと考えながら、時間をかけて、話し合って書いたんだろうなと感じます。
第28回大会会長 小貫 悟
「ライフステーションワンステップかたつむり」の代表である三井絹子さんは、今年74歳になられる方です。ほぼ全身を動かすことが困難な重度の障がいが幼い頃からありました。その人生は壮絶です。施設に入って生活するのが「当たり前」の1960年代、それを「当たり前」のままにしないために、1年9ケ月もの間、都庁前で座り込みをします。障がいとともに、それを実行することがどのくらいのことだったのか想像もつきません。さらに、施設を飛び出し、結婚、出産をなさいます。ご本人も含めて誰も想像しなかったような人生が始まります。もちろん、差別も偏見も悪意も体験します。しかし、自立したその生活を、三井さんは、今、本当に楽しんでいるのです。「自分は何も出来ないから、死んだほうがいい…と20数年間。自己否定の年月から、私は生きていていいんだ…と自己肯定になるまで、20数年間かかったけど、私は今、不思議なくらい自己否定の意識はありません(〈私は人形じゃない〉三井絹子著 2006年 千書房)」。そうした三井さんを頼って「町で暮らしたい」「自立したい」という強い思いを持つ障がいのある方々が集まってできたのが「かたつむりの会」です。「かたつむりの会」が演劇という手段を使って、その考えを世の中に伝えています。その演劇は、多くの反響を呼んでいます。舞台に上がるのは様々な障がいのある方々です。しかし「素人が素人なりに…」というレベルではありません。ここまでの作品を作るのには、どのくらいの自立心が必要かと本当に考えます。
ここで披露されるものは、あくまで「劇」です。ですから、その表現、主張への感じ方、味わい方、捉え方は、観劇された方々が自由に受け止めてくださってよいのです。その感じ方に、正解も、不正解も、善も、悪もありません。ただ、どなたにとっても、障がいのある方々の「自立」「共生」というテーマを正面から考えざるを得ない機会となることだけは確実です。本大会の最後のセッションの時間帯となり、もしかすると、時間的に無理をしないと観られない方が多いのではないかと心配しています。しかし、その無理をきっと無駄にしないものになると期待しています。
抄録本文には「かたつむり」から送られてきた演劇の紹介文を載せています。送られたままの文章です。きっと、「かたつむり」のみなさんで、いろいろと考えながら、時間をかけて、話し合って書いたんだろうなと感じます。
第28回大会会長 小貫 悟
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